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「ミライの種」飛島建設 企画本部新事業統括部 科部課長インタビュー 後編

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各分野における経営のプロフェッショナルたちが考える未来への戦略、未来への投資、そして未来像とは?過去から現在、そして未来の花咲くカギとなる「種」とはどんな姿なのか?その「歩み」を辿りながら「ミライの種」に迫ります。

前編に引き続き、今回お話をお伺いするのは、飛島建設 企画本部新事業統括部 科部(しなべ)さん。飛島建設に入社後、一級建築士の取得や中央大学ビジネススクール(中央大学大学院戦略経営研究科)・南極隊参加など、豊富な経歴をお持ちでいらっしゃいます。ITやAIが進化し続ける今、建設業界にはどのような影響があるのか。建設業界のミライや飛島建設のミライについてお話しいただきます。

「共創のミライの種」

前編でもお話しいただいたWill Smartと共同開発された建設現場向けプラットフォーム「e-Stand」、現場でどのように活用していますか。

「職人さんが現場の外に買いに行かずとも『e-Stand』からお弁当を頼めます。また、キャッシュレス決済なので、その場での現金精算がなくなったことは職人さんにとって便利になったと思います。また『e-Stand』は動画も閲覧できるようになっているので、現場でのルールや工事概要説明、新規入場教育などを動画で職人さんに見ていただくことが出来ます。現場で一から説明していた時間が「これ見ておいてね」の一言で完結しますし、多言語対応によって外国人の方にもわかりやすく共有可能であることは効率化に加え生産性向上にも繋がっているでしょう。
加えて、デジタルサイネージと連携し、職人さんが日々使う道具や靴などの情報も配信しています。デジタルサイネージ上で商品の動画を流すことによって、「こんな新しい道具があるんだ」と知るきっかけが生まれます。もちろん、それらの商品はワークマン様等と協業する事で『e-Stand』からワンストップで購入していただくことができ、現場に商品を届けることが可能となりました。一長一短ありますが、個人で買うお弁当、道具などをOne IDで購入できることは便利な面が大きいと思いますし、BtoCに対応しているだけでなく、BtoBにも対応しています」

Will Smartと協業する上で期待している点はどのようなところですか。

「建設業のknowledge(知識)とWill Smartのknowledgeを引き出し合い、共に創る『共創』を展開していきたいですね。さらに『e-Stand』を活用し、他企業との繋がりを広げてより良いものにしたいと考えています。これまでゼネコン会社が開発したシステムは自社のみで利用していることがほとんどでしたが、『e-Stand』は他ゼネコン会社にも展開しています。職人さんが年間400人弱、つまり一日一人どこかで亡くなっている建設産業の大きな問題を、一つでも二つでも食い止めるために、各社協力していくことが大切だと思っています。教育動画や多言語対応など、各ゼネコン会社で共有し、建設業界をより良くする上で、様々な会社と協業もとい共創していきたいと思っています」

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「コミュニケーションのミライの種」

現場の人たちのモチベーションアップやコミュニケーションに活用できるようなソリューションを作られていることが分かりました。開発する上で大事にしていることは何かありますか。

「アナログだけでは出来ない部分を補完するために、ITやICTを活用することは大切だと思います。しかしすべてをITソリューションに頼るのではなく、リアルコミュニケーションを大事にしています。」

貴社で取り組まれている「リアルコミュニケーション」とは、どのような取り組みですか。

「新しいことをしているわけではないのですが、人材育成の際は、先輩・上司が新人の子を育てる、というOJTの文化は大切にしています。また現場においても、職人さんに対し指示する、だけではなく一緒に取り組むことを心がけています。やはり人間ですから、メールや電話一本で「やっておいて」と言われても良い気はしませんよね。もちろん、仕事である以上職人さんも頑張ってくれますが、心底「その人のためにやろう!」と言う気にはなりにくい。一緒に取り組むことで良い関係性をつくることが出来ます。それは、今も昔も変わらず大切にしていることですね」

いい話ですね。建設業界というと指示命令系統がピラミッドのようにあるイメージでした。

「縦の壁と横の壁をいかにうまく取り除くかは、一つのプロジェクトを行う上での重要なミッションだと思います。ただ、一方で、安全を及ぼす危険性やルールを守れない職人さんに対してはトップダウンになったとしても明確に認識させなければいけません。そのため、フラットな関係性とトップダウンにおける指示、両輪を使い分けるよう心掛けています」

科部さんは、入社後に南極に行かれたりビジネススクールに行かれたり、と非常にユニークな経歴をお持ちですね。

「当社では南極隊員を毎年一人派遣しており、私も参加したかったので手を挙げました。南極に行くためには一級建築士の資格が必要なので、25~26歳のときに取得しました。その後31歳に南極へ、38歳には中央大学ビジネススクールに入学しました」

南極での生活はいかがでしたか?

