
移動を支えるのは“人”― ハイウェイパイロットとWILLER EXPRESSの未来戦略
移動を支えるのは“人”
― ハイウェイパイロットとWILLER EXPRESSの未来戦略
| 運転士不足が深刻化するなか、WILLER EXPRESSは運転士を「ハイウェイパイロット」と再定義し、誇りある専門職としての価値向上に挑んでいます。 2024年から3年間で年収を200万円引き上げる大胆な給与改革に加え、共同生活型の研修施設「WILLER LABO」で未経験者も一から育成し、マインドと技術の両面を磨く独自の人材戦略を推進。 高速バスの安全・安心を支える“人”への投資を通じて、移動体験の質をどう高めていくのか。Will Smart石井が、WILLER EXPRESS平山社長とともに、これからの人材育成とサービス革新のあり方を掘り下げます。 本対談の前編では、WILLER EXPRESSがこれまで実践してきたサービス革新や、高速バス市場の変化について掘り下げています。 |
- 番組名
- 『まちと移動のミライコラボ』全文書き起こし
- 放送日
- 2026年1月18日
- ゲスト
- 平山幸司 氏(WILLER EXPRESS株式会社 代表取締役社長)
目次
【オープニング】
石井:「まちと移動のミライコラボ ~Will Smartと街づくりのプロが描く日本のこれから~」
この番組では、移動と街づくりをテーマに、日本の移動インフラや私たちの暮らしを支える仕組みがこれからどう変わっていくのかを、第一線で取り組まれている方々と一緒に考えていきます。 私、石井はWill Smartという会社で、鉄道、バス、観光、地域交通などの分野でデジタルの力を使いながら、移動をもっと便利に、街をもっと元気にする、そんな取り組みを全国で行っています。 この番組は、そうした現場で見えてきたリアルな課題やこれからの可能性をリスナーの皆さんと共有する場として立ち上げました。
石井:今週も引き続きWILLER EXPRESS株式会社 代表取締役社長 平山幸司さんにお話を伺ってまいります。今週もよろしくお願いします。
平山:よろしくお願いします。
【人手不足への挑戦:「ハイウェイパイロット」の誕生】
石井:前回のお話では、WILLER EXPRESSの特徴やお客様を中心としたビジネスの話をしました。今週は業界全体として最近良くお聞きする運転士不足、人手不足が非常に課題になっているとお聞きするのですが、WILLER EXPRESSさんは特徴的な取り組みをされていると伺っております。その取り組みについて未来志向も含めお話をいただければと思います。よろしくお願いします。
平山:はい、お願いいたします。弊社ではですね、世の中でいう運転士、乗務員の呼称を、2024年から「ハイウェイパイロット」と呼んでます。
石井:ハイウェイパイロット。それ、すごいですね。
平山:私どもは高速道路上、いわばハイウェイを走ることを生業にしていまして、そこを運転する運転士は大型二種という免許が必要なんですよ。
石井:非常に難易度が高いですよね。
平山:はい、最高峰の資格なんですね。その高速道路上を最高峰の技術を持った人が運転する、まさにハイウェイパイロットの名称はF1パイロットから来てるんですよね。
石井:あ、そういうことですか。まさに最高峰の資格を持ってる人、だからパイロットということですか。非常にクリエイティブなネーミングですよね。
【給与体系の抜本的な改革】
石井:このハイウェイパイロットという言葉を使うのは、非常に誉れ高い仕事であるということを定義されたということだったと思うんですけど。 ただ名前だけを変えたってことでは決してないんですよね。
平山:そうですね。皆さんもご存知だと思うんですけど、人手、なり手が少ない、それはなぜかと言うと給料が低いんじゃないか、みたいなことも結構あって。そういう中で私どもは、先週も少しお話しましたが、価値を生み出すことでお客様からは対価をいただく、そういう流れの中からハイウェイパイロットも給料をしっかり上げていこうと思ったんですよ。
石井:すごく大事な話です。今様々な業界で人手不足は課題となっていますが、よくよく見ると人がちゃんと集まっている会社さんも実際ありますよね。その企業のお話を聞くとやはり賃金、給与を上げたということをされている。まさにそれをやられたと。
平山:そうです。2024年から向こう3年間で、給料年収200万上げるという。
石井:そんなに上げたんですか!それはすごい、そこまで上げたお話はちょっと正直聞いたことがない。
平山:この2026年は最終年度3年目になるんですが、ちょうど200万になる仕上がりの年になるんですよ。
石井:それはもう皆さんハッピーですね。
平山:ただ、単に給料を上げるだけじゃなくて自分たちも変わろうと。運転士じゃない、乗務員じゃない、ハイウェイパイロットなんですよって。
石井:ハイウェイパイロットになれば200万上がるんだと、そういう話ですか。
平山:そうです。だから車内で自分の名前を名乗る際は、「今日のハイウェイパイロットは〇〇が担当します」というふうにアナウンスしています。
石井:そこまで徹底されているんですね。それはすごいですね、お客様もびっくりされるんじゃないですか?
