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ラジオ:まちと移動のミライコラボ

東京を通らない航空会社〜FDAが貫く「地参地翔」の地域戦略〜

東京を通らない航空会社〜FDAが貫く「地参地翔」の地域戦略〜

 

第28回のゲストは、株式会社フジドリームエアラインズ(FDA)代表取締役社長・本田俊介さん(前編)。日本エアシステム(JAS)入社を皮切りに、JAL路線統括本部、地域事業本部長、J-AIR社長などを歴任し、2025年6月にFDA社長に就任した本田さん。 首都圏路線を持たず、地方と地方を直接つなぐ独自の路線戦略を貫くFDAが掲げる経営理念「地参地翔」とは——。奄美大島で芽生えた地域への使命感、空きを減らして利益を生むチャーター便のビジネスモデル、そしてインバウンド需要を呼び込んだ但馬空港の思わぬエピソードまで、地域航空の可能性に迫ります。

 

番組名
『まちと移動のミライコラボ』全文書き起こし
放送日
2026年7月19日
ゲスト
本田 俊介 氏(株式会社フジドリームエアラインズ 代表取締役社長)

【オープニング〜地域航空の可能性を切り拓くFDA本田社長〜】

石井:株式会社フジドリームエアラインズ代表取締役社長、本田俊介さんです。本田さん、よろしくお願いいたします。

本田:よろしくお願いいたします。

石井:まず、本田さんご自身のキャリアから伺えればと思います。元々JALの前身の一つである日本エアシステム、JASに入社されたと伺っています。その後、JALでは路線統括本部、国内線事業本部長、地域事業本部長といったポジションを歴任され、2023年にはJALグループの地域航空会社であるJ-AIRの社長に就任。そして昨年2025年6月にフジドリームエアラインズ、FDAの社長になられたということですね。長く国内線・地域事業を担ってこられた本田さんが、どんな視点でこれまでのキャリアを積み上げてこられたのか、まずそこから教えていただけますか。

本田:元々は飛行機が好きで、いろんなことを繋いでいきたいという思いで航空会社に入りました。もちろん会社の利益、お客様に喜んでもらって目的地へ連れていくという、航空会社としての基本的なことをまずはしっかりやり始めたところではあります。ただ、そのうちにだんだんと地域の課題が見えてきまして、もっともっと自分たちとしてこの地域に貢献することを、航空会社としてやっていかなきゃいけないんじゃないかという感覚が芽生えてきたんですよね。

石井:それは何か、きっかけになるような出来事があったんですか?

本田:地方に行くと、元々すごく賑わっていた商店街がシャッター街に変わっていたりします。特に私は、会社に入ってから一番最初に、点数制で社員が搭乗できる航空券がもらえて、それで初めて行ったのが奄美大島でした。すごくやっぱり美しい自然と海があって素晴らしかったんですが、それで約20年後ぐらいに仕事で行く機会があった時に、結構愕然としたんですよね。

石井:何かギャップがあったということですか。

本田:そうですね。当時は美しい自然というのはもちろん残っていたんですけれど、一方でいろんな建物が昔見た建物よりも経年化していたり、街のシャッターが多くなったりしていて。そういったときに、私はこの地域に対して今まで航空会社としてどんな貢献ができてきたんだろうかと、結構自戒の念がありましてですね。そのときに、航空会社としてのもっと使命ってあるんじゃないかということで、新しく地域事業本部というのを立ち上げながらやってきたんですね。

【「地参地翔」という経営理念〜東京を通らないローカルtoローカルネットワーク〜】

石井:少しこのフジドリームエアラインズという会社が、どういった会社なのかという全体像を教えていただいてよろしいですか。

本田:この会社はまだ若い会社でございまして、2008年に設立され、2009年から静岡の富士山静岡空港の開港とともに運航を始めた会社なんですね。愛知・名古屋の小牧空港を中心に、それから松本空港を中心に北と南の路線があるというようなことで、関西ですと神戸空港ですね。神戸空港から松本空港の路線、そして夏場には青森と花巻という路線があります。特に夏場は青森にねぶたがありますので、そういったところで関西から東北を繋がせていただいているというようなことで、17空港で29路線、そして96便を運航しているという会社でございます。会社の経営理念というのは、「地参地翔」という言葉を使っているんですけど、漢字で書くと普通の地産地消じゃないんですよ。

石井:地参地翔、漢字で書くと、というのは面白いですね。

本田:地域にですね、地域のうちに参加する「参」なんです。地域に参加して、地域の地に、今度は「地参地翔」というのは羽ばたくという字なんです。なので地域に参加して、地域と共に成長して自分たちも羽ばたいていくんだと。なんでも地域のためにやる航空会社なんですね。それが経営理念なんです。

石井:それが地参地翔という言葉なんですね。

本田:そうです。なので東京を通らない、ローカルとローカルのネットワークで、地域のために運航を継続していっているというような会社でございます。

石井:本当に地元と連携して需要創造をされているということなんですけど、こんなトピックがありますよという面白い取り組みがもしありましたら、ぜひ一つ伺いたいなと思います。

