
デジタルとデザインでつくる、参加型の街づくり
デジタルとデザインでつくる、参加型の街づくり
| 街づくりの現場から見えてきたのは、交通インフラは「事業者が用意するもの」から、「使う人と一緒につくり続けるもの」へと変わりつつあるという姿でした。訪れた人の声やデータをデジタルで集め、実際の空間に反映し、またフィードバックを得て改善していく——。そうした循環を、有機的につないでいくハブとしてデザインがどんな役割を果たせるのか。『まちと移動のミライコラボ』第4回では、株式会社イチバンセン川西康之氏とWill Smart石井が、街づくりと移動インフラのあいだでデジタルが担う可能性を語り合いました。 ▶︎前編:デザインが支える、地域公共交通の未来 |
- 番組名
- 『まちと移動のミライコラボ』全文書き起こし
- 放送日
- 2026年2月1日
- ゲスト
- 川西康之 氏(株式会社イチバンセン 代表取締役)
目次
【オープニング】
石井:まちと移動の未来コラボ。Will Smartと街づくりのプロが描く、日本のこれから。この番組では、「移動と街づくり」をキーワードに、日本の移動インフラや都市のあり方がこれからどう変わっていくのかを、第一線で取り組まれている方々と一緒に考えていきます。私、石井は、Will Smartという会社で、交通・モビリティ・デジタルの力を使いながら、駅やバスターミナル、地域交通、観光モビリティなど、「移動」を基点に街を元気にする取り組みを全国で進めています。この番組は、そうした現場のリアルと、これからの未来を繋ぐ対話の場として立ち上げました。前回に引き続き、株式会社イチバンセン代表取締役の川西さんをお迎えしています。今回もよろしくお願いします。
川西:お願いします。
【自分事化と参加型インフラづくり】
石井:前回、日本全国の交通インフラの課題のお話も伺いましたし、また一番大事なポイントとなりました、やはりそのデザインがどう向き合っていくかというお話を中心に伺いました。そのお話の中でテーマになりましたのが、やはり利用者も協働でインフラを支えていくということが大事だということで、それがとても印象的でございました。
今回最初に伺いたいのは、そのお客様も参加するインフラづくりについてです。これは前回の放送の時にも、まだまだこれからのチャレンジだというお話もありましたが、デザインがどうやってその行動を変容させるかというところについて、少し今取り組まれていること、考えてらっしゃることがあれば、そこをまず伺いたいなと思います。
川西:私たちがよく、いろんな街づくりやデザイン、公共の空間で申し上げるのは、「自分事化」ということへの挑戦ですね。この空間は、この移動手段は、私のものだ。わしがやったんだよと。そういう状況が一番理想的だと言われます。私たちが世界中のいろんな街をお手本にするんですけれど、以前リバプールっていう街に伺った時にですね。
全然知らないその辺を歩いてるおじさんから、「君はどっから来たんだ、リバプールはいい街だろう。わしはこの街が大好きなんだ」っていうことをとうとうとお話しされるおじいさんがいらっしゃいましてね。
「わしはこの街が好きで、この街で死ぬんだ」とおっしゃったんです。自分の街を誇り、自慢して、伝えて、「私はこの街を作ってるんだよ」っていう人がたくさんいる街を僕らは作りたいと思っています。
そのために、我々デザイン・設計の専門家と、そしてお一人お一人の市民の皆さんとの相互理解。もちろん行政や鉄道会社、バス会社といった運営母体も含めてですね、相互理解するというコミュニケーションがものすごく大事です。
石井:面白いですね。市民が中心となったデザインというか、街のコンセプトを作っていく、そういうことが大事。そこに事業者が関わっていって、コンセンサスを得ていくっていうことが大事ということですね。
川西:情報共有のためにデジタルの力を使って、そしてその点においては子供から大人、お年寄りまで。分かりやすく誰でも意見ができて、そこでは専門家はそこに分かりやすく優先順位をつけ、そして最後責任持つのは、事業者であり行政ですから、立場を明確にして、市民のために尽くす。これしかありません。
【情報デザインとデジタル活用】
石井:なるほど。今まさにその「デジタル」というキーワードが出ましたが、ちょうど私どもWill Smartと株式会社イチバンセンさんは、昨年、2025年の9月に業務提携・協業しましょうということで対外発表させていただきましたが、まさにこのデジタルというキーワードについて、最後また伺いたいと思うんですが。このデジタルとデザインというのは、どういったシナジーが生まれるのか、相互作用が生まれるのかということについて、川西さんはどのようにお考えになりますか?
