フリートマネジメントの基礎知識と導入メリット：企業の車両管理を効率化する方法

燃料コストの増加、車両の稼働状況の把握不足、メンテナンス計画の立てにくさなど、多くの企業が車両管理においてさまざまな課題に直面しています。これらの課題を解決する手段として注目されているのが「フリートマネジメント」です。

本記事では、フリートマネジメントの基本から導入メリット、実践的な活用方法まで詳しく解説します。車両管理の効率化を目指す企業担当者の方は、ぜひ参考にしてください。

フリートマネジメントとは

フリートマネジメントとは、企業や組織が保有する車両群（フリート）を効率的に管理・運用するための取り組みです。営業車や配送トラックといった一般的な車両のほかにフォークリフトや建設機械なども対象です。
車両の運行計画、燃料管理、ドライバー管理、安全管理、コスト分析などを総合的に行い、車両の資産価値を最大限に活用し、関連コストを効率よく管理・削減することを目指します。
テレマティクス技術^※1やIoTの進化により、位置情報や車両の状態などの車両情報をほぼリアルタイムで確認できるようになりました。そのため、データを活用した効率的な管理が多くの場面で導入されつつあります。

※1「テレコミュニケーション（通信）」と「インフォマティクス（情報科学）」を組み合わせた技術。車両に搭載されたセンサーやGPS、通信機能を活用し、走行データや車両の状態をリアルタイムで収集・分析する。物流やフリート管理、保険業界などで幅広く活用されている。

フリートマネジメントの3つの主要業務

フリートマネジメントは、大きく分けて以下の3つの業務領域に分類できます。

1. 車両管理：車両の調達・登録・廃車に関する業務、車検・点検などの法定管理、修理・メンテナンス管理など
2. 運行管理：配車計画、ルート最適化、ドライバーのシフト管理、運転日報の管理など
3. コスト管理：燃料費、修理費、保険料などの費用管理、車両ごとのコスト分析、予算管理など

車両管理とは？企業が知るべき重要性と業務内容・システムの選び方の記事もぜひ参考にしてください。

フリートマネジメント導入のメリット

フリートマネジメントを導入することで、企業はさまざまなメリットを享受できます。具体的なメリットを以下に解説します。

コスト削減効果

• 燃料費の削減：アイドリング時間の削減、最適ルートの設定、エコドライブの促進などにより、燃料消費を削減できる可能性があります。
• メンテナンスコストの最適化：予防的なメンテナンス計画により、大規模な修理が必要になるリスクを低減し、車両の稼働率を向上させます。
• 保険料の削減：安全運転の促進により事故率が低下すれば、保険料の削減にもつながります。

多くの車両を保有する企業ほど、削減効果が大きくなるでしょう。

業務効率の向上化

• 管理工数の削減：紙管理からデジタル管理への移行により、車両情報の入力・集計・分析作業が大幅に効率化されます。
• リアルタイム管理：車両の現在位置や状態をリアルタイムで把握できるため、急な配車変更や緊急対応が容易になります。
• レポート自動作成：各種報告書や分析レポートの自動作成により、管理者の負担が軽減されます。

安全性の向上

• 運転挙動のモニタリング：急加速や急ブレーキなどの危険運転をリアルタイムで検知し、ドライバーに注意喚起できます。
• 安全運転教育の強化：収集された運転データに基づき、個々のドライバーに合わせた安全教育が可能です。
• 事故リスクの低減：結果として、交通事故の発生率が低下し、人的・物的損害を防止します。

環境負荷の低減

環境問題への意識が高まる中、フリートマネジメントは環境対策としても注目されています。

• 環境規制への対応：環境関連の法規制に対応するためのデータ収集・分析・報告が容易になります。
• CO2排出量の削減：効率的な運行やリアルタイムの運転データ分析による最適ルート選択・アイドリング時間短縮でできるエコドライブが推進されることで、CO2排出量の削減が期待されます。

これらのメリットは、企業のCSR活動やSDGsの取り組みにも寄与します。

フリートマネジメントシステムの種類と選び方

現在、様々な種類のフリートマネジメントシステムが提供されていますが、大きく分けると以下のようなタイプがあります。

基本的なシステムタイプ

1. テレマティクス型：車両に搭載したデバイスから、位置情報や走行データをリアルタイムで収集・分析するシステムです。運行状況の可視化や運転挙動の分析に強みがあります。
2. 統合管理型：車両管理、運行管理、コスト管理などの機能を総合的に提供するシステムです。
3. 特化型：燃料管理や安全管理など、特定の領域に特化したシステムで、特定のニーズに迅速に対応できます。柔軟な導入と拡張が可能です。
4. クラウド型・オンプレミス型：現在では、多くの企業でクラウド型システムが選ばれる傾向があります。導入コストの低さや随時アップデートの利点があります。

システム選定のポイント

• 課題やニーズとの適合性：燃料コスト削減、安全管理強化、業務効率化など、解決したい課題に最適なシステムを選びましょう。
• 車両の数や種類との適合性：保有車両の台数や種類によって、最適なシステムは異なります。将来車両が増えた場合に備え、拡張性も視野に入れることが大切です。
• 使いやすさと導入のしやすさ：システムが複雑すぎると現場での活用が難しくなります。ユーザーインターフェースの使いやすさも重要な選定基準です。
• 既存システムとの連携機能の有無：データの二重入力などを防ぐため、既存の基幹システムや業務システムとの連携が可能かどうかも確認しましょう。
• コストパフォーマンス：初期導入コストだけでなく、ランニングコストや期待できるコスト削減効果を総合的に検討することが重要です。

