
地域鉄道の使命と挑戦〜並行在来線の未来を拓く〜
地域鉄道の使命と挑戦〜並行在来線の未来を拓く〜
| 第9回のゲストは、青い森鉄道株式会社 代表取締役社長・東 直樹さん。 東北新幹線の延伸に伴い、JRから経営分離された「並行在来線」として誕生した青い森鉄道。長年青森県庁で交通・観光行政を支えてきた東社長に、地域鉄道が直面する人材確保のリアルな課題や、持続可能な経営に向けた抜本的な改革、そして地域交通の未来についてお話を伺います。 |
- 番組名
- 『まちと移動のミライコラボ』全文書き起こし
- 放送日
- 2026年3月8日
- ゲスト
- 東 直樹 氏(青い森鉄道株式会社 代表取締役社長)
目次
【オープニング】
石井: ラジオ大阪「まちと移動のミライコラボ ~Will Smartと街づくりのプロが描く日本のこれから~」です。よろしくお願いします。この番組では、移動と街づくりをキーワードに、日本の移動インフラや都市のあり方がこれからどう変わっていくのかを、第一線で取り組まれている方々と一緒に考えていきます。
本日のゲストは、東北新幹線の延伸に伴う並行在来線として、青森県の交通を支え続けてこられた、青い森鉄道の社長です。本番組はWill Smartの提供でお送りします。
石井: 今回のゲストは、青い森鉄道株式会社 代表取締役社長、東 直樹さんをお迎えしています。東さん、よろしくお願いします。
東: よろしくお願いします。
【行政から鉄道のトップへ~40年にわたる交通・観光への情熱~】
石井: まずは東さんご自身の、これまでのキャリアについて伺えればと思っているのですが、東さんは元々青森県庁で長くお仕事をされてきたと伺っております。その中でどのような分野を特に中心にお仕事として取り組まれてこられたのか、またそこから青い森鉄道という鉄道会社の社長に就任されるに至った経緯、そういったところをまずはお聞きしたいのですが。
東: 私は1985年に青森県庁に入庁いたしました。約40年近く務めてきたわけなんですが、そのうちの後半の20年間が、いわゆる地域交通や観光の仕事をメインにやってきた経験がございます。なので、今の会社に来た経緯と言いますか、それはやはり県庁時代の交通に関する経験があったから今の会社に来たのかなと、今思っています。
石井: 20年ほどというのは、公務員の方の社会人生活40年ぐらいですよね。そうすると、もう半分くらいが交通・観光ということで、かなりどっぷり交通・観光に、どちらかというと行政の立場から関わってこられたということですかね。
東: そうですね。行政も色々なキャリアがあるんですが、私はどちらかというと交通を主体に、ある意味「交通のプロフェッショナル」として県庁の中でも見てもらえたのかなと思っています。その中でも、鉄道もそうなんですが、鉄道よりも長く携わってきたのは航空関係ですね。具体的に言えば国内線の誘致や海外の国際線の誘致というのを中心に行ってきまして、その他、船とかバスとか、そういったことを担当してきました。
石井: なるほど。そうするとあらゆる乗り物、特に飛行機ということもご自身のキャリアとして取り組まれた中で、この青い森鉄道の次の新しい社長を選ぶ時には、適任の方だったということですかね。
東: きっとそうだったんでしょうね。
【並行在来線のリアルと課題~地域を支える122kmのネットワーク~】
石井: ちなみにその20年間と言うと非常に長い時間ですが、まず県の職員の立場から見た時に、20年間の青森の交通、空も海も陸もということですが、どのような変化があった20年だと捉えてらっしゃいますか。
東: いわゆる「一次交通」、例えば新幹線や飛行機、地方と首都圏を結ぶ一次交通を整備しましょうというのが県の大きな方針でした。整備新幹線については、盛岡以北から八戸、八戸から新青森へ。その誘致をずっと県として行ってきました。同様に航空に関しても、青森・東京線や伊丹・青森線といった路線の整備。もしくは国際線、今現在青森とソウルを結ぶ大韓航空と、青森と台湾を結ぶエバー航空に就航していただいているんですが、その便数を増やしたりというところに力を入れてきて、そのことがローカルである青森県と東京、大阪、海外と直接結ぶことで人を呼んで、経済を活性化させようというのが県の考え方だったんですね。
石井: その一次交通の整備の一つの大きな目玉が、やはり青森までの延伸ということですね。新幹線の延伸に伴って生まれたのが、まさに青い森鉄道。並行在来線というのは、これは法律上の定義ですかね。要は新幹線と並行して走る在来線に関しては、独占禁止法の関係で同じ会社ができないようになっているんですかね。
東: そういうのもあるんですが、一つは、基本的に例えばJR東日本さんとかJR西日本さんもそうなんですが、当然黒字になるところは自分たちでやるけれど、やはり赤字が見込まれるところはなかなか難しいと思うんですよね。そこで国が法律を整備して、「そうであれば地元も負担することで」と。始めたのが整備新幹線で、その整備新幹線が走るところは、地元が新幹線を誘致するのであれば、新幹線が来た時には従来の在来線は地元で持ってください、というのがこの並行在来線です。
