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ラジオ:まちと移動のミライコラボ

「移動を諦めない」まちをつくる〜地方都市の移動のこれから〜

「移動を諦めない」まちをつくる〜地方都市の移動のこれから〜

 

第31回のゲストも、呉工業高等専門学校 環境都市工学分野 教授の神田佑亮さん(後編)。移動の回数を増やすことで地域経済を元気にする発想や、広島県庄原市で取り組む夜の交通・サブスク型運賃の実践例、そして西日本豪雨の経験から導き出した「平常時にも非常時にも機能するインフラ」という考え方まで、地方都市の移動の未来像をじっくり伺います。

前回はこちら「いまある交通を生かして、地方の足を守る〜モビリティ・マネジメントという発想〜」

番組名
『まちと移動のミライコラボ』全文書き起こし
放送日
2026年8月9日
ゲスト
神田 佑亮 氏(呉工業高等専門学校 環境都市工学分野 教授)

【オープニング〜「移動を諦めない」地域をつくる発想〜】

石井:呉工業高等専門学校 環境都市工学分野 教授、神田佑亮さんです。神田さん、よろしくお願いいたします。

神田:よろしくお願いします。

石井:前編ではこれまでの神田さんのキャリアと、特に災害を中心とした移動で起きている様々な問題について具体的にお話を伺いました。後編では、どちらかというと未来の話を伺いたいなと思います。神田さんご自身が考えられる、これから先の地方都市の移動、またはそういった交通インフラについてどのように考えられるか、その点についてまずお話を伺ってもよろしいでしょうか。

神田:はい、よろしくお願いします。前回もお話ししましたけど、交通が止まると経済が止まるんですよね。人が出なくなると、スーパーなどのお店の売上が落ちていって、人口が減っていって、さらにダブルパンチで効いてくるような感じになっていて、それは良くないなと。とにかく、家から人を引っ張り出して街に出る状態を作りたいですし、逆に言うと引きこもると、お金も使わないし頭も使わないし体も使わないという状態になってしまうので、そうじゃなくてとにかく出てもらおうと。人口が減っていく、あるいは高齢化が進んでいくとなると利用者が減るじゃないか、人口が1割減るじゃないかというところに対して、交通の観点、あるいは地域経済の観点で言うと、その分移動する回数を1割増やしたら何とかなるじゃないかと。そういう状態を作りたいなと思っていて。今この世の中で、やっぱり足がないから外に出れないんだとか、不便だからちょっと面倒くさくてなかなか外に出れていないんだという方、結構いらっしゃると思うんです。そこを僕は何とかしたいと思っていて。ちょっと外に出たいと思ったら出ていく、あるいは特に用はないんだけど出かけて誰かと出会ってちょっと喋ってくる、お茶してくるというのが気軽にできるような、そんな社会を地方でも作りたいなと思っています。

石井:なるほど。移動の障壁が下がるような取り組みとか、将来こういったものがもしかしたら実現するんじゃないかというような事例とかも、もしありましたらぜひご紹介いただきたいなと思うんですけど。

【サブスク型運賃と夜の交通〜広島県庄原市の取り組み〜】

神田:はい。だいたい日本の公共交通って、運賃が中心部は安くて郊外に行くとすごく高いんですよ。それが必ずしも海外がいいという意味ではないんですけど、例えばヨーロッパの多くの都市って、1回1回の運賃は高いんですけど、1ヶ月とか6ヶ月、1年の定期ってすごく安いんですよ。今でいうサブスクみたいな感じの運賃ですよね。日本で言う定期券は、どちらかというと何駅から何駅まで、どこどこのバス停からどこどこのバス停までという、線の移動を対象にしているんですけど、「もうこのエリア好きに行って頂戴」というようなサブスク運賃って結構多くて、それを入れるともう好き勝手に移動ができるので、移動の高いな、面倒くさいなというところがクリアできないかなと。出れば出るほど自分の得なんだという状態が作れるんじゃないかなと思っていて。日本でもじわじわ、私の地元の広島もそうですけど、中心部の一定エリア乗り放題定期というのが入り始めたりはしているんですけど、まだまだこれからという状態ですね。あと最近頑張っているのは、夜の交通ですね。なかなか公共交通っていろんな補助が入っている関係もあって、通勤とか通学とかの必要不可欠で、昼間の時間帯の交通を中心に考えがちなんです。これはこれで暮らしていく上で最低限必要な交通なんですけど、結構夜の足を整えると、1人が外出することでタクシー代とか含めて1万円コースになっちゃう。ところがこれが夜のタクシーがなくなってしまうと、出るに出れないので、夜の時間、日が暮れてから交通をきっちり整えてあげると、街の経済とかその街の魅力につながるはずだと思っていて。ここの仕組みを色々整えるというのを、もう3年、4年ぐらい、広島県の中国山地のど真ん中、山の中の庄原というところで取り組んでいます。

石井:素晴らしいです。やはりこれからの地方都市は、観光という関係人口も増やしていきながら経済全体を上げていく中で、そういった意味で夜の足は非常に大きいですよね。

神田:そうなんです。夜って、泊まりも含めた夜で見た時に、地域の方々の活動もそうですし、観光の方もそうですし、あとは意外に出張で泊まられる方って結構多いんですよね。ビジネスで打ち合わせなどがあって来られる方もそうであれば、例えば建設や建築の作業の方で長く滞在されている方も結構おられるんですよね。そういう方々に快適に過ごしてもらうための環境を整える、その結果、地域でお金を使ってもらって、より地域の中で循環していって、地域の方々のビジネスがより成立しやすくなる。だからそれを整えたいなと思っています。

