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バス共同経営セミナーレポート第1回「バス共同経営の裏話」

こんにちは。ミライコラボ編集部です!

 2021年4月1日、熊本県ではバス事業者5社による日本初となるバス共同経営が開始されました。バス共同経営は、地方バス事業者が抱えている人口減少による経営悪化や過疎化地域の路線廃止などの課題を受け、収益改善や、重複運行路線の効率化に向け、国土交通省が独占禁止法の特例法により地域交通事業者の連携を後押ししたことをきっかけに、準備が進められてきた、交通業界でいま注目の取り組みのひとつです。

そうした中で、4月に始まった熊本県のバス事業者5社によるバス共同経営について、九州産交バスのプロジェクト担当の今釜さんと共同経営を支えるデータ分析システム構築を担ったWill Smartの担当の須藤さんが取り組みを詳しく解説したオンラインセミナーが開催されました。セミナーは、熊本市のバス共同経営に至る経緯から運営方法、課題や展望など経験に基づいた様々なお話や複数社の形式が異なるバス関連データの統合、分析などを実現したWill Smart提供の「バスダイヤ統合分析サービス」の開発経緯や活用方法の解説など、盛りだくさんの内容でした。

ミライコラボでは、中でも注目のトークセッションの一部を全3回に分けてレポートします。
今回更新の第1回では、「バス共同経営の裏話」についてのトークをご紹介します!

共同経営の体制について

(写真左から順に、九州産交バス・今釜卓哉さん/Will Smart・須藤久寿さん・萩原崇寛さん)

須藤:トークセッションということで、さっそくバス共同経営の裏話について伺いたいと思います。まず、今回は5社の共同経営ということですが、どのような方がプロジェクトに参加されていますか。

今釜:熊本市のバス共同経営では、各バス会社から最低1名ずつ参加いただいております。また、バス会社だけではなくて、熊本県と、熊本市といった行政の方もいらっしゃいます。やはり仕事をやるには、同じ場所で膝を突き合わせてやるのが重要ということで、各会社のご理解があって、このような体制で毎日楽しく業務にあたっております。

須藤:行政の方も一緒なんですね。バス会社5社、そして行政の方も含めて、社外の方たちが集まって仕事をする場合、コミュニケーションや合意形成などは大変だったのではないでしょうか?

今釜:そうですね、特に細かな部分になると大変です。なぜかというと、物事をひとつ決めるにしても、5社の経営に関わる方の判断が必要になります。さらに行政側にも、課長、部長、局長といった役職の方がいらっしゃいます。正直、すべてを聞きながら進めるのは、一筋縄では行かず、とても難しかったです。しかし自分たちのテーマはひとつで、「データを使って、いかにみなさんにわかりやすく説明するか」です。これをみなさんに承認いただいて、さらに地域の協議会などでも、そういった形でお話をさせていただきました。その結果、全体の共通認識として明確な目標があったので、そこまで大きな認識の違いにはならず停滞することはありませんでした。

須藤:なるほど。共通認識で明確な目標を持つのは大事ですよね。今のお話でデータというワードが出てきましたが、5社あるとデータの形式も各社違うのではないでしょうか?

今釜:実は以前から、熊本のバス会社はICカードやバス行き先表示の記号など、サービスを共有して5社で一緒にやってきたという文化がありました。しかし、路線とダイヤのデータについては、カルテルに該当する恐れがあり、今まで議論ができていませんでした。今回はそうしたお話できていなかったデータの部分についても議論ができ、新たに大きな一歩を踏み出せたと思います。また熊本の場合はGTFS-JP(※1)のフォーマットを揃える取り組みも進めております。以前は、フォーマットを整えないでバラバラでデータ分析をシステム会社さんにお願いしていましたが、バラバラだとデータのクレンジングにかなり工数が掛かり、費用も高くなってしまうので、現在はフォーマットを揃えることを仕組化しております。
※1 GTFS-JP:「標準的なバス情報フォーマット」における静的データフォーマットであり、国際的に広く利用されている公共交通用データフォーマット「GTFS」を基本に、日本の状況を踏まえて拡張されたもの。

共同経営におけるデータ分析

須藤:複数社が関わるデータ分析ではフォーマットを徐々に統一していくのが大事かもしれませんね。今年度から分析ツールを使った分析、施策がいろいろと動いていくと思いますが、以前は、どのように分析を行っていたのでしょうか。

今釜:以前は、各社エクセルでICカードの基礎データを基に集計していました。この場合欠点なのは、なにか新しく分析をしようとしたときに集計や加工を一からしなくてはいけないところでした。ここがとても大変で、どちらかというと分析が主人公なはずなのに、どうしても集計が主人公になっているというのが現実として起きていました。今回、分析ツールを導入したことで、新たな改めて「分析」というところに焦点を当ててデータ活用を進めていけたらと思っています。

須藤:今回、共同経営というところを大きなポイントにしていますが、地方では、バス会社さんが単独で運行しているところもあります。そういったケースでも今回の分析ツールの活用は役立つと思われますか。

今釜:今回のセミナーでは、共同経営を軸にお話しましたので、共同経営専用のツールかと思われるかもしれませんが、ツール自体は”分析ツール“なので、むしろ1社の方が使いやすいと思います。例えば複数社でデータを取る場合は、システム会社さんにフォーマットを整える作業を依頼する必要があり、この作業は、とても工数が掛かります。しかし、1社で導入する場合はこの作業が必要なくなるので、その分安価になります。一方で、分析レベルを上げるには多くのデータが必要になります。そういった意味では、1社ではデータが足りないのではないかと思うかもしれません。しかし、不足したデータについては、私たちが今回得たデータを提供したり、ノウハウを共有したりすることで、分析に必要なデータを補えますので、ぜひ相談いただければと思っています。

須藤:そうですね。我々としても、共同経営でも単独のバス会社さんでもまずご相談いただければと考えています。

今後の展開

須藤:さて、いよいよ今年度から共同経営が本格稼働されていくと思うのですが、どのような施策を予定していますか。

今釜:共同経営でみなさんが期待しているのは、利用者にとって、どのようにサービスがよくなり、利便性が上がるのかといったところだと思います。今年度から始めるサービスとして今話しているのは、5社共通で使える共通定期券の発行ですね。定期券といっても、コロナ禍では定期券だと元が取れないといった、お客様の声もお聞きしますので、もう少し中頻度寄りの商品を5社一緒にできればよいかなと話し合っております。さらに5社だけに限らず、今後は熊本市内を走る路面電車や、タクシー会社などとも連携して、お客様にとって、また交通業界にとって双方にメリットが得られることを会社間の壁を越えてやっていきたいと思っています。

あわせて読みたい!第2回はコチラから!

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