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ラジオ:まちと移動のミライコラボ

積載率100%への挑戦 〜データが切り拓く物流ドライバーの新しい働き方〜

積載率100%への挑戦〜データが切り拓く物流ドライバーの新しい働き方〜

 

第35回のゲストは、前回に引き続きLOGISTICS TODAY株式会社・編集局副長の鶴岡昇平さん(後編)。前編では物流の2024年問題とその現状を伺いました。後編では、この課題解決に向けてデジタルやデータをどう活用できるのか、具体的な事例とともに深掘りします。

前回はこちら「宅配はわずか2% 〜物流専門メディアが読み解く2024年問題の本質〜

番組名
『まちと移動のミライコラボ』全文書き起こし
放送日
2026年9月6日
ゲスト
鶴岡 昇平 氏(LOGISTICS TODAY株式会社 編集局副長)

【オープニング〜前回に続き、デジタルが変える物流の未来へ〜】

石井:前回に引き続き、LOGISTICS TODAY編集局副長の鶴岡昇平さんをお迎えしています。鶴岡さん、今週もよろしくお願いします。

鶴岡:よろしくお願いします。

石井:前編では物流の2024年問題を中心に、現状に対する各種取り組みや課題感についてお話を伺いました。今週は、この解決に向けてデジタルやデータというツールをうまく活用して課題解決をどう進めていけるのか、その可能性についてお話を伺いたいと思います。まず、ドライバーさんの待遇改善が2024年問題の中心テーマで、今も労働時間が減って給料も減ってしまうという課題が続いています。これを解決する上で、どういった給与制度が考えられるのでしょうか?

鶴岡:1日に運ぶ量を増やせれば、その分ドライバーさんの給与の原資は根本的に上がります。ですから1運行あたりどれだけの荷物を運べるかという点に、デジタルの面でまず踏み込んでいく必要があります。加えて、どれだけ効率よく荷物を運んだかをドライバーさんの評価として公正に測れる仕組み作りも、デジタルの使いどころだと思っています。

【積載率向上のカギ〜日清食品に見る「往復100%」の工夫〜】

石井:前編で積載率が40%程度になっているという話がありましたが、デジタルやデータを使うことで、具体的にどう積載率の向上を目指せますか?

鶴岡:前編でお話しした、群馬から東京へは荷物満載で行けても、帰りは空っぽで積載率50%になってしまうという例で言うと、日清食品さんが面白い取り組みをされています。カップラーメンの届け先は日本全国にありますが、他方で原料、例えば「完全メシ」に使うお米のような原料の生産地、仮に東北からお米を工場に運び、そこでできた完成品を積み込んでまた東北に運ぶ。これが仮に満載で往復できれば積載率は100%になります。ただ、こうした取り組みは、お米が工場に来るのは調達物流、工場から東北の小売店に運ぶのは販売物流と、企業内でセクションが違うため、なかなか進みにくい。ここがまさにデジタルの出番で、どのトラックがどこからどこにどんな荷物を運んでいるかが誰にでも分かるようになれば、「この便の帰りにこれを積めば積載率が上がる」という気づきが得やすくなります。

石井:往復で満載にできれば、ドライバーさんとしてはお米を運ぶ仕事とカップラーメンを運ぶ仕事、両方を1回の運行で実現できるので、二案件分の収入になるわけですね。

鶴岡:その通りです。拘束時間は変わらずに収入を上げられる、そういう構造になります。

【多重下請け構造という壁〜「7次受け」まで広がる物流の裏側〜】

石井:そう考えると、荷主さん側のセクションの違いが一つの壁で、もう一つは業界的に1社だけで運んでいるわけではなく、複数の会社、場合によっては下請けが多重化しているという実態も、データが集まりにくい壁になっているのかなと思うのですが、いかがですか?

鶴岡:おっしゃる通りです。この多重下請け構造がデータを見えづらくしている大きな原因です。政府としても多重下請け構造の是正のため、2次受けまでに制限するような動きが出ています。実態としては、下手をすると7次受けまであるんです。

石井:7次受けですか。それはもう実態がよく分からないですね。

鶴岡:そうなんです。荷主さんからすれば、誰が実際に運んでいるのか分からない状態です。

石井:なぜそういう構造が生まれてしまうんですか?

鶴岡:皆さんの文化やブームが大きく影響しています。例えばバレンタインデー。あの日はチョコレートの販売量がものすごく増えますが、他の日は平常通りです。物流側から見ると、その日にものすごい量を運ぶにはトラックが100台必要でも、他の日は10台で足りる。その日のためだけに100台を抱え続けたら大きな損失になります。だから他の会社に波動対応を回すわけです。そうした波動に対応する下請けの会社さんが全国にいらっしゃって、それが結果的に7次受けまで生んでしまっています。

石井:輸送能力の調整役の方々がいるということですね。

鶴岡:おっしゃる通りです。物流業界や元請け、1次受けの責任だとよく言われるんですが、大元を辿ると消費者の皆さんがブーム(需要の波動)を作っている面も実は大きいんです。

石井:それは消費者の視点でも考えなければいけないということになりますね。

【データが変える働き方〜AIドラレコとエコドライブ評価〜】

石井:最後にもう一つ、ドライバーさんの働き方の改善につなげていく中で、人事評価や給与制度に関して、時間や運んだ量以外にどんな評価項目があり得て、そこにデータやデジタルがどう関わっていくのか教えていただけますか?

鶴岡:これまでは時間を軸に給与形態が決められることが多かったのですが、もっと細分化して、事故を起こさず安全に輸送できたか、時間通りに定時運行できたか、といった点を評価軸に加えていく。前編でお話しした荷役作業の中でも、特殊な作業をしている場合はそれに合わせた補助やボーナスを出すといった取り組みも必要になってきます。加えて昨今の燃料高騰を踏まえると、エコ運転ができたかというのも、今後は評価軸に入っていいのではないかと個人的には思っています。

石井:技能を相対的に評価して、優れている人には加点し、給与に反映させる。そうした制度設計が企業にも求められてくるということですね。

鶴岡:おっしゃる通りです。実際そうした動きも出ていて、AIドラレコでヒヤリハットと呼ばれるリスク運転を自動で検知する仕組みが登場しています。運転の点数のようなものが出せるようになるので、その点数に応じてボーナスを支給する仕組みも出てきています。

石井:燃料の消費量が完全に見える化できるようになっているそうですね。

鶴岡:はい、これはめちゃくちゃ注目しています。荒い運転をする人は燃料をたくさん使い、エコドライブをしている人は消費量が少ない。今軽油が1リットル150円ほどしていますから、積み重なると相当な差になります。エコドライブをしている人はCO2の排出量も燃料代も削減できている。減った分だけボーナスで還元してもいいくらいだと思います。

石井:会社にそれだけの好影響を与えている人ということになりますね。トラックドライバーさんの主力は今、50代・60代だそうですが。

鶴岡:はい。この方々にいつまでも依存していたら、いずれ引退してしまいます。若い人たちにとって魅力ある職場にしていかないと、前編でもお話ししたように、皆さんのスーパーに並ぶ商品が30%、50%と減っていってしまう。そこは皆で協力してやっていく必要がありますね。

石井:本日は物流の課題解決に向けたデータ・デジタルの活用について、具体的にお話しいただきました。前後編を通じて、物流が私たちの社会生活に大きな影響を与えるインフラだということがよく分かりました。ぜひ物流業界の取り組みを応援していただき、スーパーの棚から商品が消えてなくなるような社会にならないよう、私たちも意識していきたいと思います。鶴岡さん、2回にわたってありがとうございました。

鶴岡:ありがとうございました。