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ラジオ:まちと移動のミライコラボ

ナイトタイム×街づくりの可能性

デジタルとデザインでつくる、参加型の街づくり

 

第5回のゲストは、オンラインスナック横丁文化株式会社 代表取締役・五十嵐真由子さん。

今回は「街の夜」にフォーカスし、スナック横丁が取り組んできた活動や、 地方のナイトタイムに眠る可能性についてお話を伺います。 地方には、その土地ならではのスナック文化や、人と人が自然につながる夜のコミュニケーションが残っています。

派手な演出や新しい施設をつくらなくても、すでに街にあるスナックを活かすことで、夜の街は新たな価値を生み出せる。ナイトタイムを切り口に、これからの街づくりのヒントを探ります。


番組名
『まちと移動のミライコラボ』全文書き起こし
放送日
 2026年2月8日
ゲスト
五十嵐真由子 氏(オンラインスナック横丁文化株式会社 代表取締役)

【オープニング】

石井: 「まちと移動のミライコラボ」。Will Smartと街づくりのプロが描く、日本のこれからを考える番組です。よろしくお願いします。 この番組では「移動と街づくり」をキーワードに、日本の移動インフラや都市のあり方が今後どのように変化していくのか、第一線で活躍されている方々と共に探っていきます。 私、石井はWill Smartという会社で、デジタル技術を活用して駅やバスターミナル、地域交通、観光モビリティなどをアップデートし、移動を起点に街を元気にする取り組みを全国で展開しています。

この番組は、現場のリアルな課題と未来の可能性を繋ぐ「対話の場」として立ち上げました。 本日は「街」、特に「夜の観光資源」にフォーカスしてお話を伺いたいと思います。本番組はWill Smartの提供でお送りします。

【スナック横丁とは何をしているのか】

石井:今回のゲストは、オンラインスナック横丁文化株式会社 代表の五十嵐真由子さんです。五十嵐さん、よろしくお願いします。

五十嵐:よろしくお願いします。

石井:まず「スナック横丁」はサービス名称とお聞きしていますが、まだご存知ない方も多いかと思います。どのような活動をされているのか、簡単に教えていただけますか?

五十嵐:逆にお聞きして恐縮なのですが、石井さんはスナックに行かれたことはありますか?

石井:はい、あります。地方出身なので、二次会などで行く場所といえばどうしてもスナックでしたね。ただ、やはり年代が上の方々が楽しむ場所という印象はあります。

五十嵐:そうですよね。実は、全国にあるスナックの数は10万軒にものぼると言われているんです。

石井:10万軒!すごい数ですね。具体的にどういった業態がその数に匹敵するのでしょうか?

五十嵐:コンビニが全国で約5万6,000軒ですので、その倍近い数ですね。歯科医院が約6万軒ですから、都市部でも地方でも、実はどこにでもスナックは存在するということがお分かりいただけると思います。私はスナックが大好きで、もう十数年もスナックの扉を開け続けているのですが……。

石井:実際にご自身でも経営されていたのですか?

五十嵐:いえ、私はカウンターの中に立つよりも、カウンターの外で常連客の皆さんと一緒に楽しい時間を過ごすことにスナックの魅力を感じているんです。

石井:あくまで「お客さん」としての立場で楽しまれているのですね。

五十嵐:常連さんやママと楽しく過ごし、店内にいる全員で一体感を楽しむ。これを私は「スナックコミュニケーション」と呼んでいるのですが、これにすっかりハマってしまいまして。自称「スナック女子」、略して「スナ女(スナジョ)」として商標登録もしているんですよ。

石井:商標登録までされているんですね。

五十嵐:そうなんです。こうしたスナック文化の維持・継承、さらに新しい光を当てて「新しい観光資源」にすることを目指しています。人口減少や地方の観光衰退、さらに高齢化などの影響でスナックの数自体は減っており、非常にリアルな課題となっています。そこで私たちは、スナックを拠点とした活動や、ママにフォーカスした活躍の場を広げることで、夜の時間を盛り上げる支援を行っています。それが「スナック横丁」の活動です。

【地方こそ、夜のオリジナリティがある】

石井:改めてお聞きしますが、事業を始めたきっかけは何だったのでしょうか?

五十嵐:実は、私は石井さんと同じ楽天トラベルの出身でして。

石井:元同僚でしたよね。

五十嵐:そうなんです。楽天トラベル時代に全国の地方へ足を運ぶ中で、たまたまスナックに行く機会がありました。そのお店のママがとても温かく迎えてくださって。しかも、私が当時抱えていた悩みをママに話すと、それを常連さんたちにも繋いでくれて、みんなで一緒に解決策を考えてくれるような一体感がその場で生まれたんです。

これこそスナックの醍醐味で、実はスナックとビジネスは非常に親和性が高いのではないかと感じました。ガイドブックに載っていない情報や地域の課題、そこに集まる人々がリアルに話している内容は、実は翌日の営業活動に活かせたりすることもあるんですよ。そんなビジネスの観点からもスナックを巡るようになったのですが、ママもお客さんも高齢化が進んでおり、二度目に訪れたときにはすでに閉店していたということも少なくありませんでした。

石井:そうなんですか。10万軒あるといっても、減少している側面もあるのですね。

五十嵐:残念ながら、増えるよりも減るスピードの方が速いのが現状です。もともと20万軒あったと言われるスナックが、短期間で、特にコロナ禍の影響でさらに減少してしまいました。弊社の「オンラインスナック横丁文化株式会社」は、まさにこのコロナ禍がきっかけで立ち上げた会社です。ママたちが「密」を避けなければならず営業できないとき、ママと常連さんがオンラインで会える場所を作ったことが、私たちの起点となりました。

石井:今まさにコロナも明け、改めて「スナック×地方」という点に非常にこだわりを持たれていると伺っています。なぜ地方なのか、そのあたりを詳しくお話しいただけますか?

