1. HOME
  2. ラジオ:まちと移動のミライコラボ
  3. 農福は地域を、地球を救う 〜農福連携が描く包括的な社会とその広げ方〜
ラジオ:まちと移動のミライコラボ

農福は地域を、地球を救う 〜農福連携が描く包括的な社会とその広げ方〜

農福は地域を、地球を救う 〜農福連携が描く包括的な社会とその広げ方〜

 

第15回のゲストは、一般社団法人日本農福連携協会・会長理事の皆川芳嗣さん(後編)。 農福連携推進等ビジョンが描く「福の対象の拡大」、帝人グループの特例子会社による蘭の栽培事例、そして専門家育成と全国展開への課題まで「農福は地域を、地球を救う」という力強いメッセージとともに、これからの農福連携の姿を語っていただきます。

▶︎前編:農と福が出会う場所〜農福連携が拓く新しい働き方と地域の活力〜

番組名
『まちと移動のミライコラボ』全文書き起こし
放送日
2026年4月19日
ゲスト
皆川 芳嗣 氏(一般社団法人日本農福連携協会 会長理事)

【オープニング】

石井:先週に引き続き、日本農福連携協会・会長理事の皆川芳嗣さんをお迎えしています。前編では農福連携の成り立ち、現場のリアル、そして地域への効果についてお話を伺いました。後編では、これからのビジョンと地域とのつながりについて、より深くお話を伺っていきたいと思います。

皆川:こちらこそよろしくお願いします。

【農福の幅を広げる〜推進ビジョンが描く包括的な社会〜】

石井:まず、農福連携の中長期ビジョンについてお伺いしたいと思います。

皆川:農福連携推等進ビジョンという政府文書がありまして、地域でさらに定着を進めていくことが謳われています。もう一つの重要な点は、農福の「福」の幅を広げることです。典型的には障害のある方が対象とされてきましたが、引きこもりの方や、不幸にも犯罪を犯してしまった方の社会復帰の場という課題もあります。また、高齢者も社会における居場所や出番が少ない現状があります。そういった意味で、農福の対象をより広く捉えていくことが大きな課題だと思っています。

石井:推進ビジョンを進めるにあたって、自治体にはどのような役割が期待されますか?

皆川:基礎自治体は住民に最も近い存在ですから、困りごとの相談が最初に届くところです。農福連携に関する窓口をしっかり設けて、農業サイドの組織、中小企業団体、福祉系の組織、特別支援学校など、関係するさまざまな組織が横でつながれる連絡網を整えていくことが大切です。相談が届いたときにすぐ適切な支援につなげられる体制があれば、これから農福連携を始めたいという方も安心して第一歩を踏み出せます。

石井:民間企業にはどのような関与が期待されますか?

皆川:企業も社会の重要な構成員として、障害のある方や出番のない方々の活躍の場づくりに積極的に関与してほしいと思っています。雇用面での努力はもちろんですが、農福連携の事業体が困っている販路開拓の支援も大きな力になります。例えば、社員食堂で『今日は農福メニュー』として取り入れるだけでも、農福の事業体にとって大きな助けになります。また、障害者雇用を単に義務として捉えるのではなく、企業の本来の価値向上という観点から、その方々の活躍をどう位置づけるかを考えていただくことがとても重要です。

【帝人の蘭栽培に見る可能性〜障害特性が品質と企業価値を高める〜】

石井:企業との連携で、具体的な事例はありますか?

皆川:帝人株式会社が千葉県我孫子市に農場を持つ特例子会社「帝人ソレイユ」を設立していて、そこで蘭の花を栽培されています。障害のある方々が役割分担しながら、非常に品質の高い蘭を作られています。その中に不安症の方がいらっしゃるのですが、花の枝ぶりやバランスのわずかな違いをとても気にする特性を持っていて、それがまさに品質管理の担当として大きな力を発揮しているんです。

石井:障害の特性が、逆に強みになっているわけですね。

皆川:そうです。さらに帝人ソレイユの取り組みが、帝人グループ全体の採用にもよい影響を与えているそうです。障害者雇用の文脈を超えて、企業イメージの向上やグループ全体の価値向上に結びついている好事例だと思っています。

【全国展開への課題と参加への一歩〜農福市場・イベント・専門家育成〜】

石井:農福連携を全国に広げていく上での課題をお聞かせください。

皆川:農と福をつなぐためには、障害特性を理解しながら、同時に農業や関連産業にも精通した専門家が中心に立つ必要があります。そういった人材がまだまだ足りていません。国や都道府県での専門家育成は徐々に進んでいますが、必要な数に達するまでにはまだ時間がかかります。

石井:農福連携に関心を持った方が、まず何から始めればよいかお伝えいただけますか?

皆川:実際に取り組みの現場を見ていただくのが一番の近道です。私どもの協会でもフォーラムを随時開催していますし、各地方自治体でもシンポジウムが増えてきています。ホームページでも動画を公開していますので、まずそちらをご覧いただければと思います。また、JAさんが運営するECサイト「JAタウン」内に「農福市場」というコーナーを設けており、会員が栽培したリンゴや加工品などが並んでいます。商品を手に取って味わっていただくことで、農福連携への理解も深まると思います。

石井:まずは興味を持ち、体験することが一番大事ということですね。

皆川:そうです。

【現場へのメッセージ〜農福は地域を、地球を救う〜】

石井:最後に、現場で働いている方々、そしてそのご家族へメッセージをいただけますか。

皆川:以前は、障害のある方が社会に出て広く活動する機会がなかなかありませんでした。しかし今、世の中の雰囲気は大きく変わり、温かく見守ってもらえる環境になってきています。ぜひ積極的に外へ出て、さまざまな場を求めて体験してください。農福連携の現場には、障害のある方々が生き生きと活躍できる場が必ずあります。そしてもう一言、私は最近「農福は地域を、地球を救う」という言葉を掲げています。農福の運動に参画いただくことで地域が良くなり、ひいては世界の平和にも近づけると信じています。ぜひご理解いただければ幸いです。

石井:2週にわたって農福連携の現場と未来の姿についてお話を伺いました。農業と福祉の連携は、人手不足や就労課題の解決にとどまらず、企業の社会的意義を高め、事業そのものを発展させる重要な取り組みであることがよく分かりました。まずは商品に触れ、イベントに参加して、農福連携の実態を肌で感じていただければと思います。皆川さん、本日はありがとうございました。

皆川:こちらこそありがとうございました。

石井:最後にお知らせですが、今回の放送はradiko、当社YouTubeでご視聴いただけます。そちらもチェックしてください。この番組はWill Smartの提供でお送りします。