川西:公共の空間であるならば、例えばですね、「トイレの位置が分かんない」ってよく言われるんですよね。初めて行った場所で、トイレはどこだろうって探すわけです。
石井:それ、よくみんな経験するやつですね。
川西:ええ。そうするとですね、大得意のラミネートに大きな紙で「トイレ」ってワードで打って、セロテープで窓ガラスに貼っちゃうわけですね。
結果的に、今度は「あれどこだ」「これどこだ」って聞かれても、そのたびにラミネートのサインを貼りまくるんですね。で、結果、張り紙だらけで、なんだか分かんないと。情報の優先順位が全く分かんないっていう、これよくあるんですよ。
石井:見たことありますね。特に観光地の駅とかになってくると、多言語のインフォメーションもベタベタ貼っていて、柱中にいろんなものが貼ってある光景を見たことありますが、はい。まさにそれですね。
川西:昨今、何カ国語にも対応しなきゃいけないということで。空間と情報提供、そしてお客様のその認知。ここにデザインというのはものすごく大事なはずなんですけど、なぜか崩れるんですね。
石井:どうしても、伝えないといけない対象のお客さんが、例えば今お話しあったインバウンドのお客さんなんで、多言語でやらないといけない。で、多言語で紙を貼っていったら、例えば4カ国語だったら4枚貼らないといけないという話になって、物理的なスペースが完全埋まってしまいますよね。ただ、ここが例えばデジタルサイネージみたいなものがあれば、それは回転させていってもいいでしょうし、その中で併記したりとかいろんな工夫ができると思うんですけど。
川西:大きく改善できるんでしょうね。ただ一方で、そのデジタルに対するアクセスのしやすさですよね。駅員さんはラミネートが多分大得意で。でもデジタルサイネージだと、例えば別途発注しなきゃいけないだとか、予算がかかってしまうなんて話になると、セロテープの方が安いってことになる。
石井:なるほどですね。そうなってくると、やはりそういったデジタル機器が、最初から空間の中に組み込まれていて、簡単に情報が発信できるような、そういった技術がやはり裏側を支えていかないと、なかなか解決しないということにもなりますよね。
川西:そうですね。それとやはり、その空間においての優先順位は何ですかということだと思います。もちろんお客様が迷わず目的地までたどり着くことが一番大事なんですけれど。
石井:そうですね。トイレなんて緊急性が高い場合がありますしね。
川西:そうです。ただ、セロテープで貼りまくることで、その空間の落ち着きであるとか、あと本当に大事な情報が埋もれてしまうとか、そこのルールであったりというのは、きちんとコントロールしなきゃいけないと思います。
石井:もう一つそのデジタルとデザインの融合ということで考えた時に、空間として、まあもちろんそこのインフォメーションがデジタルを活用したものになるというアプローチもあると思いますが、個人が持ってらっしゃる例えばスマートフォンとこの実際の現場、こういった個人が情報探索で完結する部分と空間というのは、どういうふうに繋がっていくべきだと考えてらっしゃいますか?
川西:願わくば、お客様のさまざまなニーズを受け止めるようなチャンネルというか、機会が僕はあればいいなと思っています。
石井:なるほど。
川西:公共の場においてこれよくあるんですけど、「賑わいを作ろう」「じゃあ賑わい作るためにはどうすればいいですか」と聞くと「カフェがあるといいね」あるいは「お酒が飲めたらいいね」ってよくあります。でも、事業計画を算出すると「それ無理だね」って話になる、大体。でも、やってみたら結構うまくいったっていう事例もあるんですよ。
今までの事業計画で算出しきれなかった、本当にコーヒーが必要で、今ここで、お客様がどんなことを求めているか。ここでは自販機でいいのか、いやしかしちゃんと美味しい香りがするお茶やコーヒーを500円だけど提供したら成立するんだろうかっていう、そういうニーズをですね、スマホやデジタルの力を使って分かるようになれば、僕はその本当に欲しい空間、本当に欲しい機能というのにより近づけられると思います。そうするとみんな喜ぶので。
石井:なるほど。それはまさに、その駅なりバスなり列車なりを実際に使ってる人から生の声を吸い上げていくような仕掛けとして、デジタルを使うことができれば、今おっしゃったような、より現実に近づいていくということですかね。
川西:ですね。
石井:それは面白いですね。
川西:そこができるとですね。人が何人か集まって笑顔で話すっていう、その塊がいると、その空間はものすごく豊かに見えるんですよ。
それが無いと、ただ乗って降りるだけの通過するだけの駅や広場に、バス停になってしまう。それはどなた様も本当は望んでないんです。
誰かの他人の知らない人だけど、知らない人たちの笑顔を見て、他の人たちは安心するんです。それが街の楽しさであり、賑わいに繋がるんです。
石井:なるほど。まさに本当に前回の冒頭でお聞きしたデザイン哲学の、またそこに戻ってきて、やはりそこを訪れる人が中心で、その人たちがその場所の価値を上げていくというお話ですね。
【エンディング】
石井:2週にわたって、街づくりの現場のお話、非常に楽しかったです。デジタルを活用した未来の話も伺いました。移動インフラに求められるデジタルの役割、非常に今後もより活用ができるということが、今回のお話の中でも分かったかと思います。まさに訪れた方の意見を集約、希望を聞き出して、またそれを実際に作ってみてそのフィードバックを集めていくというような、そういったインフラを提供する事業者さんと、そこを利用する利用者の方々、この方々が本当に中心となって、交通インフラが作られていく。
それをある意味底支えして、有機的に繋げていくのがデザインの役割だというお話が、非常に印象として残りました。今後の更なる活躍に大変期待したいと感じました。
最後にお知らせですが、今回の放送はradiko、当社YouTubeでご視聴いただけます。そちらもチェックしてください。本日はどうもありがとうございました。
川西:ありがとうございました。









