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自治体DXとは?成功につなげるためのポイントと推進手順を徹底解説

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デジタル社会の進展と自治体を取り巻く環境の大きな変化に伴い、自治体DXの重要性が高まっています。しかし、多くの自治体では予算や人材の不足、従来の業務プロセスへの依存など、様々な課題に直面しています。
本記事では、自治体DXの基本的な考え方から具体的な推進手順、成功のポイントまで、実務者の視点に立って詳しく解説します。

自治体DXの基礎知識

まずは自治体DXの基本的な概念について説明します。

自治体DXとは:定義と目的

自治体DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、デジタル技術を活用して行政サービスや組織のあり方を変革し、住民の生活の質を向上させる取り組みを指します。従来の行政サービスをデジタルに置き換えるだけでなく、住民にとって真に便利で使いやすいサービスを実現することが重要です。
例えば、単に紙の申請書を電子フォームに置き換えるのではなく、申請の必要性自体を見直したり、複数の手続きをワンストップで完結できるようにしたりすることで、住民の利便性を大きく向上させることができます。

なぜ今、自治体DXが必要とされているのか

自治体DXが求められる背景には、主に3つの社会的要因があります。
1つ目は、人口減少と高齢化による行政職員の不足です。多くの自治体では、今後さらなる職員数の減少が予想される中、行政サービスの質を維持・向上させていく必要があります。
2つ目は、住民ニーズの多様化です。デジタル社会の進展により、24時間365日どこからでもアクセスできるサービスが当たり前となっている中、行政サービスにも同様の利便性が求められています。
3つ目は、行政サービスにおけるセキュリティと利便性の両立への要請です。個人情報の保護を確実に行いながら、同時に利便性の高い行政サービスを提供することへの需要が高まっています。デジタル化によって強固な情報セキュリティを確保しつつ、効率的なサービス提供が可能となり、行政のデジタル化に対する住民の理解も深まっています。

自治体DXがもたらす具体的なメリット

自治体DXの推進は、住民サービスと行政運営の両面でメリットをもたらします。
住民サービスでは、行政手続きのオンライン化により、時間や場所を問わずサービスを利用できます。これまで平日の日中のみ対応していた各種申請が、24時間365日いつでも可能となり、仕事や育児で忙しい方でも便利に手続きができる環境が整います。
また、窓口での待ち時間が大幅に削減されるほか、申請書類の記入負担も軽減されるでしょう。さらに、申請から処理までの状況が随時確認できるため、行政サービスの透明性も向上することが期待できます。
一方、行政運営の面では、定型業務の自動化による業務効率の大幅な改善が実現します。AI・RPAなどの技術活用により、これまで職員が手作業で行っていた業務の多くを自動化することが可能です。また、文書の電子化によるペーパーレス化は、保管スペースやコストの削減につながるだけでなく、文書管理の効率化ももたらすことになります。
さらに、行政サービスのデジタル化で得られるデータを活用することで、より効果的な政策立案が可能となり、職員の働き方改革の推進にもつながっていくでしょう。

自治体DX推進の対象領域

総務省は「自治体DX推進計画」において、自治体が優先的に取り組むべき対象領域を定めています。ここでは、各領域の具体的な内容と期待される効果について解説していきます。

情報システムの標準化・共通化

自治体の情報システムは、これまで各自治体が独自に構築・運用してきた経緯があります。そのため、システムの重複投資や自治体間での連携の難しさといった課題が存在していました。
情報システムの標準化・共通化では、基幹系17業務(住民記録、地方税、福祉に加え、介護保険、国民健康保険、就学などの基幹業務を含む)のシステムについて、国が定める標準仕様に準拠したシステムへの移行を進めています。これにより、以下のような効果が期待できます。
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 ・システムの調達・運用コストの削減
 ・ベンダーロックインからの脱却
 ・自治体間でのデータ連携の円滑化
 ・住民サービスの地域間格差の解消
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例えば、転出・転入手続きの場合、標準化により全国どの自治体でも同じ手順で効率的な住所変更が可能になります。また、各種証明書の発行手続きも統一化されることで、住民は居住地域に関係なく同じ品質のサービスを受けられるようになります。

行政手続のオンライン化

行政手続のオンライン化は、住民の利便性向上と行政の効率化を同時に実現する重要な取り組みです。特に、子育て、介護、引っ越しなど、住民の暮らしに密接に関わる手続きを優先的にオンライン化することで、大きな効果が期待できます。
具体的には、マイナンバーカードを活用した本人確認や電子署名、ぴったりサービスなどの電子申請システムの導入により、「いつでも」「どこでも」「簡単に」行政手続きが行えるようになります。
特にマイナンバーカードの活用により、これまで必要だった住民票や課税証明書などの添付書類が省略可能となり、申請者の手続き負担を大きく軽減できます。また、電子申請システムと基幹システムの連携により、申請から処理までの時間も短縮されます。

AI・RPAの活用による業務効率化

AI(人工知能)やRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)の活用は、行政事務の効率化を実現する強力なツールです。
例えば、AIチャットボットによる問い合わせ対応や、RPAによる定型入力作業の自動化など、これまで職員が手作業で行っていた業務を効率化することが可能です。特に、以下のような業務での活用が進んでいます。
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 ・住民からの問い合わせ対応
 ・申請書類のデータ入力
 ・各種集計作業
 ・文書の仕分けや転記作業
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実際の導入効果として、RPAの活用により定型的な申請処理作業の所要時間が大幅に削減され、多くの自治体で業務効率化に成功しています。このような効果は、職員の業務負担軽減や住民サービスの向上に直接的につながっています。