石井: もう少し青い森鉄道がどんな会社なのか、利用者が年間400万人ぐらいいらっしゃるということですが、どういった特徴を持つ鉄道だという風に捉えたらよろしいですか。
東: 旧東北本線の盛岡以北ですので、盛岡から青森までの鉄道を、青森県内は弊社、青い森鉄道株式会社が担っています。大体122キロあります。
石井: 長いですね。
東: かなり長いですね。そこの路線をIGRいわて銀河鉄道とも協力・連携しながら、今400万人の利用者にお越しいただいています。7割が定期利用ですね。通勤・通学、通学が多いんですが、残り3割が一般の方の利用というところです。
石井: やはり県下の主要都市である青森市と八戸市をつなぐということになると、やはりここの移動はまさに働く方、学ぶ方が本当に日常使いをしている路線だということですね。
東: そうなんですよね。あとは新幹線ができたので、新幹線の駅、大きく八戸と青森に駅がありますので、そこの駅に青い森鉄道でお客さまを運んで接続させるという使命もあります。
【人材確保と持続可能な経営~賃上げと運賃改定が描く未来~】
石井: ちなみに2024年の6月に社長に就任されてから約2年弱の時間が経ちますが、この間、今度は経営者の立場として、青い森鉄道さんが抱えていらっしゃる課題感であったり、またその課題も、もしかしたら新しい成長機会につながる、より良いサービスにつながるチャンスだったり、それぞれ今どんなことを考えられていますか。
東: やはり社長に就任して一番感じたことは、「人材を採用できない」ということです。新しい新卒などの採用ができない。色々と調べていったら、やはり賃金水準が他の会社に比べて低いというところもあるなと。なので、まず1年目に手をつけたのは「賃上げ」をしないといけないのかなということで、県とも相談しながらそこは取り組みました。その結果、これまで10年間なかなか採れなかった地元の高校生の就職者が、おかげさまで今年の4月に入社する高校生が4人採れたということで、やはり一番の課題は人手不足なので採用問題が一番でしたね。
東: もう一つは、それに関連して言えば、結局人件費を上げざるを得ないので、やはり会社の収入も上げなければならないということで、今国に対して運賃の値上げを申請しているのが今の状況です。なので、この大きく2点が現在の課題です。
石井: 採用においてベースアップされたことによって採用もうまくいったというのもあるんでしょうけど、既に働いていらっしゃる方も非常に喜ばれたのではないですか。
東: そうなんですよね。鉄道会社ですので、どうしてもいなければならない人材がいくつかあります。一つは運転士。国家資格の運転士と、鉄道を支えるインフラを整備する人がいなければ会社として成り立たないので。ただ、なかなか運転士も給料が低いと応募も少なく、整備する側は、建設会社も同様の悩みを抱えているかと思いますが、どうしてもきつい仕事になるのでなかなか応募が少ないというところだったので、そこはなんとかしなければならないのかなと思っています。
石井: やはりこの約30年間ずっとデフレが続いてきて、なかなか色々な企業、特に地方部において賃上げをするということが空気感も含めて非常に難しいものがありましたが、ここ数年で一気にインフレに振れて、賃上げをすることを理由にした売価の上昇というのも、一般の消費者の方も「仕方ないもの、むしろ当たり前」と捉える気運も少しずつ増えてきているような印象も持ちますが、その辺り現場を見られている社長としてはどのように捉えられていますか。
東: ちょうど15年前に、八戸から青森まで延伸した時はJRから引き継いだので、あとは「ドル箱」の青森・八戸間がもう新幹線に移るので、やはり運賃を上げざるを得なかったんですよね。ただ、15年前の雰囲気は「何でこんなに運賃が上がるの?上げすぎてるんじゃないの?」ということで、非常に難しい立場に置かれたと聞いています。ただ今回、もう日本全体が好循環に持っていかなければならないということで、そこは少しご理解いただいているのかなと思っています。もちろん私共も経営努力で経費節減には努めていきたいと思いますが、やはり賃上げして、運賃も上げて、さらに安全で安定した運行を目指すというのが正しい道なのかなと今思っております。
石井: まさにそうですね。その一つの結果として先ほどおっしゃったみたいに、高卒の新卒の方が新しく入ってきていただいて、ついに採用の方にも少しずつ良い影響が出てきたということですよね。本日は東さんのご経歴を通じて、行政の立場から見てこられた青森の交通の課題や取り組み、そして青い森鉄道という会社が担っている役割、その中で見えてきた人材獲得の取り組み。非常に面白い地方鉄道のリアルなお話が伺えたと思います。
石井: 次回は、こうした課題や取り組みを踏まえた上で、冬期輸送の現実ということについてお話を深掘りしていきたいと思います。東さん、本日は貴重なお話をいただき誠にありがとうございました。
東: ありがとうございました。
石井: 最後にお知らせですが、今回の放送はradiko、当社YouTubeでご視聴いただけます。そちらもチェックしてください。この番組はWill Smartの提供でお送りしました。












