経産省の「SDGs経営ガイド」取りまとめ
この記事では、経済産業省が取りまとめた「SDGs経営ガイド」について解説しています。SDGs経営ガイドは、日本経済団体連合会(経団連)・東京大学・外務省など数多くの団体が参加して、SDGsに関する議論を深めた成果を取りまとめたものです。
「持続可能な開発目標:SGDs(Sustainable Development Goals」とは、2015年9月の国連サミットで策定された国際目標を指します。2001年に策定された「ミレニアム開発目標:MDGs(Millennium Development Goals)」の後継的な目標です。
持続可能な世界を実現するための17ゴール・169ターゲットから構成されており、貧困・飢餓をなくすことや質の高い教育を与えることなど、貧困に窮する子どもが少なくない日本にも当てはまる課題が示されています。世界中の国を対象とした目標であるため、大企業はもちろんのこと、全国各地で雇用を生む中小企業についても例外ではなく、SGDsを意識すること・SGDsに貢献することで、企業にどのようなメリットをもたらすのかをまとめているのが、SDGs経営ガイドです。
日本にも似たような概念があり、伊藤忠商事のような大企業を生んだ「売り手よし・買い手よし・世間よし」という近江商人の『三方よし』の理念は、CSR(Corporate Social Responsibility / 企業の社会的責任)にもSGDsにもつながる日本の貴重な知的財産の一つと言えます。今回は、SDGs経営ガイドが示す、日本の企業活動の将来についてお伝えします。
目次
ポイント1:SDGsが中小企業にもたらす4つのメリット
SDGsについては、経済産業省の他、環境省が中小企業向けに「持続可能な開発目標(SDGs)活用ガイド」を取りまとめています。その中で、SDGsを活用することで広がる可能性について、主な4つのメリットをまとめています。
① 企業イメージの向上
経営理念・事業目標にSDGsを取り入れ発信することで、具体的にSDGsにおけるどの部分を自社が担当するのかをアピールできます。また、事業規模にかかわらず優秀な人材を確保するにあたり、広告塔としての役割を果たすことが期待されます。
② 社会の課題への対応
SDGsは世界的・全方位に向けた目標のため、ある企業の活動が、社会全体で抱える課題の解消につながる可能性を秘めています。環境負荷を抑えた事業・商品の取り扱いによって、永続的な活動ができるものと判断されれば、新規顧客の獲得などにつながるという考え方です。
③ 生存戦略になる
SDGs自体は、導入にあたり明確なルールがあるわけではありません。しかし、国際的な目標であることから、取引条件を満たすことでチャンスが増えるケースも予想され、最終的に生存戦略の一つになり得ると考えられます。
SDGsによって、今までは余力(余剰利益)で社会貢献を目指していた企業が、本業で稼ぎながら世界を変えるというシフトチェンジを求められているとも言えます。
④ 新たな事業機会の創出
SDGsへの取り組みが正しく理解されれば、地域との連携や新たな事業創出につながる機会は増えることでしょう。その反面、課題に適切に対応できなければ、SDGsに逆行する企業として社会から批判を受けることは必須です。
ポイント2:日本・世界が直面する価値観の変容
国立社会保障人口問題研究所によると、世界の人口は増加の一途をたどり、2015年時点で73億人、2050年には97億人になるものと予想されます。
しかし、日本は次第に人口を減らしていき、2015年時点で1億2,700万人だったものが、2050年には1億700万人にまで減少するという推移予測が出ています。
世界は発展へ、日本は成熟へと向かう中、それぞれの価値観の変容は否めません。政府が提唱するSociety5.0も、日本の人口が減ることを想定した結果生まれた一面があり、新技術の多くは「無人でどこまで活動できるのか」という視点から開発されています。
世界におけるトレンドも変化しており、投資家側の視点ではESG投資の考え方が浸透しつつあります。ESGとは、環境(Environment)・社会(Social)・企業統治(Governance)の頭文字を取ったもので、このESGに配慮した「将来に対する責任を担う投資」のことが、ESG投資です。
日本と世界の国々とで置かれた立場は違うものの、共通しているのは、それぞれの立場から「持続可能な社会」を作るために何ができるのか、という問題です。
世界中の人がより暮らしやすく発展するため、それぞれの価値観の変容の中、SDGs・ESG投資という概念が生まれたと言ってよいでしょう。
ポイント3:日本の企業経営では、特段難しいことではないという意見も
SDGs経営ガイドによると、そもそも日本ではSDGs・ESGsなどと言う前から、すでに社会課題を捉えて現在に至る成長を実現してきたとの意見もあります。
事実、日本では創業200年以上続く老舗が多く見られ、古来から続く日本企業の精神そのものがSDGsへの取り組みにつながっているものと推察されます。
しかしながら、日本では「謙虚な」精神が尊ばれていたため、世界に向けたPRを苦手とする傾向は否めず、海外企業より優れた取り組みをしていても、それがきちんと発信されていないという部分は少なからず存在しています。
また、新興企業・ベンチャー企業の中には、いわゆる「ブラック企業」のような経営を行う社長も見られ、日本の良い部分を継承した経営者が目立たない風潮も目立つようになりました。
かつての日本が持っていた長所をどこまで取り戻せるのか。また、老舗の仕事をどこまで世界にアピールできるのか。このあたりが、SDGsにおける日本企業の課題になるでしょう。
まとめ
安定した経営・安定した成長を目指す世界の動きは、大きなうねりを伴いながら進んでいます。SDGs・ESGsは、企業・投資家という立場の違いはあれど、それぞれが同じベクトルを向いています。「持続可能な開発」という目標のため、子々孫々にわたっての成長に向けた活動ができるかどうかが、国の別なく企業・投資家それぞれに問われていると言えるでしょう。
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