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「ミライの種」飛島建設 企画本部新事業統括部 科部課長インタビュー 前編

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各分野における経営のプロフェッショナルたちが考える未来への戦略、未来への投資、そして未来像とは?過去から現在、そして未来の花咲くカギとなる「種」とはどんな姿なのか?その「歩み」を辿りながら「ミライの種」に迫ります。

今回お話をお伺いするのは、飛島建設 企画本部新事業統括部 科部元浩(しなべもとひろ)さん。飛島建設に入社後、一級建築士の取得や中央大学ビジネススクール(中央大学大学院戦略経営研究科)・南極隊参加など、豊富な経歴をお持ちでいらっしゃいます。ITやAIが進化し続ける今、建設業界にはどのような影響があるのか。建設業界のミライや飛島建設のミライについてお話いただきます。

「建設業界のミライの種」

建設業界はオリンピックなどの好機な需要に向け稼働しているものの、他業界と同様に労働力不足をはじめ、あらゆる課題も多いと考えます。今、建設業界が抱える問題や建設事業を取り巻く環境変化に対してどのようにお考えですか。

「バブル時代、建設業界は80兆円を超える産業でした。現在は減少傾向にありますが、それでもまだ54兆円ほどの産業です。しかし今後人口減少の影響を受け、建設市場も徐々に縮小していくでしょう。さらにオリンピックや大阪万博が終わった後、国内の建設需要はより一層減少していくと考えています。そのためゼネコン各社は今、海外に目を向けた戦略に注力しています。また大きな課題として職人さんの高齢化により、この先数年で職人さんの数は一気に減少するでしょう。この課題を受け、人材不足の課題解決における生産性向上ロボットの活用も必須と考えます。加えて、IT系インフラを駆使したスマートシティづくりなど産業発展にもつながる活動に向け、積極的に動いていきたいところですね」

現在「スマートシティ」に対してどのような取り組みをされていますか。

「スマートシティを実現するための施策の一つとして、この4月からDX部という新部署を立ち上げました。当社には建設本部と土木本部があります。事業内容は大きく違うのですがそれぞれにDX部を配置、それらをクロスファンクションするDX推進統括部を経営企画部に新設しました」

DX部とは具体的に何を担う部署ですか。

「今後のIT戦略を担っていく部署です。DX(デジタルトランスフォーメーション)の概念は決まっているものではないのですが、当社においてはITやIoT・AIなどを今後どのように活用していくか、ビッグデータの収集・活用をどのように行っていくか、を考えていく予定です」

建設業界が昔と比べて進化した部分はありますか。

「技術の進歩に伴い、工事施工能力や工期短縮・コストを抑える術など、皆さんが想像する以上に進化していると思います。また、昔と比べて大きく違うところはITが活躍していることでしょう。ただ、私個人の意見では『突出した革新的なもの』に値する進化はまだ無いと思っています。30年前・50年前でも東京タワーは建っていたし、トンネルも掘っていましたよね。大きな変化や進化がなくとも結果としては出来るということです」

効率化の背景にITは大きく寄与していますか。

「昔は設計も手書き、青焼きしていたものが、CAD(※1)になりました。今は主に二次元CADですが、今後はBIM/CIM(※2)という三次元で管理出来るようになります。そういった点では効率化していますし、今後も益々進化していくでしょう。また昔は電話もないので無線やインターフォンを活用していましたが、今はスマホやチャットによってコミュニケーションの速度も加速していますよ」

建築技法における効率化はどのような点ですか。

「工場生産に変化したことで、時間短縮や生産性向上に繋がっていると思います。革新的だと言えるのは『PC工法(プレキャストコンクリート工法)』です。簡単に言うとレゴのようなイメージで、あらかじめ工場で作ったコンクリート部材を現場に運び入れ、組み立てます。昔はコンクリートもすべて現場で作っていましたが、現場で生コンから作ると、雨風の影響などを受けて、品質にばらつきが出てしまうんです。それを一括して工場で作ることで品質が保たれ、性能も上がりました。また建築では、この工法により超高層の建物を作ることが出来るようになりました。昔の技術では出来なかったこともPC工法によって出来るようになった、この点では昔と比べて、時間も質も向上していると言えるでしょう。一方で、まだまだ人の力を頼っている部分も多いため、大幅な時間短縮とまではいかないと思います」

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「飛島建設のミライの種」

貴社では、「New Business Contractor」への進化を中期経営計画で掲げております。今後どのように変化・進化していくのでしょうか。現在取り組まれている施策についてお話しいただけますか。

「日刊建設産業新聞にも掲載されたのですが、北海道のトンネル事業でIoT-Smart-CIPという入坑管理システムを導入しました。トンネル建設工事の際に、入坑者の名前や人数を管理したり人と機械の距離が近いときに接近警告を知らせたりするシステムです。」

