
安全運転管理者とは?選任義務と業務内容まで詳しく解説
安全運転管理者は、物流企業やタクシー会社をはじめ、事業用自動車を使用する企業において、安全な運行管理を支える重要な役割を担っています。
本記事では、安全運転管理者の選任が必要な条件や具体的な業務内容、実務の進め方について、2022年10月の道路交通法改正(アルコールチェックの義務化)など最新の法令に基づいてわかりやすく解説していきます。
目次
安全運転管理者とは
安全運転管理者は、道路交通法に基づいて事業所ごとに選任が義務付けられた、自動車の安全運転を統括する責任者です。企業の交通安全管理において中心的な役割を担い、事業所内の安全運転に関する業務全般を管理します。
なお、具体的な選任基準や必要な資格要件については、後述のセクション2で詳しく解説します。
安全運転管理者制度の基本的な仕組み
道路交通法第74条の3に基づいて定められている安全運転管理者制度は、一定台数以上の自動車を使用する事業所ごとに、安全運転管理者を選任することを義務付けるものです。
選任が必要となる理由
近年、飲酒運転や過労運転による重大事故の防止が社会課題となっています。そのため、従業員の交通事故を防止し、安全な車両運行を確保するためには、組織的な安全管理体制が不可欠です。安全運転管理者は、その中心的な役割を担う重要な役割として位置づけられています。
企業における役割
安全運転管理者は、単なる法令上の義務として存在するわけではありません。企業の安全文化を醸成し、社会的責任を果たすための重要な役割を担っています。具体的には、運転者の健康管理やアルコールチェックの実施、安全運転教育の実施など、実務的な安全管理業務を統括します。また、事故が発生した際の対応や、再発防止策の立案なども重要な責務となります。
選任義務の具体的な条件
安全運転管理者の選任が必要となる条件は、事業所の規模や、使用する自動車の台数によって決まります。自社が選任義務の対象となるかどうかを、具体的な基準に基づいて確認しましょう。
選任が必要となる事業所の条件
安全運転管理者の選任基準は、事業所で使用する自動車の台数によって決まります。具体的には、乗車定員11人以上の自動車を1台以上使用する事業所、または、その他の自動車を5台以上使用する事業所が対象となります。
なお、ここでいう「使用する」とは、所有している場合だけでなく、リースやレンタカーとして使用している場合も含まれます。
自動車の台数の数え方
自動車の台数を数える際には、いくつかの注意点があります。まず、原動機付自転車(原付)は台数にカウントしません。特殊自動車(フォークリフトなど)も対象外です。
一方で、普通自動車、小型自動車、軽自動車は全てカウントの対象となります。社用車として登録している車両はもちろん、従業員が通勤用に使用している自家用車も、会社の業務に使用することがある場合は台数に含める必要があります。
また、自動二輪車(原動機付自転車を除く)については、1台を0.5台として計算します。
例外規定と特殊なケース
事業所の形態によっては、特殊なケースも発生します。例えば、同一敷地内に複数の事業所がある場合は、原則としてそれぞれの事業所で個別に台数を数えます。ただし、事業所間で密接な関連性がある場合は、一つの事業所として扱うことができます。
また、工場や営業所など、事業所が地理的に分散している場合は、それぞれの事業所ごとに選任の要否を判断する必要があります。
安全運転管理者になるための要件
安全運転管理者には、一定の資格要件が定められています。選定にあたっては、以下の要件を確認しましょう。
必要要件
安全運転管理者になるためには、以下の要件を満たす必要があります。
20歳以上であること(副安全運転管理者が置かれる場合は30歳以上)
自動車の運転の管理に関し2年以上の実務経験を有すること(自動車の運転管理に関し公安委員会が行う教習を修了した者は1年以上)
普通自動車運転免許を保有していること
過去2年以内に道路交通法違反による免許の停止または取消処分を受けていないこと
過去2年以内に安全運転管理者の解任命令を受けていないこと
欠格事由と注意点
安全運転管理者には、欠格事由も定められています。過去2年以内に重大な道路交通法違反で免許停止以上の処分を受けた方や、過去に暴力団員であった方などは、安全運転管理者になることができません。
その他、心身の故障により安全運転管理者の業務を適正に行うことができない方も、選任することはできません。