セキュリティ対策の確保

デジタル化の推進に伴い、情報セキュリティの確保はますます重要となっています。住民の個人情報を扱う自治体には、特に高度なセキュリティ対策が求められます。
具体的な対策としては、以下のようなものが挙げられます。
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 ・「三層の対策」による情報セキュリティの確保
※インターネット接続系、LGWAN接続系、マイナンバー利用事務系の3つのネットワークを分離することで、機密性の高い情報を確実に保護
 ・LGWAN(総合行政ネットワーク)の活用
 ・セキュリティ人材の育成
 ・インシデント対応体制の整備
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また、テレワークなど新しい働き方への対応も考慮しながら、セキュリティと利便性のバランスを取ることが重要です。
このように、自治体DXの推進には複数の重点項目があり、それぞれが密接に関連しています。これらの項目を総合的に推進することで、より効果的な行政サービスの実現が可能となります。

自治体DXの実践と成功のポイント

自治体DXの成功には、計画的なアプローチと実践的な知見が不可欠です。以下、推進手順と成功のポイントを解説します。

推進体制の構築と計画策定

推進体制づくりのポイント
自治体DXの成功には、全庁的な推進体制の構築が重要です。具体的には、首長のリーダーシップのもと、CIO(最高情報責任者)を中心とした推進体制を整備することが推奨されます。
体制構築において特に重要なのは、以下の3つの要素です。
 ・部門横断的な推進チームの設置
 ・デジタル人材の確保・育成
 ・外部専門家の登用やアドバイザーの活用
これらを組み合わせることで、持続可能な推進体制を構築できます。

実行可能な計画の立て方
計画策定においては、現状分析に基づく実現可能な目標設定が重要です。具体的には、以下のステップで進めることをお勧めします。
 ①現状の課題整理と優先順位付け
 ②短期・中期・長期の目標設定
 ③実施スケジュールの策定
 ④必要なリソースの見積もり
 ⑤KPIの設定

職員の意識改革とスキル向上

研修プログラムの設計
DX推進において、職員のデジタルリテラシー向上は避けて通れない課題です。しかし、一律の研修ではなく、職員の役割や習熟度に応じた段階的な研修プログラムを設計することが効果的です。
 ・管理職向け:DX推進の意義や戦略的思考
 ・実務者向け:具体的なツールの使用方法
 ・一般職員向け:基本的なデジタルスキル

成功体験の共有と横展開
小さな成功事例を作り、その効果を組織全体で共有することは、職員の意識改革を促す有効な手段です。例えば、RPAによる業務効率化で残業時間が削減できた事例や、オンライン申請の導入で住民から好評を得た事例など、具体的な成果を示すことで、DX推進への理解と協力を得やすくなります。

段階的な実施と効果検証

優先順位の設定方法
全ての業務を一度にデジタル化することは現実的ではありません。以下の観点から優先順位を設定し、段階的に実施することが重要です。
 ・住民ニーズの高さ
 ・業務量と効率化の効果
 ・実現の容易さ
 ・費用対効果

PDCAサイクルの回し方
定期的な効果測定と改善は、DX推進の成否を左右する重要な要素です。
 Plan(計画):具体的な数値目標を設定
 Do(実行):小規模なトライアルから開始
 Check(評価):定量的・定性的な効果測定
 Action(改善):課題の洗い出しと改善策の実施
このサイクルを確実に回すことで、継続的な改善が可能となります。

外部リソースの活用と住民との協働

外部人材・ベンダーとの連携
自治体DXを効果的に推進するためには、外部リソースの活用が不可欠です。特に、以下の点に注意を払いながら、連携を進めることが重要です。
●外部人材の活用
デジタル専門人材の登用や、アドバイザーの招聘により、専門的な知見を取り入れることができます。ただし、単なる丸投げではなく、内部人材の育成も同時に進めることが大切です。
●ベンダーとの関係構築
システム導入にあたっては、ベンダーとの適切なパートナーシップが重要です。特に、仕様の決定や進捗管理において、主体性を持って関わることで、より良い成果を得ることができます。

住民参加の促進方法
自治体DXの本質は、住民サービスの向上にあります。そのため、計画段階から住民の声を取り入れ、継続的なフィードバックを得ることが重要です。具体的な取り組みは以下のとおりです。
 ・住民アンケートやパブリックコメントの実施
 ・モニター制度の活用
 ・住民参加型のワークショップの開催
 ・SNSを活用した双方向コミュニケーション
これらの取り組みを通じて、住民ニーズを的確に把握し、サービス改善に活かすことができます。

まとめ

自治体DXは、単なるデジタル化ではなく、行政サービスの在り方を根本から見直す取り組みです。本記事で解説した通り、成功のためには明確なビジョンと段階的なアプローチ、そして組織全体の協力が不可欠です。特にデジタル技術の導入自体を目的とせず、住民サービスの向上という本質的な目的を見失わないことが重要です。

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