
民泊を正しく知る〜住宅宿泊協会・上山代表理事が語る10万件・数兆円市場〜
民泊を正しく知る〜住宅宿泊協会・上山代表理事が語る10万件・数兆円市場〜
| 第40回のゲストは、一般社団法人住宅宿泊協会(JAVR: Japan Association of Vacation Rental)代表理事の上山康博さん(前編)。今回は普段のスタイルを変え、「民泊」という特定のテーマをプロに掘り下げる特別企画です。ホテル・旅館との違い、この10数年で広がった背景、全国で約10万件、市場規模は数兆円にも達するとされる実態まで、ニュースでは語られにくい「民泊の基本」を丁寧に解説。長期滞在という新しい需要と、地方の遊休資産の利活用という可能性に迫ります。 |
- 番組名
- 『まちと移動のミライコラボ』全文書き起こし
- 放送日
- 2026年10月11日
- ゲスト
- 上山 康博 氏(一般社団法人住宅宿泊協会 代表理事)
【オープニング〜特別企画「民泊」を、プロと正しく学ぶ〜】
石井:『まちと移動のミライコラボ』。この番組では、移動と街づくりをキーワードに、日本の移動インフラや都市のあり方がこれからどう変わっていくのかを、第一線で取り組まれている方々と一緒に考えていきます。本日は普段と少し趣向を変えまして、プロの方に特定のテーマについてお話をいただく形式でお送りします。
今日のゲストは、一般社団法人住宅宿泊協会、通称JAVRの代表理事、上山康博さんです。本日はよろしくお願いいたします。
上山:よろしくお願いいたします。
石井:本日のテーマは「民泊」です。最近は新聞などで取り上げられる機会が増えていますが、あまりポジティブな話ばかりではありません。だからこそ、そもそも民泊とは何なのか、ホテルや旅館と何が違うのか、そして観光や行政、地域経済にどのような影響を与えているのか。詳しくお話を伺いながら、民泊を正しく学んでいきたいと思います。
上山:住宅宿泊協会の代表理事を務めております上山です。まず協会について申し上げますと、インターネットを使って宿泊予約ができるサイトを運営している、オンライン旅行代理店(OTA)各社が集まった団体です。「住宅宿泊」というのはほぼ「民泊」のことで、民泊を取り扱っているOTAの団体とご理解いただければと思います。
石井:日本で言えば、楽天トラベルやじゃらんnetのような会社ですね。
上山:日本のOTAにも入っていただいていますし、エクスペディア、ブッキング・ドットコム、Airbnb(エアビーアンドビー)、アゴダといった海外の会社も加盟している団体です。
【民泊とは何か〜ホテル・旅館との違いと、広がった背景〜】
石井:そもそも、民泊はホテルや旅館と何が違うのでしょうか。基本的なところから教えてください。
上山:宿泊するという点では同じです。ただ、協会の名称のとおり「住宅宿泊」ですので、本来は人が生活する住宅に宿泊するのが民泊とご理解いただければよいかと思います。住宅として作られたものを宿泊用に転用していく動きは、地方のグリーン・ツーリズムなど、農家の家に泊まるといった形で大昔からありました。そこに、Airbnbに代表される都心部での住宅宿泊が加わり、この10数年で世界的に市場が大きくなってきました。
石井:昔の民宿とは、また違うものなのでしょうか。
上山:実質的には、あまり境目はありません。ただ、より長期滞在ができる仕組みを備えているところが、昨今の特徴だと思います。
石井:この十数年で広がってきた背景には、何があったのでしょうか。
上山:大前提として、私どものようなOTAがなければ、おそらく広がらなかったと思います。小さな施設でも、世界中の人に情報を届けて予約を受けられる。この機能があったからこそ、民泊が成り立つようになりました。もう一つは、地域にある遊休資産です。空き家や空き室など、住む以外の使い道を考えられないかという中で、宿泊という利用の仕方が出てきました。遊休資産の利活用、いわゆる空き家対策にもつながる新たなビジネスチャンスとして、この10数年で見つけられてきたのだと思います。