平山:もちろんお客様もびっくりされていますし、当初はアナウンスするほうもちょっと恥ずかしい。でもちゃんとパフォーマンスとして安全やサービスを提供できると堂々と言えるようになる。ここに、給与とのバランス価値があるんじゃないかということで意識改革ですよね。給料が上がる、名称を変えるということで意識の変革というところが来て、そこで行動変容にどう持っていくか。そこがサービスに繋がっていくということなんだと思うんですよね。
【独自研修施設「WILLER LABO」】
平山:ただ私どもは、当然給料も上げたこともあるんですけど、もう一つしっかりと教育する仕組みを作ったんですよ。
石井:おお、なるほど。
平山:経験者に留まらず、未経験の方にも門戸を広げて、その方々にしっかり教育します。 3ヶ月は共同生活をしてもらってるんですよ。
石井:住み込み合宿みたいな形ですか。
平山:寮みたいなのがあって、そこで3ヶ月同じ釜の飯を食べる。ご飯は食べ放題。
石井:ご飯食べ放題、それ良さそうですね。
平山:おかずは自分らで作ったり、仕出しで頼んだりもできるんですが、大体みんな自分らで作ってますね。
石井:まさに同じ釜の飯。それを地で行ってらっしゃると。
平山:最近ちょっと面白いんですけど、若い子たちってみんな焼肉好きなんですが、換気ができなくて煙モクモクになっちゃうんですよ。そこで換気扇をいっぱい付け直すというリノベーションも行いました。
石井:そこまで合わせてあげる。すごい優しい会社ですね。
平山:ありがとうございます。そういう形で研修施設を作って、そこでゼロからしっかり運転技術だけじゃなくマインドも学ぶ。お客様サービスに対して何が必要なのか、海外の方の英会話の練習なども学んでいます。
石井:その施設のお名前はあるんですか?
