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ラジオ:まちと移動のミライコラボ

移動と観光をシームレスに〜九州MaaSが挑む「共に創る」地域交通の未来〜

移動と観光をシームレスに〜九州MaaSが挑む「共に創る」地域交通の未来〜

 

第27回のゲストも、一般社団法人九州MaaS協議会・業務執行理事事務局長の木下貴友さん(後編)。今回は「交通事業者間」「官民」「交通と移動目的」という3つの”共に創る共創”を軸に、観光との連携で生まれた「オール九州パス」やコミュニティバス・公共ライドシェアとの連携など、九州MaaSが進める具体的な取り組みを伺います。デジタルはあくまで手段——九州を日本の地域公共交通のモデルにしたいという木下さんの想いに迫ります。

前編はこちら「競争から共創へ〜九州MaaS協議会が挑む官民100社の交通革命〜」

番組名
『まちと移動のミライコラボ』全文書き起こし
放送日
2026年7月12日
ゲスト
木下 貴友 氏(一般社団法人九州MaaS協議会 業務執行理事事務局長)

【オープニング〜共創の3つのかたち〜】

石井:前回に引き続き、一般社団法人九州MaaS協議会・業務執行理事事務局長の木下貴友さんです。本日もよろしくお願いいたします。

木下:よろしくお願いいたします。

石井:前回は、競い合っていたライバルたちと手を組み、「競争」から「共に創る」という意味の「共創」へ転換していった、2022年の研究活動から2024年の社団法人立ち上げまでの大きな転換点についてお話を伺いました。今日は、その「共に創る共創」の難しさ、そして具体的にどういう形になっているのか、今まさに議論されていることについて伺いたいと思います。

木下:共創にもいろいろあると思っていて、一つは前回お話しした、交通事業者同士が共に作りながら新しい持続可能な地域交通ネットワークをどうしていくのかという「共に創る共創」。それから、交通は日本において自治体さんの交通政策や国の交通政策としっかり連携しながらやっていく必要があるので、官民の共創というのもあると思います。そしてもう一つは、移動はそれだけで消費されるものではなく、移動目的があって初めて成り立つものなので、交通と移動目的とどうつながりながら共創していくのかという共創。この3つの共創が、とても大事なテーマなんじゃないかと思っています。

【観光との連携〜「オール九州パス」で周遊・滞在を伸ばす〜】

石井:九州となると、移動目的としてまさに観光というテーマも浮かび上がってくると思います。観光事業者との連携では、どんな取り組みが今始まっているのですか?

木下:九州は自然や温泉、食べ物などいろいろな観光資源がある一方で、そういった観光地への交通ネットワークがどんどん縮小しているという現実があります。どうやって観光地へのアクセスを維持していくか。もう一つは、インバウンドの方も福岡や大分、熊本の一部エリアには非常に多いのですが、南部の鹿児島、宮崎にはなかなか足を運んでいただけない。いかに広く周遊し、滞在期間を伸ばして消費していただくかという課題もあります。紙の切符の時代は交通だけで完結していましたが、デジタルを使うことで、行った先の体験メニューや観光施設の入場券とセットにして販売できるようになりました。一番大きいのは「ALL KYUSHU PASS(オール九州パス)」で、これまでバス会社さんの「SUNQパス(サンキューパス)」(九州内の路線バス・高速バス・一部の船が乗り放題)と、我々の「九州レールパス」(インバウンド向けチケット)を別々にやっていたのを、思い切って一つにしました。これによって広く周遊し、少しでも長く滞在していただくというチャレンジを始めています。

石井:実際の反応や利用状況はいかがですか?

木下:九州MaaSのチケット全体のうち1割超を、このオール九州パスのインバウンドの方が使ってくださっているという実績が上がってきています。本当にマーケットに合ったインバウンド向けコンテンツは何なのか、オール九州パスも含めて、どういったものがインバウンドの方に選んでいただけるのか、今もみんなで考えながら議論しているところです。

【官民連携とこれから〜市町村・コミュニティ交通へ広がる共創〜】

石井:官民の連携ということでは、どういった取り組みがなされているのですか?