主要プロバイダーの特徴

• 自動車メーカー系：メーカーが提供するサービスは、そのメーカーの車両との親和性が高く、専門的なサポートが期待できます。
• 通信キャリア系：通信インフラを活かしたリアルタイム性の高いサービスが特徴です。
• 専業ベンダー：フリートマネジメントに特化した専門性の高いサービスを提供しています。
• グローバルプロバイダー：世界的に展開するプロバイダーは、国際的な標準に準拠したサービスを提供しています。

実際の選定にあたっては、複数のプロバイダーからデモや試験導入を受けることで、自社環境との適合性を確認することが重要です。

IoTテクノロジーを活用した最新のフリートマネジメントソリューション

フリートマネジメントの効果を最大化するためには、最新のIoT技術を活用したソリューションの導入が有効です。特に、ガソリン車とEV車の両方に対応できるデータ収集・管理基盤は、カーボンニュートラルへの取り組みが求められる現代において非常に重要な選択肢となっています。

最新のIoTゲートウェイや接続デバイスを活用することで、車載デバイスから燃油残量や走行距離、車速、GPS情報などの基本データに加え、EV特有のデータ（例：バッテリー残量や充電状態など）も管理対象として取り入れられます。これにより、多様な車両を含むフリートの一元管理が実現します。

また、通信コストの削減も重要なポイントです。通信規格による最適化が進むことで、通信費や運用コストが抑えられる場合があります。さらに、取得したデータはREST API²などを介して既存システムへ連携できるため、新たなサービス開発のコストを抑えることも可能です。

参考：IoT ゲートウェイパッケージ | 株式会社Will Smart | 移動を支援するテクノロジー企業

※2 REST（Representational State Transfer）の原則に基づいて設計されたAPI。HTTPプロトコルを利用し、クライアントとサーバー間でデータのやり取りを行う。シンプルで拡張性が高く、Webサービスやクラウドアプリケーションで広く使用されている。

フリートマネジメント導入の実践ステップ

現状分析と課題の明確化

現場の担当者にヒアリングしながら現在の車両管理状況を正確に把握し、課題を明確にしましょう。

• 車両データの整理：保有車両の台数、種類、年式、使用状況などの基本情報を整理します。
  コスト分析：燃料費、修理費、保険料など、車両関連コストの内訳を分析します。
• 業務フロー分析：車両管理に関わる業務プロセスを整理し、非効率な部分や改善ポイントを特定します。
• 課題の優先順位付け：特定された課題に対して、影響度や緊急度を基に優先順位を設定します。

導入計画の策定

課題が明確になったら、具体的な導入計画を策定します。

• 目標設定：たとえば「燃料コストを〇%削減」「事故率を〇%低減」など、具体的な数値目標を設定します。
• システム選定：前章で述べた選定ポイントに基づき、最適なシステムを選定します。
• 導入スケジュール：一斉導入か段階的導入か、適切な導入方法とタイムラインを設定します。
• 予算計画：初期投資とランニングコストの見積もりを行い、投資対効果を試算します。
• 体制構築：導入プロジェクトチームの編成や、運用開始後の管理体制を検討します。

導入と運用開始

計画に基づいて、システムの導入と運用を開始します。

• 環境構築：必要なハードウェアやソフトウェアの導入、ネットワーク環境の整備を行います。
• データ移行：既存の車両データや管理情報をシステムに移行します。
• ユーザートレーニング：管理者やドライバーに対して、システムの使用方法や新しい業務フローの教育を実施します。
• テスト運用：本格運用前に、一部車両や部門でテスト運用を行い、問題点を洗い出します。
• 本格運用：テスト運用の結果を踏まえて調整を行い、本格運用を開始します。

効果測定と継続的改善

フリートマネジメントは導入後もPDCAサイクルを回し、改善を続けることが重要です。定期的な会議やフィードバックを活用し、システムや運用ルールを見直すことで、さらなる効果が期待できます。

• KPIモニタリング：設定した目標に対する進捗を定期的に測定・分析します。
• ユーザーフィードバック：現場の意見や要望を収集し、システムや運用方法の改善に活かします。
• システムアップデート：テクノロジーの進化や法規制の変更に合わせて、適宜システムをアップデートします。
• 運用ルールの改善：実際の運用を通じて見えてきた課題に基づき、運用ルールを改善します。

まとめ:フリートマネジメントの将来展望と企業の取り組み

フリートマネジメントは、企業の競争力強化や持続可能な経営に貢献する重要な戦略です。最新のデジタル技術やIoT、AIを活用することで、車両の運行状況やメンテナンス状態をリアルタイムで把握し、最適な管理が可能になります。特に環境負荷の低減やエコドライブの推進が求められる現代において、カーボンニュートラルへの対応やEV車両の管理も重要な課題となっています。
今後、フリートマネジメントはさらに進化し、企業の競争力強化に寄与する重要な要素となるでしょう。車両管理の最適化を通じて、企業の持続的成長を支える基盤を築いていくことが求められます。