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バス業界に変革!4地域の事例から見るバス共同経営とは?

利用者減少などの向かい風、そして新型コロナウイルス感染拡大の煽りを受け、危機的状況にあるバス業界。このような状況下、ある法律の施行によって業界が少しずつ好転し始めています。同地域・同路線を回るバス事業者が協議の上で運行路線を調整し、効率化を図るための新たな施策。この「共同経営」の波が今、全国へと広がっています。この記事では、法律についての概要を軸に、共同経営の先進事例を紹介します。

バス共同経営とは

同じ競合区間内を運行するバス事業者間で、路線や便数を協議して調整する取り組みです。人口減に直面する地域における、限られた乗客を奪い合う競争を回避し、各事業者の体力消耗を軽減する効果が期待されます。加えて、事業者間でそれぞれの運行ダイヤを擦り合わせて便数の調整や路線の再編を検討可能に。「バスが来ない時間」を削減し、「10分間隔でバスが来る」など、利用者にとってのメリットが生まれます。

◼︎2つの法律について

2020年2月に閣議決定された「持続可能な運送サービスの提供の確保に資する取組を推進するための地域公共交通の活性化及び再生に関する法律等の一部を改正する法律(以下、地域公共交通活性化再生法)」。続いて同年3月には、「地域における一般乗合旅客自動車運送事業及び銀行業に係る基盤的なサービスの提供の維持を図るための私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の特例に関する法律(以下、独占禁止法の特例措置)」が閣議決定されました。

①バス事業者を特例的に独占禁止法の適用外として、不正取引(カルテル)である事業者間での調整を可能にする
②一部の事業者が路線からの撤退や減便を行うと、その収入減を補うために各社の運賃収入を再配分可能にする
主な利点として挙げられるのは①と②。この2点を実現し、バス事業者の活性化を図る目論見です。

バス共同経営の現状と課題

・熊本(熊本市)の事例

熊本のバス利用者(県内5社計)は2019年度時点で約2670万人。2014年度の約2990万人と比較すると、5年間で300万人の減少が見られます。1975年度のデータを参照すると、当時は約1億130万人の利用者がいました。45年の時を経て利用者は4分の1まで減少、収入57億円に対して費用90億円(県内5社計、2019年時点)という現状を見ると、熊本のバス事業者は危機的状況を迎えていると言えます。
こうした背景もあり2020年1月、熊本県熊本市で全国初となるバス事業者5社(熊本都市バス、熊本バス、熊本電気鉄道、九州産交バス、産交バス)の共同経営が始まりました。共同経営の主軸は運行路線の調整。各社で協議の上、競合区間の運行を分担、または1社に移譲する形を取り、既にある路線の利便性を維持しながら受給バランスを整えます。また、各社間の調整を経て生まれた運転士や車両の余力を活かして新路線を開拓、延伸を実現します。共同経営に伴って各社それぞれ異なる利害が発生していますが、「県民市民の利便性を高める」という一つのビジョンのもと、争いは起こらず穏やかな空気感の中で協力体制が築かれている模様です。

・岡山(岡山市)の事例

3年前、両備グループの黒字路線に八晃運輸の循環バス「めぐりん」が参入。前者は、この参入を受けて「経営が成り立たない」として国に赤字と路線の廃止届を提出しました。この廃止届は撤回されましたが、こうした動きをきっかけに2020年10月「岡山市地域公共交通網形成協議会」が開設。岡山市と市内のバス事業者9社が集まり、路線バスの再編について話し合う機会が設けられました。岡山市のバス路線は約8割が赤字という現状(2020年10月15日時点)。岡山市内のバス利用者は前年比で50%に落ち込む月もありました。バス事業者間の協力体制の重要性は、各社認識していたと思われます。同年3月には、「便数の調整・路線の再編案」「高齢者の運賃割引制度」「運賃の適正化」を3本柱とした「地域公共交通網形成計画」を提案。65歳以上の運賃割引や、初乗り運賃(下限)100円から150円に引き上げる方針など、これまで自由な価格競争によって事業者判断で決められていた点を適正化する方針です。公共交通に詳しい専門家である橋本成仁教授(岡山大学大学院)は、この値上げが事業者の収益に繋がり、将来的にサービスが提供され続ければ利用者にとってもメリットがあると述べています。