五十嵐:地方の話に入る前に、最近の都市部でのスナックの盛り上がりについて触れたいと思います。コロナが明けてから、オンラインスナックに外国人の方からの予約が急増した時期がありました。

石井:海外の方がオンラインスナックを利用されているのですか?

【インバウンドが求めている“本物の夜”】

五十嵐:はい。なぜこの場に興味を持ったのか尋ねてみると、「次に日本へ行ったら、ガイドブックに載っていない、日本人が夜に楽しんでいるリアルな社交場に入り込んで、本物のコミュニケーションを味わいたいんだ」とおっしゃるんです。ここに着目して始めたのが、外国人向けの「スナックツアー」です。スナックは日本人でも扉を開けるのに勇気がいりますが、熟知している私たちが直接ご案内することで、口コミがどんどん広がっています。

最近では、都内の外資系ラグジュアリーホテルのコンシェルジュの方が、宿泊客にアクティビティとしてこのツアーを紹介してくださることもあります。これは都市部だけでなく、全国どこでも生まれる光景ではないかと感じています。一方で、地方の観光地では「宿泊客が夜にホテルから出てきてくれない」という「夜間経済(ナイトタイムエコノミー)」の課題を抱えています。

石井:なるほど、そういう背景があるのですね。

石井:確かにお話を伺っていると、Netflixなどのネット配信で、日本のリアルな夜の街を舞台にした映像作品が世界中で流通していますよね。作品を通じてスナックの存在を知ったり、舞台としての認知度が高まっていることもあるのでしょうか。

五十嵐:そうですね。映画『すずめの戸締まり』にもスナックのシーンが登場したりします。そうした動画コンテンツとリンクしながら、文化としての認知が形成されていると感じます。実際に予約の大半も、私たちのInstagramやYouTubeを見たという方々ですので、スナックは日本全国で活用できる強力な「切り札」になると考えています。

石井:次に伺いたいのが、まさに地方とインバウンドの掛け合わせについてです。今の日本の観光政策は、都市部のオーバーツーリズム対策もあり、より地方へインバウンド客を誘致する流れにありますよね。国を挙げて取り組んでいる真っ最中だと思いますが、その中で「夜×インバウンド×地方」を実現する上で、スナックが大きく貢献できるとお考えでしょうか。

五十嵐:まさにその通りです。ただ、残念ながらスナックは日本人でも入りづらく、「常連さん以外はお断り」というお店もあります。

石井:やはりそういったお店もありますよね。

五十嵐:はい。そうなると外国人の方はなおさらで、扉を開けた瞬間に断られてしまうこともあります。しかし、この「夜の経済圏」において、スナックのママにフォーカスを当てることで大きなチャンスがあるのだと、まずは街全体に認識していただく。その上で地域のスナックの皆さんに協力していただき、スナックツアーをパッケージ化する監修を全国で行っています。

【新しく作らなくても、街は変えられる】

石井:観光庁も「ナイトタイムエコノミー」を重要な観光資源として消費活動を増やそうとしていますが、多くは期間限定のイベントで終わってしまいがちです。プロジェクションマッピングなども素晴らしいですが、年中開催するのは難しい。その点、スナックという既存の資源を活用するのは非常に有益ですね。

五十嵐:おっしゃる通りで、スナックは「すでにある資産」なんです。

石井:確かにそうですね。

五十嵐:私が初めて体験したように、「地元の方々が集っている場」そのものに大きな価値があります。外国人向けのツアーを通じて、これこそが最高の観光体験(アセット)なのだと確信しました。地域の皆さんが新しい人々を迎え入れることに前向きになっていただければ、地方のどこでも魅力的なコンテンツが作れるはずです。

石井:まさに、今ある資産を活用しましょう、ということですね。

五十嵐:その通りです。

石井:新しく作るのではなく、あるものを最大限に活用していくという考え方は素晴らしいですね。

五十嵐:はい、そう思います。

【エンディング】

石井:今日は、地方の夜にはまだまだ大きな可能性があること、そしてそこにはスナックという重要な資産があるという、非常に興味深いお話を伺いました。次回は、より具体的に地域でどのような取り組みをされているのか、また今後どのように展開していきたいのかを伺いたいと思います。本日はありがとうございました。

五十嵐:ありがとうございました。

石井:今回の放送はradikoやWill Smartの公式YouTubeでもご視聴いただけます。ぜひチェックしてみてください。本番組はWill Smartの提供でお送りしました。