
房総ローカル線に“攻めの一歩” 〜小湊鉄道社長が挑む学生応援と地域共創〜
房総ローカル線に“攻めの一歩” 〜小湊鉄道社長が挑む学生応援と地域共創〜
| 第第12回のゲストは、小湊鉄道株式会社 代表取締役社長・石川 晋平さん。 千葉県房総半島を走るローカル線・小湊鉄道。少子化の波に立ち向かうべく、学生専用全線年間パスポートや地域連携の寄付制度など、攻めの経営に踏み切った石川社長に、地域交通が抱えるリアルな課題と、未来への取り組みについてお話を伺います。 |
- 番組名
- 『まちと移動のミライコラボ』全文書き起こし
- 放送日
- 2026年3月29日
- ゲスト
- 石川 晋平 氏(小湊鉄道株式会社 代表取締役社長)
【オープニング】
石井:ラジオ大阪「まちと移動のミライコラボ〜Will Smartと街づくりのプロが描く日本のこれから〜」、この番組では、移動と街づくりをキーワードに、日本各地の交通や都市、そしてそこで暮らす人々との未来について、第一線で取り組まれているゲストの皆さんと一緒に考えていきます。本日のテーマは、房総ローカル線と小湊鉄道の社長が動かす新しい一歩。千葉県房総半島を走るローカル線、小湊鉄道の社長さんに、実際の現場のお話と、これからの新しい取り組みについてお話を伺ってまいります。
本日のゲストは、小湊鉄道株式会社代表取締役社長、石川晋平さんです。石川さん、よろしくお願いいたします。
石川:よろしくお願いします。
【ご縁に恵まれ生まれた鉄道経営者〜千葉・房総への深い思いとキャリア〜】
石井:はじめに、石川さんご自身のお話を伺いたいと思います。石川さんは千葉市のご出身で、地元の銀行で働かれた後に小湊鉄道に入社されたと伺っております。地元への思いや銀行員として地域を見てきた経験、そしてなぜ小湊鉄道に飛び込むことになったのか、この辺りの経緯を教えていただけますか。
石川:ありがとうございます。私はずっと千葉市で生まれ育ちまして、大学だけ東京に行って、就職の時に地元の金融機関に入れさせていただいたのですが、私、ご縁に恵まれた人生でして。
石井:ご縁に恵まれた人生(笑)。
石川:大学は実力で入りましたが、就職はご縁で地元の金融機関に入れていただいて、支店を回らせていただいたり、本部に行かせていただいたりしました。私の祖父が小湊鉄道の代表として経営を長く携わっていまして、私はその孫ということで、10年近く経った時に祖父から「小湊に来い」と言われまして。祖父から言われれば断るという選択肢はありませんでしたので、小湊に入れてもらったということで、私の意思は全くないという(笑)。
石井:おじい様からの強い要請があって、グループのトップとして就任されたわけですね。この20年間は人口減少が進む中で、ローカル鉄道の事業環境としては非常に厳しい状況になっているかと思いますが、その中で攻めの取り組みとして、今月3月15日から学生さん向けの全線年間パスポートを始められたと伺っています。この経緯や狙いについて、具体的にお話をお伺いしたいと思います。
石川:ありがとうございます。コロナが2020年から蔓延して、全国の公共交通は大きな打撃を受けて、徐々に戻ってきて今があるんですけども。一つだけ、コロナ以降もさらに下がり続けているという部分がありまして、それが鉄道事業の学生定期のご利用でした。改めて市原市の人口動向を市のホームページで詳しく調べてみましたら、この20年で沿線の特に南部の方、14歳以下の子供の人数が8割減という状況でした。
石井:8割減ですか。それはすごい数字ですね。
石川:8割減です。何も手を打たなければ、もっと減っていくだろうと。私たちだけで大きな社会課題を解決できるとは思っていませんが、何か始めないといけないと社内で色々話しました。やるんであれば、それなりのインパクトがないと誰も振り向いてくれない可能性もあるのではということで、年間1万円という金額を設定しました。根拠は全くなかったのですが、とにかく地元の人がふっと振り向いてもらえるインパクトを作らないといけないと。
【学生専用年間パスポートと地域寄付制度〜1万円が動かす沿線の未来〜】
石井:その年間パスポートの具体的な内容を教えていただけますか。
石川:名前が「学生専用全線年間パスポート」というもので、通勤定期とは全く別の商品です。通勤定期ですとご自宅近くの駅から学校がある駅までしか買えないと思うのですが、今回は学生専用の年間パスポートで全線ですので、沿線に住んでいない方でもいいんです。
石井:例えば東京に住んでいる、鉄道が大好きな大学生や高校生も対象ですか。
石川:可能です。30歳以下ということで、大学生、専門学生、もちろん高校、中学、小学生も対象です。とにかく、沿線に若い時に親しんでほしい、知ってほしいのです。将来的に移住先の選択肢の候補になるかもしれないし、そういうことを思っています。
石井:一方で、大幅値下げとなると経営への影響も気になります。寄付制度もあると伺っているのですが、どういう仕組みになるんですか?