バイタルデータの管理も出来ると伺いました。他社も同様の施策に力を入れているのでしょうか。

「施工的な技術開発はゼネコン各社が行っています。今の段階では、どこの会社が大きく抜き出ている、というのは正直ないと思っています。トンネル工事での事故は死亡事故にも繋がる可能性が高いため、どこの会社も『ITやAIを活用しながらなんとか防ごう!』というのが最大のコミットです」

建設現場では大勢の人が動きますよね。どのように現場の人々を管理されているのでしょうか。

「建設業は特殊です。会社や工場であれば自社の社員、もしくは下請け会社の社員が関係する程度かと思います。一方で、建設業では一つの敷地内に複数の違う会社が関わるのが通常です。例えば、土木の現場では、10社ほど、建築の現場では30社ほどの業者が同じ時間に同じ場所で作業するんです。こういった現場は建設業の他に造船業くらいではないでしょうか。違う会社の大人数をいかにまとめるか、ここが私たちの仕事です。管理面に問題があれば、伝達が出来なかったり、どこで誰が何をやっているのかが把握出来なくなってしまいます。この点は昔から挙がっている課題点ですね」

Will Smartと共同開発された建設現場向けプラットフォーム「e-Stand」は、人を管理するという課題を解決出来るものになりますか。(e-Standの紹介ページはこちら

e-Standの前に立つ科部さん

「管理と言われることが多いのですが、実はそうではないんですよね。管理ももちろん大切で、国の施策としても職人さんのIDを作り入退場管理やバイタル管理をしようと開発が進んでいるところです。しかし職人さんは、管理されることを嫌がる人が多いんです。「管理されたくないから職人をやっているんだ」とおっしゃる人もいます。そういう考えを持った職人さんのバイタルや位置情報など、すべてを管理する事でむしろ生産性が上がらなくなってしまう可能性もあります。
バイタル管理や位置情報管理のシステム開発は様々なゼネコン会社も行っていますので、我々は職人さんのモチベーションを上げるシステムを開発しようと考えました。入退管理のために機械を置くのであれば、何か職人さん達の活力になるものを組み込もうと。そこで開発したのが、昼食や職人さんに必要となる道具などを買えるEC機能です。
働く人々にとっては、お昼ご飯1つとっても、毎日同じようなお弁当ではモチベーションが上がらないですよね。ファストフードが食べたいのか、牛丼が良いのか、それとも300円のお弁当が良いのか。その時々によって、人によって、食べたいものは違うはずですから、様々な種類から選べることはそれだけでも嬉しいと思います。
職人さんは、手を抜こうと思えば今日の仕事を半減させることも出来てしまうかもしれない。そのように適当に出来る一方で「楽しいな、この現場」って思えたら、110%でも120%でも伸びる。さらにその力がチームとして集結すれば、生産性は測り切れない位に向上するのです。重要なのは、そこをどう引き出すか。この点をすべてアナログで行うのではなく、ITやICTを取り入れようということで『e-Stand』が誕生しました」

他にe-Standで出来ることはどのような事でしょうか。

「多言語対応も行っています。外国人の方が日本の現場で働くと、どうしても疎外感を感じさせてしまうことが多い。日本人も外国語を話せないし、外国人の方も日本語を話せないことが多い。コミュニケーションや教育をしたくても出来ない、という状況です。だからこそ、多言語対応することでこういった問題が解消すると同時に、外国の方に対して安心感を与える効果もあると思っています。例えばアメリカに行ったとき、英語表示ばかりの中で少しでも日本語を目にすると安心しますよね。多言語対応によって母国語の表示や動画の案内があることで現場や取り組みを少しでも理解できれば、外国人の方の意識も大きく変わると思います」

(e-Standの紹介ページはこちら

後編では、「共創のミライの種」「コミュニケーションのミライの種」について迫ります。


科部 元浩
1997年飛島建設株式会社入社。以来、建設現場の管理者として従事、2006年~2007年には第48次南極地域観測隊に設営一般(建築)として参加、2016年経営企画室新事業統括室課長に就任、2017年より企画本部新事業統括部新事業開発T課長を務める。その間、2015年に中央大学大学院戦略経営研究科を修了、MBAを取得。

(※1)Computer Aided Designの略。コンピューターを活用して設計を支援するシステム。
(※2)Building and Construction Information Modeling/Managementの略。国土交通省が推進している、3 次元モデルを用いて関係者間で情報共有することにより一連の建設生産システムの効率化・高度化を図る取り組みである。

AI画像認識を活用した通行量・交通量調査とは

交通量調査は、国や自治体からの要請で主に都市計画や道路計画を目的として定期的に実施されるものです。実施のつど調査員を雇用し計測を行ってきましたが現在、働き手不足により人手による調査の継続は困難になりつつあります。そこで、活躍が期待されるのが通行量・交通量調査システムです。これにより、高い精度で車両のカウントを行うことに加え、ナンバーの認識や車種の検知、進行方向も検知することが可能になります。その手法や導入事例をご紹介します。
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