副安全運転管理者の選任について
使用する自動車の台数が20台以上の事業所では、安全運転管理者に加えて、副安全運転管理者の選任も必要となります。副安全運転管理者の資格要件は、安全運転管理者とほぼ同じですが、台数が20台を超える毎に1名追加で選任する必要があります。副安全運転管理者は、安全運転管理者を補佐し、不在時にはその職務を代行します。
安全運転管理者の具体的な業務内容
安全運転管理者には、法令で定められた具体的な業務があります。日々の管理業務から定期的な確認事項まで、実務に即して解説していきます。
日常的な管理業務
●運転者の健康状態の確認
運転者の健康状態の確認は、安全運転管理の基本となる重要な業務です。具体的には、運転前の体調確認はもちろん、疲労や睡眠不足の状態についても確認が必要です。近年では、ストレスチェックなど、メンタルヘルスの観点からの確認も重要視されています。
●運転日報の管理と確認
運転日報は、車両の使用状況を把握するための重要な記録です。運行距離、運転時間、給油記録などの基本事項に加え、交通違反や異常発生の有無なども記録します。これらの記録は、運転者の労務管理や車両の適切な維持管理にも活用します。
●アルコールチェックの実施方法
2022年の法改正により、アルコールチェックの確実な実施と記録が義務付けられました。運転前後のアルコールチェックは、対面または機器を用いて実施し、その結果を記録・保存する必要があります。
特に、テレワークなど勤務形態が多様化する中では、確実な実施方法の確立が重要です。
定期的な業務と確認事項
●運転免許証の有効性確認
運転者の免許証は、定期的に確認する必要があります。具体的な頻度は法令で定められていませんが、一般的には3か月に1回程度の確認が推奨されています。有効期限の確認だけでなく、免許の条件や制限事項についても把握しておくことが重要です。
運転者から免許証の更新や変更の報告を受けた際は、速やかに内容を確認し、記録を更新しましょう。
●車両点検の管理方法
定期的な車両点検は、事故防止の基本となります。日常点検では、タイヤの空気圧やオイル量など、基本的な項目の確認を徹底します。また、定期点検や車検などの法定点検についても、適切な時期に実施されるよう管理します。
●安全運転指導の実施
運転者に対する安全運転指導は、計画的に実施する必要があります。交通法規の確認や事故事例の研究、実地訓練など、様々な方法を組み合わせて効果的な指導を行います。特に、新任運転者や高齢運転者に対しては、きめ細かな指導が求められます。
実務上の注意点と違反時の対応
安全運転管理者の業務を適切に遂行するためには、いくつか注意点があります。また、事故が発生した場合の対応方法についても、事前に理解しておく必要があります。
管理者業務における違反事例と防止策
安全運転管理者の業務に関する違反で多いのは、アルコールチェックの未実施や記録の不備です。これらを防ぐためには、確認手順のマニュアル化や、デジタルツールの活用による記録の効率化が有効です。
また、運転者への定期的な教育も重要な防止策となります。
管理者業務違反時の罰則規定
安全運転管理者としての業務義務に違反した場合、事業所と安全運転管理者の両方が罰則の対象となることがあります。例えば、虚偽の報告や義務の不履行については、罰金刑が科されることもあります。
また、重大な違反があった場合は、安全運転管理者の解任命令が出されることもあります。
事故発生時の対応手順
事故が発生した場合は、迅速かつ適切な対応が求められます。まず、人身事故の場合は直ちに警察や救急に通報します。その後、会社の緊急連絡網に従って報告を行い、必要に応じて現場に急行します。
また、事故の状況や原因を詳細に記録し、再発防止策を検討することも重要な役割です。
まとめ
安全運転管理者制度は、企業の安全な運行管理を確保するための重要な仕組みです。選任義務の確認から具体的な業務内容まで、実務担当者が押さえるべきポイントは多岐にわたります。特に重要なのは、選任条件の確認と日常的な管理業務の確実な実施です。
本記事で解説した内容を参考に、自社の状況に合わせた適切な安全運転管理体制を構築してください。管理者として必要な知識を身につけ、従業員の安全と会社のコンプライアンスを守る重要な役割を果たしていきましょう。
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