石川:この1万円への大幅値下げは、自社で覚悟を持って臨みます。ただ、鉄道事業は現在赤字事業ですので、簡単に言えば赤字が増えるプロジェクトになります。だからこそ継続するために、一定の減収部分を賄う仕組みが必要で、「学生応援寄付 Go!ジモト」という寄付制度を4月1日から始めます。沿線の方、市民の方、観光客の方、県外の方、誰でも一口3000円から参加いただけます。
石井:寄付をした方には特典はありますか?
石川:寄付3000円に対して、全線39.1km・18駅の1日フリー乗車券を1枚ご返礼します。2000円相当になります。この話を沿線の方に、私は紙芝居を作って「こういうプロジェクトをやります、みんなでやりましょう、地元の子供を皆で育てましょう」という話を70ヶ所ほど回りました。町会長さんとかを9月から翌1月ぐらいまで、3ヶ月半、総距離1500kmほど回りました。
石井:70ヶ所、1500km。それはハードな行程ですね。
石川:そうですね。その中で、最初に話を聞いていただいた上総牛久駅の地域の方にお話をしたのですが、聞いてくれた一人が、うちの牛久駅の駅舎の一部を借りてスタンドコーヒー屋さんをやっている「ushikuni cafe(ウシクニカフェ)」のお姉さんという女性で、帰りに「ぜひ参加させてほしい」と声をかけてくれたのです。どのように参加するのかと聞いたら、「寄付3000円に対して、小湊の1日フリー券に自分のところのコーヒーも無料で付けさせてくれ」と言ってくれました。
石井:それはいいお話ですね。
石川:嬉しくて、背中を押される形で、同じ考えを持ってくれる事業者さんがいるのだなと思って、沿線の事業者さんみんなに声をかけ始めましたら、皆さん快諾してくれて。実は3000円の寄付に対して、約20の返礼品が付いてくることになりまして。コーヒー、チョコレートマカロン、養老渓谷の日帰り温泉割引券など18の返礼品が揃いまして、その中から7つ選んで1年間のうちにご利用いただけるというチケットをお渡しするという制度になっています。
石井:寄付の目的が学生応援で、返礼品も地域の事業者さんが参加して、沿線が一体になった取り組みですね。しかも国内外から参加可能と。
石川:そうなんです。将来の地域を担う人材への貢献ということが目的の寄付ですから。非常に楽しみですね。
石井:ありがとうございます。前編では、千葉で育ち地元銀行で地域を見つめ、おじい様からの要請で若くして小湊鉄道の社長になられた経緯をお話しいただきました。そして今月15日からスタートした学生専用全線年間パスポートと、地域が一丸となった寄付制度のお話を詳しくお伺いすることができました。来週は、これからの小湊鉄道の未来と、房総半島という地域についてのお話を、より詳しく伺っていきたいと思います。石川さん、今日はありがとうございました。
石川:こちらこそ、どうもありがとうございました。
石井:最後にお知らせですが、今回の放送はradiko、当社YouTubeでご視聴いただけます。そちらもチェックしてください。この番組はWill Smartの提供でお送りしました。