平山:WILLER LABO(ウィラーラボ、以下LABO)と言っています。
石井:LABOと言うんですか。かっこいいですね。で、LABOを出るとハイウェイパイロットになると。
平山:LABOを卒業すると今度は営業所に配属され、そこでもっと具体的な道を覚えたり、実務的なことを覚えてもらうのに約2ヶ月から3ヶ月。
石井:そういうステップを踏みながら。
平山:大体5ヶ月から6ヶ月は研修してますね。
石井:まさにそのプロになるための道をちゃんと段階的に用意されてるってことですか。
平山:ただですね、飛行機のパイロットもそうですけど、育成・養成期間ってものすごく長いですし、一生だと思うんですよ。大事なのは、しっかりと教官が教えながら、時には人生の厳しさも教えながら一人前のパイロットになって卒業させる。そうすると横の繋がりがすごく強くなって辞める人が減るんですよね。
石井:なるほど、リテンションのカバーということですか。
平山:人を取るだけじゃなくて、辞める人を減らすということが大事じゃないですか。そうすると、やはり横の繋がりはすごく大事ですね。同期という仲間。
石井:一緒にステップアップしてきた人ですもんね。
平山:ちょっと挫けそうな時に「がんばれよ」という事を言い合う、そうすると本当に離職率が改善され、辞めなくなりました。
【グローバル採用の展開:6カ国からの挑戦】
石井:採用に関して言うと、日本人だけではなく外国人も採用しているとお聞きしています。その辺りについても詳しく教えてください。
平山:2025年はかなり海外に行ってきました。
石井:直接行かれたんですか。
平山:もういろんな国へ行きました。共通して思うのは、日本で働きたい人がこんなにもいるんだということです。必死に日本語を勉強されて、1日10時間勉強するんですよ。
石井:そんなにされるんですか。
平山:1日ずっとひたすら日本語を勉強して、日本語の言葉だけじゃなく日本式の生活スタイルなども大体10ヶ月ぐらい学んでいて。みんな本当に一生懸命頑張ってて、こういう方々がみんな日本で働きたいと言うわけですよ。
石井:どういった国に行かれたんですか。
平山:フィリピン、ベトナム、ネパール、バングラデシュ。 今年はインドとインドネシアに行ってきます。
石井:6カ国。それはすごいです。バス業界全般での外国人のドライバーさんは今どういう状況下にありますか。
平山:ようやく各社が採用を始めたところです。今は比較的日本にいる人、外国で来られた人がそのまま運転っていう仕事を、免許を取得して業種変更してという方がだんだん増えてきたという感じです。もちろんその形もあるのですが、私どもはそれぞれの国に行って教育機関と話をして、1年間で20人ください、といったようにオーダーをかけるんですよ。
石井:なるほど、その方たちはLABOに入れると。LABOは外国人の方も日本人の方もいらっしゃると。
平山:もちろん一緒です。そこは僕はフラットだと思っています。
石井:それはまた、ますます面白い取り組みですね。
平山:日本語を学ばれて来ますので、みんな日本語で話すということになります。
石井:それは非常に面白い取り組みですね。
【移動の未来:次の10年、20年へ】
石井:それでは最後に、WILLER EXPRESSさんとして、これからの10年。移動はどういうふうに変わっていくのか。これはご自身の考えでも構いませんし会社としてでも構いませんので、その辺のお考えを最後にお聞かせいただけますでしょうか。
平山:やはり人口減少はなかなか止めることはできないですし、高齢化という問題もありますよね。特に従事される運転を生業にされる方の高齢化は今本当に大きな課題になっていると認識してます。そうすると、我々だけではなくいろんな会社の運転する方々が減少し輸送力も減ってくる。 これは間違いないです。そこを補完するのは先ほどお伝えした日本で働きたいと思っていただける海外の方々を仲間にすることだと思っています。
一方で、移動手段がかなり逼迫してくるという点も問題になってくるかと想像しています。特に万博の時もそうですが新幹線は常に満席でしたよね。当然外国人観光客の方が乗車していたのですが、今まで空いていた席が本当に埋まってしまっていて。じゃあ、この状況から輸送力が2倍になるかといえば絶対に無理、1.5倍でも無理ですよね。
石井:無理です。
平山:そうすると、やはりバスという移動手段は絶対に必要だと思うし、長距離を移動する上で必ず必要になってくると思っています。ですから、いわゆる需要という面では、将来も実を言うとそんなに変わらないような気がしています。一方で、我々供給する側としては、しっかりとその任務というか責を負って、これからの10年も20年先もしっかりとお客さまに安心安全な移動を提供したいと考えております。
【エンディング】
石井:2週に渡り、WILLER EXPRESSの平山さんからお話を伺いました。 20年に渡る新しい移動の創造の話、そして、これから10年、少子高齢化、人口減少の中で、いかに移動の価値を高めていくか、そんな非常に面白い取り組みをお話として伺いました。明るい移動の未来を皆さんも感じられたのではないでしょうか。
来週もゲストの方をお呼びして、移動の未来、街の未来について、プロのお話を伺っていきたいと思いますので、是非とも楽しんでいただければと思います。
平山さん、本当にありがとうございました。
平山:ありがとうございました。