木下:元々この協議会を設立する時から、九州地方知事会の各県の交通政策・観光政策の担当課さんと一緒に、事業者が一体となって考えていくという組織として作りました。今も実務を考えていく運営委員会やワーキンググループの中に官民のメンバーが入り、同じテーブルでやっています。今は県のメンバーが中心ですが、地域の交通を考えると市町村の役割もすごく大事です。昨年度あたりから、各県の皆さんと一緒に、県内の市町村の交通政策担当者を集めて、九州MaaSが目指していることを共有し、一緒にやれることはないかと巻き込みながら進めています。今年すでに、コミュニティバスの定期券や回数券を我々のプラットフォーム上で発売する動きも始まっています。

木下:これまでは交通事業者、バス・鉄道のサービスからスタートしたものが、市町村のコミュニティ交通との連携にも広がってきています。今、石井さんのところで平戸の公共ライドシェアをお手伝いさせていただいていますが、鉄道とそこまでの二次交通、鉄道・バスをつないだチケットを一緒に作ったり、デジタルプラットフォームで検索がしっかりできるようにしたり。大きい交通からコミュニティ交通に向けて広げていくチャレンジを始めているところです。

石井:コロナ以前は、交通は基本的に民間事業者がやるもので、自治体さんはあまりノータッチだったものが、コミュニティバスや公共ライドシェアなど自治体さんが主体で交通モードを整備していく時代に移り変わる中で、民間事業と乗り継ぎをしやすくしたり、同じチケットで乗れるようにシームレスにしていく取り組みが進んでいるということですね。もう少し先の未来で、木下さんとして取り組んでみたいこと、やるべきだと思っていることはありますか?

木下:それぞれの交通モードが持つ特性をしっかり組み合わせながら、シームレスにつながっていくことが大事です。コミュニティ交通から路線バス、鉄道、その先はエアラインさんも含めて、シームレスにつながっていく世界を、局所局所で始まってきている取り組みを九州中に広めていく。結果として、九州はどこに住んでもちゃんと移動ができる形——移動の自由、持続可能な交通を作ることが地域の持続性につながっていくと思います。バス会社も我々JRも、地域に根ざしてやっていく会社ばかりなので、その地域の足をどう守っていくのかを議論する時に、官民や新しい交通モードの人たちと一緒に考えていく世界観が九州の中で広がっていくことが、九州のためにすごく大事なことなんじゃないかと思います。

石井:最後の取り組みの中でご質問なのですが、元々MaaSはデジタル中心ということになっていたと思います。改めて、今の時点でデジタルが果たす役割は、九州MaaSの中でどのように捉えていらっしゃいますか?

木下:デジタルそのものを活用することが目的ではなく、ツールとしてしっかり活かしていくという考え方がとても大事だと思っています。それがMaaSのアプリだったり、駅に置いているサイネージだったり、そこから生まれるデータの利活用だったり。これまでバス会社のデータと鉄道会社のデータを突き合わせて将来の交通の形を一緒に考えるということ自体、まずあり得なかった話でした。それが同じプラットフォームを使うことでできるようになり、そこから新たなデータも生まれてくる。サービスとしてデジタルを使っていくことと、そこから生まれるデータをどう利活用しながら将来の形を考えていくのか、この二つの側面があると思っています。皆さんがつながっていくための道具として、デジタルをどう活用していくかを考えることがとても大事なことだと思います。

【エンディング〜九州を日本の地域交通のモデルに〜】

石井:今日のお話も踏まえて、ラジオをお聞きのリスナーさん、九州に旅行で行かれる方、九州の移動に関心を持っていただく方も含めて、たくさんいらっしゃるかと思いますが、一言メッセージをいただけますか?

木下:九州の官民であったり、交通事業者、移動目的の皆さんと一つになってやっていくというのが、今私たちのチャレンジとしてすごくやっていることです。少しでも多くの方にこのサービスを知っていただきながら、これを九州の基盤としてしっかり育てていくことを目指していきたいですし、九州が日本のそういった地域の公共交通のモデルとして、これからしっかりと先を走りながら作っていくというところを目指していきたいなと思っています。

石井:ありがとうございます。2週にわたって、一般社団法人九州MaaS協議会・業務執行理事事務局長の木下貴友さんにお話を伺いました。九州の交通課題に真摯に取り組まれ、今では全九州の官民を巻き込んだ大きな協議会に成長した九州MaaS協議会の、今後の地域交通の発展・活性化につながる取り組みに注目していきたいと思います。今日は大変貴重なお話をいただき、誠にありがとうございました。

木下:ありがとうございました。

石井:最後にお知らせですが、今回の放送はラジコ・当社YouTubeでご視聴いただけます。そちらもチェックしてください。この番組はWill Smartの提供でお送りしました。