石井:それは都心部だけでなく、全国に広がっているのですよね。現在はどれくらいの数があるのでしょうか。
上山:住宅宿泊事業法(民泊新法)に基づく、いわゆる民泊で、全国で約6万件あります。それに加えて、旅館業法の簡易宿所が新たに約4万件ほどありますので、ざっくり約10万件ほどです。ただし1件あたりの部屋数は、だいたい1部屋から2部屋。ホテル・旅館に比べると、宿泊の総量としては少なくなります。一方で、キッチンやランドリーがあって長期滞在ができる仕組みですので、泊数は一般的な旅館などと比べて多いという特徴があります。
石井:私自身も体験がありますが、3泊、4泊となってくるとホテルの飲食代も高くなりますし、せっかくなら地元のスーパーで食材を買って、自分たちで料理してバーベキューをしたい、というニーズの受け皿になっていますよね。
上山:はい。ただ、そうしたアクティビティは、特に都心部では近隣の皆さんとの関係がありますので、一定の制約をかけるべきです。運営会社や管理者がしっかりコントロールすることが、重要なポイントだと思います。
石井:市場規模は、数字で把握されているものはありますか。
上山:私どもの加盟OTAのうち1社だけ公表されている数字がありまして、その1社だけで、昨年2025年の日本国内の取扱いが5,500億円です。同様の規模の会社が5〜6社ありますので、少なく見積もっても、日本市場では数兆円は超える市場規模になっていると思います。
石井:なかなかの産業規模ですね。
【行政の立ち位置と、地方で広がるユニークな民泊】
石井:それだけの規模になると、観光を担う行政にとっても重要な産業だと思いますが、行政の立ち位置はどのようなものでしょうか。
上山:2018年6月15日に住宅宿泊事業法が施行されるまでは、この法律自体がありませんでした。それ以降は、法令遵守が大前提であり、そのうえで近隣への十分な配慮をするということで、行政指導も行われています。これだけ数が増えますと、一部に管理の行き届かない施設も出てきますし、許認可を得ないまま営業する、無許可営業の民泊(いわゆる闇民泊)のような、ルール無視の方も、少なくはなりましたが一部にいらっしゃいます。そうした方々をどんどん排除していこうというのが、行政も、私たちOTAも同じで、なくなってほしいというのが心からの願いです。
石井:違法は絶対にいけませんし、管理がしっかりできていない事業者さんには退場していただきながら、市場自体を健全化していくことが大事ですね。一方で、都心部は住宅が近接しているのでトラブルが起きやすいと思いますが、地方部にはユニークな事例もあるのではないでしょうか。
上山:本当にいろいろな地域で増えています。関東圏ですと、JR東日本が「沿線まるごとホテル」という考え方で、一つひとつの駅をホテルのチェックインカウンターに見立て、駅の近隣にある空き家を離れの部屋として、駅と離れの部屋を合わせて一つのホテルとして運営する取り組みをされています。長崎の平戸では、イタリアの分散型ホテルの考え方である「アルベルゴ・ディフーゾ」、つまり地域まるごとホテルのような取り組みが実際に行われています。これまで誰も行かなかった場所でも、滞在して地域の暮らしを体験したいという新たな客層の流れが、非常に多く生まれてきていると感じます。
石井:よくわかりました。前編では、民泊とはそもそも何か、そして全国に広がる中で、長期滞在という新しい需要を生み出していること、地方を中心に遊休資産の利活用として成長し、今では数兆円規模の市場にまで膨らんでいるという事実がわかりました。後編では、将来的なことや、現実に起きている課題にどう向き合うかについて伺います。後半もぜひお楽しみに。今日はありがとうございました。
上山:ありがとうございました。
石井:最後にお知らせです。今回の放送は、radikoと当社YouTubeでご視聴いただけます。そちらもぜひチェックしてください。この番組は、Will Smartの提供でお送りしました。












