進む!公共交通のキャッシュレス化ー 鉄道事業者・バス事業者等の取り組み ー
交通事業者に向けて、公共交通におけるキャッシュレス化の最新事情をご紹介します。
近年、日本国内でもキャッシュレス化を進める取り組みが各所で加速してきています。2016年時点で日本のキャッシュレス決済比率は約20%であり、キャッシュレス化が進展している韓国(89%)や中国(60%)、アメリカ(45%)などと比べると、やや後れをとっているといえる状況です。世界的な流れを踏まえ、国全体の生産性や利便性を向上させ、インバウンド需要にも対応することを目的として、政府は2025年にキャッシュレス決済比率を40%まで引き上げる目標を立てています。このキャッシュレス化の流れが、地方を含む公共交通の領域にも拡がってきました。
今回は、楽天とJR東日本による連携、路線バス事業者みちのりホールディングスの取り組みを取り上げ、最新の事例についてポイントを整理します。
目次
公共交通におけるキャッシュレス化の最新事例
キャッシュレスは現在、クレジットカード・電子マネー・コード決済の3つの形態が主流です。
Amazonや楽天などに代表されるオンラインショッピングの普及により、日本国内でもクレジットカードの利用率は一気に高まり、Suicaに代表されるICカードによって電子マネー決済は身近なものとなりました。
100億円還元キャンペーンなどで話題になった「PayPay」などのコード決済アプリ領域でも、最近プレイヤーが増加してきました。公共交通において、これらのキャッシュレスサービスはどのように展開しているのでしょうか。
楽天とJR東日本が提携。「楽天Pay」アプリでsuicaの発行・チャージが可能に
スマートフォンのコード決済アプリ「楽天Pay」を提供する楽天ペイメントとJR東日本は6月、キャッシュレス化の推進に向けて連携したことを発表しました。この連携により、「楽天Pay」アプリ内でSuicaの発行やチャージが可能になり、全国の交通の鉄道約5000駅やバス約5万台と、約60万の加盟店で利用ができるようになります。開始は2020年春頃の予定で、開始時の対象機種は「おサイフケータイ」に対応したAndroid端末のみです。還元率は不明ながら、Suicaのチャージで「楽天スーパーポイント」が貯まるという大きなユーザーメリットがあります。楽天ペイメントはアプリ利用の促進を図り、JR東日本はSuicaの利用者増加する狙いで、両社でキャッシュレス市場を盛り上げたいとしています。
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残る課題
ユーザーの利便性が大きく向上するこの取り組みにも、課題は残っています。
・チャージ可能なクレジットカードは楽天カードに限られる
・国内スマートフォンシェアで大きな割合を占めるiPhoneに対応していない
・定期券、グリーン券を利用する場合は別途「モバイルSuica」アプリが必要
・オートチャージに対応していない
・貯まった楽天ポイントをSuicaチャージに交換できる機能は発表されていない
などが挙げられるでしょう。
利用開始までの期間中にどれだけのアップデートがされるか、また開始後のユーザーフィードバックを受けてどのような機能追加がなされるかに、注目が集まります。
将来への期待
今回の連携はキャッシュレス市場に大きなインパクトを与え、今後の市場の動きに影響すると考えられています。「オンライン市場」で大きな顧客基盤を持つ楽天と、「オフライン市場」に強いJR東日本の連携により、互いを補い合う強力なタッグが生まれたことになります。
また、「楽天Pay」はバーコードやQRコードによる決済が主な利用方法であり、決済時にわざわざアプリを起動する必要があるという弱点がありましたが、Suicaに対応することでタッチのみで決済できるようになり、利便性が大きく向上することになります。
オンラインとオフライン、QRコード決済と電子マネーなど、異なる領域間で対立するのではなく、互いに協力して市場そのものを成長させようとする動きが、今後ますます拡大していくことになるとみられています。メルカリの提供する「メルペイ」とiDも既に同様の取り組みを行っており、大手企業による連携が日本のキャッシュレス化を加速させることに期待が寄せられています。
地方路線バス事業者にもキャッシュレス化の波。みちのりホールディングスが先行
関東自動車株式会社(みちのりホールディングス)は2019年1月に、バス会社としては全国初となるコード決済の導入を発表しました。スマートフォンを利用したQRコード決済サービスである「PayPay」と「LINE Pay」による窓口での決済を、それぞれ2019年2月と3月から開始しています。
同じみちのりホールディングス傘下の福島交通や岩手県北バスでも続いて利用が開始されており、同社は将来、路線バス車内での運賃の決済にも導入することを視野に入れ、今後もキャッシュレス化を推進するとしています。
2001年にSuicaが誕生して20年近く経つ現在においても、地方の鉄道やバス事業者ではコストがネックとなってICカードが導入されていないケースも多い中、この取り組みは業界内外から大きく注目されています。
まとめ
・日本のキャッシュレス決済比率は世界的に低く、向上が望まれている
・キャッシュレス化の波は公共交通にも拡がってきた
・楽天とJR東日本が連携し、「楽天Pay」アプリでSuicaの発行とチャージが可能になる
・みちのりホールディングスがバス会社として全国で初めてコード決済を導入した
キャッシュレス化は国内ユーザーの利便性を高めるだけでなく、インバウンド(訪日外国人)の消費促進も大きな役割を果たすことが期待されています。
インバウンドの数は2020年には4000万人、2030年には6000万人、さらに将来には1億人に上るとされており、その約半数は既にキャッシュレス化が当たり前になっている中国人と韓国人が占めています。インバウンドの50%は鉄道を利用し、35%はバスを利用して移動するというデータもあり、公共交通におけるキャッシュレス決済の導入は今後ますます必要性が高まってきそうです。
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