本田:通常の会社ですと、旅行商品を作ったり観光プロモーションの運賃を作ったりといったことはやってはいるんですけども、うちはチャーター便を年間1000便やってるんですね。飛行機を1機当てまして、その1機は常にチャーター便を運航しているという。飛行機は全部です。チャーター便って元々路線がないので、どこかニーズがあって飛行機を持っていって出発して、目的地へ行って、また戻ってきて、そこから今度はフェリー(空機を回送すること)で戻ってくるとですね、結構その無駄な動きをすると、コストが結構高いんですよ。利益もなかなか出しにくいですし、利用者もなかなか使いにくいというイメージがあったんですけど、実はこのフジドリームエアラインは創業当時から、その定期便がないところに路線を作って、その地域にニーズがある期間に運航するというですね、できるだけ空振りを減らして利益率を上げてるっていう、しっかりしたビジネスモデルを持ってるんですね。

石井:そうなんですね。じゃあ本当に先ほどおっしゃったような夏場の、それこそねぶた祭りという圧倒的に需要が上がる時には、まさにそこに行くための手段として使っていただけるものがあるということですね。

【インバウンドが仕掛ける新たな需要創造〜雪質の違いを求めて、そして「地球の最後の姿」へ〜】

石井:もう一つぜひ伺いたいのが、最近インバウンドのお客さんも非常に増えているというお話もいただいているんですけれど、どこら辺の空港で、実際にどれぐらい増えていらっしゃるのか、データ的なものも含めてぜひ教えていただきたいなと思うんですけども。

本田:これはもう日本全国で見ると、例えば国内線を海外の方が使う比率というのは3%から4%なんですね、今は。私どもの会社も全体で見ると1%ぐらいということで、まだまだこれからな状態です。一方で、例えば特定路線、松本から千歳線ですね、こちらは冬場になるとかなり海外の方が乗られてるんですよ。

石井:やっぱりスキー場ですか。

本田:スキー場ですね。なんでそんなにって思われるかもしれないんですけど、日本というのは高いところまで上がらなくても非常に雪質が良いんですね。どちらかというとヨーロッパとかカナダの方が非常に雪質が良いようなイメージがあるんですけど、実はいいんですけど高いところまで上がらなきゃいけない。日本は低いところでパウダースノーが体験できるということで、そこから人気が出て、皆さんいらっしゃってて。また、その白馬とニセコの雪質が違うので、その違いをまた体験したいということで乗っていらっしゃいますね。

石井:割とそれって、今何か仕掛けられたというよりも、まさにそのインバウンドのお客さんが自らそういった行動、その方法を見つけていったっていうような感じなんですかね。

本田:そうですね。もう本当に、地域に行く理由ってのがこういうことなんだなって思うんです。以前の会社の話ですけども、兵庫県に但馬空港ってあるんですね。その時、そこの需要喚起を少し考えようということで、ミシュランガイドってあるじゃないですか。赤いガイドはレストランガイドで、グリーンのやつは観光ガイドなんです。その調査員を一人連れてきまして、但馬空港周辺の豊岡市というところを見てもらったんですよ。そのときに、調査員が「地球の最後の姿がここにある」って書いていかれたんですよね。

石井:おお、すごい。それは何かあったんですか?

本田:豊岡って元々コウノトリが住んでいて、どんどんいろいろな化学肥料を使うような農業に変わってきて、虫とかがいなくなると、それを咥えに行っていたコウノトリもいなくなったんですよね。それが豊岡有機農法に変えられて、そしたらまたコウノトリが戻ってきて、今200羽ぐらいいるんですけど。畑にですね、子供たちが通学しているその横にコウノトリがいるんですよ。その風景を見て、要は人間界と動物界が共生している街なんだと。だから、これが地球の最後のあり方なんだって記事を書いたんですよ。

石井:ああ、すごい切り口ですね。

本田:そしたらそこから、それを見て直接見に来るというよりも、京都にいらっしゃる外国の方が一歩足を伸ばして——飛行機で期待したんですけど、ほとんど電車で行かれるんですよね。空港周辺を見に行って、電車で行かれて、結局飛行機の方はあまり恩恵がなかったんです。ただ、そこに城崎温泉ってあるんですけどね、当時、年間で900人ぐらいだった外国人宿泊者数が、コロナ前には5万5000人になったんです。もちろんそれだけじゃなくて、それをきっかけに海外で当時の豊岡市長がいろんなアピールをされて、日本の中の豊岡じゃなくて世界の中の豊岡になろうということで、いろんな取り組みをされて、どんどん認知が広まっていって、外国人が来られた。なので、やっぱり海外の人が来る、これがもう「行く理由」っていうことなんです。

石井:掘り下げていく。まさにそれが地参地翔ってことなんですね。

本田:そうですね。なので飛行機を飛ばしてお客様を運ぶだけじゃなくって、需要を作ることをセットで考えてるんです。こういったことが今、航空会社には求められている。FDAでもそれをしっかりやりたいなと思ってますね。

石井:なるほど、よくわかりました。本日は本田さんのキャリアについてお話を伺いました。フジドリームエアラインズの社長として、地域との関わりに航空会社としてのキャリアの全てを注ぎ込まれてきた本田さんのお話を伺うことができました。次回の後編では、FDAが掲げる訪日客の誘致に向けた取り組み、そして地域との共存モデル、地域航空会社が描く日本の移動の未来について、深くお話を伺ってみたいと思います。本日は本田さん、ありがとうございました。

本田:ありがとうございました。

石井:最後にお知らせですが、今回の放送はradiko、当社YouTubeでご視聴いただけます。そちらもチェックしてください。この番組はWill Smartの提供でお送りしました。