そうした中、八晃運輸の循環バス「めぐりん」が岡山駅への乗り入れについて国に申請した事案を機に協議会は紛糾。協議会の外で物事を動かす事案に対する不信感が募る一方で、「乗り入れに反対する」という競合他社の圧力は独占禁止法に違反するという見方もあり、事業者同士の意見が固まらない膠着状態が続きます。両備バスは18路線(全36路線中)、岡電バスは13路線(全42路線中)について廃止届を提出。一方で八晃運輸は「めぐりん」の益野線(中心部〜東西大寺地区)廃止を提案しています。益野線の低廉な運賃競争を止めて両備グループに譲る意図があると見られますが、両備グループは他の赤字路線を維持できないとして八晃運輸に降りた認可の取り消しを求める訴訟を起こし、国を相手に係争中です。加えて、新型コロナウイルスの件もあり路線の再編の議論は一時中断という形に。岡山市のバス共同経営に関しては、今後も議論が続く見通しです。

・広島(広島市)の事例

広電、広島バス、広島交通、中国ジェイアールバスなど各社が台頭する広島市(広島県西部)。都市の中心部は多くの利用者が見込めるため多くの事業者が乗り入れを行い、過剰な供給が問題視されています。また、市内は路面電車とバスが互いに乗客を奪い合う状況も続いています。
このような市内の公共交通の課題を是正するべく、広島市の路線バス事業者が共同経営に乗り出しました。この共同経営において、広電が検討しているのが「ハブ&スポーク(幹線と支線の結節点に乗り換え拠点を設ける)」の手法です。この手法を用いて事業者間で調整を図り、同じ時間帯での運行の集中を避け、本数が少ない時間帯は増便して利便性を高めます。ハブに待合所を設け、乗り換えが発生しても運賃が加算されない仕組みを作り顧客満足度も維持。乗り換えによる不便が発生するケースもありますが、過疎地路線を維持するために必要な施策であるとの説明を丁寧に重ね、市民の支持を得ています。
各社の運賃収入は一度集約し、事前に決めたルールに基づいて各社に配分するなど、収益の面でも独自の取組を実践しています。

・群馬(前橋市)の事例

前橋市でもバス事業者の共同経営が進んでいます。同市の場合は市交通政策課が調整役に。渋川市(関越交通)、前橋市(群馬中央バス、日本中央バス、永井運輸)、高崎市(群馬バス、上信電鉄)と連携を図ります。改革のカギは、6社11路線が絡む「本町ライン」。JR前橋駅、市役所、県庁前を繋ぐ需要の高い路線ながら、「平日150本」「4台同時発車」など非効率的な運行も目立ちます。この課題点を解消すべく、各社の運行ダイヤを調整による15分の等間隔運行を実践の合意しました。今後は受給バランスを是正して利便性を向上させ、利用者の増加に繋げる方針です。

課題点と展望

岡山の事例に代表されるように、各事業者の意見が一つに固まらず膠着状態を招く危険性も。その理由は「協議会」の制度にあります。これまで、事業者が新たな路線を開設する場合は、国に対して路線の認可申請を行う流れを取っていました。安全面の確保など、一定の基準を満たしていれば認可が降りていたため、どの路線にも新規参入が可能でした。しかし、今回の改正法を受けて、事業者と国の間で完結していた申請フローの間に、地域公共団体が関与するというルールに(岡山市の場合はこの地域公共団体の立場に、先述した協議会が入りました)。状況は一変します。

このルールには一つの穴がありました。国が地域公共団体の意見を踏まえて審査をするのは、改革プランが完成していた場合のみ。岡山市の場合、まだ改革プランが完成していない状況だったため、先述した「めぐりん」の乗り入れの一件は国が意見できる範囲ではありません。このように、制度や法律の隙間を抜けて各事業者の協力体制を破壊する余地があるという課題点があるのです。

上記のような課題点も見受けられますが、熊本の事例のように「一つのビジョンを見据えて各社が協力体制を築き上げる」意識があれば、きっと「共同経営」は明るい未来を引き寄せるカギに。今後も各地での事例から目が離せません。

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