「南極隊は、約60名が1パーティーとなって生活・研究を共にします。私たちのパーティーは64名でした。観測隊ですから半分が研究者、宙空・氷・生物・気象など様々な分野の研究者が集結します。そして残り半分の約30人が生きていくための専門家です。日本と衛星通信する人・ごみ処理する人・水や発電機のプロ・トラックのプロ・雪上車のプロなど。他に医者や料理人もいます。それぞれ専門家は一人ずつ、つまり30業種くらいのプロがいれば生きていけるということですね。私は基地建設の監督として参加しました。あらゆる業種のプロフェッショナルと日々会話しプロジェクトを遂行したことは、非常に良い経験となりました」

南極で得たものは色々あると思います。中でも一番大きな成果は何でしょうか?

「真の『チーム力』を実感したことは何よりの成果だと思います。先ほども述べたように各専門家が一人のみ、私が担当する基地建設においても大工さんは1名いましたが、監督と大工さんだけでは基地はつくれません。しかし、夏の間に基地をつくらないと冬を越せないため、今までスコップを持ったことのない研究者を含め、64人中40人くらいが穴掘りやペンキ塗り、基地の設営など建設作業を毎日行い、私は監督・管理を担当しました。プロジェクトへの参加前、「素人と建設するのは大変だろう」と懸念していましたが、作業を通じてチーム力が高まる事で結果も出始めました。「掘っておいて」と伝えただけなのに、てこの原理を利用しスピーディーに作業する人がいたり、様々な場面で各々が考え作業する姿を目の当たりにしました。1対1でやっていると足し算なのですが、チームになった瞬間に掛け算になる、ということを体感出来たことは大きな成果ですね」

なるほど。そのような体験から「ITソリューションに頼るだけではなく、リアルを大切にする」というお話に繋がるのですね。

「そうですね。リアルでチーム力を築くことは本当に大切だと思います。南極では喧嘩したとしても逃げ場がないので、人と人との関係性づくりは非常に大切だと実感しました。関係性は、安全や生産性にも影響します。南極での建設作業時も、一日働くだけで皆とても疲れると思うんです。でも「やめる」とは言わないんですよね。そこは「やれ」と言われて動いているわけではないからだと思います。南極では、何をするにしても一人では出来ないんですよ。研究するときも誰かに手伝ってもらわないといけない。料理人は二人いたのですが、約60人分の料理を出すためには二人の料理人では間に合わない。何事も手伝ってもらわないと出来ないんですよね。一人では出来ないことが、チームになったときに実現可能となります。「この人のために、私たちのチームのために!」という思いは成果に繋がるのだと実感しました」

様々なお話ありがとうございます。科部さんはこれからのミライ、どのような形が理想だと思いますか?

「今後AIやIoTを活用することで、欲しい物が購入しやすくなったり、多言語でのコミュニケーションも取れるようになる。今まで困っていた面を解消できる部分は大きいでしょう。ただ、リアルは必ず残すべきだと私は思っています。AIでバイタルをとることは出来ても、人の感覚や表情を読み取ることができるのはもう少し先の未来でしょう。そこはFace to Face。人と人との関係性が大事なところだと考えます」

 

最後にあなたのミライの種を教えてください。

「私のミライの種は組織力です」
チームとITの融合で組織力を向上させたいです。この力は、数パーセントの生産性向上ではなく、想像以上のミライを共創することができると考えています。


科部 元浩
1997年飛島建設株式会社入社。以来、建設現場の管理者として従事、2006年~2007年には第48次南極地域観測隊に設営一般(建築)として参加、2016年経営企画室新事業統括室課長に就任、2017年より企画本部新事業統括部新事業開発T課長を務める。その間、2015年に中央大学大学院戦略経営研究科を修了、MBAを取得。

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