【災害復旧の両輪〜備えるインフラと経験の継承〜】

石井:続きまして、もう1つの大事なキーワードはやはり災害についてです。実際の災害に対応されたご経験も踏まえながら、今後の交通・移動、まさに街づくり全般になるかもしれないですけど、災害が起きた後の対応についても含めて、神田さんのお考えをぜひ伺いたいなと思うんですけれども。

神田:はい。災害の対応って、自分がその場に立ち会ってみて初めて分かったことが結構多いです。災害が起きてものが壊れて、そのものを直すのに、西日本豪雨でも何千億という被害を全体で受けていますけど、実は交通が止まってしまったおかげで地域の経済が冷え込んだ、その金額も何千億なんですよ。

石井:そうなんですか。

神田:意外にここって知られていないなというのがあって。そうなると、この経済の被害をできるだけ小さくするためには、被害を小さくするのと、あとはできるだけ早く元に戻してあげるという、この2つの視点から考えていくことが大切なんです。被害を小さくするという面でいくと、全てが災害に備えるためだけの対策をしようと思うと、これはさすがにコストがかかりすぎる。となると、災害が起こった時にも機能して、かつ平常時にも機能するという、両方使いができるような施設整備ができないかというところに視点があって、これがいかに大切だと思っています。例えば線路でいくと、山が崩れるんだったら高架、橋の上を走らせる状態にすると土が流れてきても強いので、部分的にそういう作りにしておこうかというのもありますし、これをやることによって電車が少し早く走れるはずなので、そういう作り方をするというのもありますし、あるいは線路だけじゃなくて実は駅も大切なので、最近国だと「バスタ」と言われているバスターミナル整備なんかも、例えば中にスポーツジムを作っておいて、普段はスポーツジムとして使ってもらうと。だけど帰宅困難者、帰れなくなる人、一晩泊まらなきゃいけない人が出てきたら、シャワーをちょっと開放しますよというような。そういう施設の使い方、整備の仕方というのは1つあるかなと思っています。あと、早く戻すという形でいくと、これは関係者との連携を普段からどうやって円滑にしておくのか、スムーズにしておくのかというのがすごく大事になってきます。西日本豪雨ももう発災して今8年になりますけど、それを経験した方々も組織の中、ほぼいなくなってるんですよ。よく「経験の伝承」という言葉になってきていますけど、これもずっと考えていく中でどうやったらいいんだろうかなと。語り継ぐってなかなか難しいなと思って。自分の中の最近の答えは、毎年1回必ず、当時を経験した、もう退職して70歳ぐらいになる人がいるんですけど、その人たちの話を聞いておく。困ったらとりあえず各組織の先輩にこんな人がいて、こういう経験をしていた、これっていいんですか悪いんですかと。だいたい災害の時に悩むのは、これをやっていいか悪いかっていう白と黒の判断なんです。普段は黒でも、災害が起こると、黒だと思ってた領域って白になっちゃうんです。そういう先輩方の話もしっかり同じ場で聞いておいて、あとは飲みに行って大騒ぎしよう、その時にもしとこうと。

石井:やっぱりその緊急時は、おっしゃる通り優先度が随分普段とは変わったものになってきますけど、確かにそれはシミュレーションしておかないと、なかなか難しいですよ。

神田:難しいですよね。

石井:シミュレーションした通りのことが起こるとは限らないので、となるとどこの組織にいる誰がどういうことができて、どういう判断ができてというところを知っておくというのは、非常に重要な備えかなと思いますね。

【エンディング〜街づくりを語り続けることの大切さ〜】

石井:よく分かりました。最後に、ぜひこれから先の街づくりについて、街と移動、交通に関して、神田さんの方からぜひ一言メッセージをいただきたいなと思っておりまして。

神田:はい。街づくりっていう言葉がまた非常に難しくって、街づくりって何だとか、どんな街づくりをしたいんだっていうその街の姿って多分バラバラだと思うんです。だから街づくりの話をやらないっていうんじゃなくって、多分やり続けなきゃダメだと思うんです。こういう街にしたいんだと。あと、こういった街にした方がいいんじゃないかっていうのと同時に、自分はこれができる、こういう貢献ができるっていうところも、なんか一緒に、それぞれの方がお話しになっていただきたいんです。こうした理解をしてくださる方、応援団がいっぱいいらっしゃる方が、いい街が早くできちゃうんですよね。とにかく、今人口が減っていく中で、私が今関わってる鉄道もそうですし、バスがなくなるからとか、お店がなくなるからとか、そんな話ばっかりだと思うんですけど、でも、どういう街の姿がいいんだっていうことを本当に積み重ねておくことが今後大切になってくるかなと思います。

石井:今日は、神田さんのこれまでのお仕事について深くお話を伺うことができました。特に、災害の経験から、いかに交通が経済的な影響を与えるものなのか、非常に経済にとって大切な役割であるかということについて、深くお話を伺ったことが印象的でございました。『まちと移動のミライコラボ』、本日のゲストは、呉工業高等専門学校 環境都市工学分野 教授・神田佑亮さんでした。神田さん、2回にわたってありがとうございました。

神田:どうもありがとうございました。

石井:最後にお知らせですが、今回の放送はradiko・当社YouTubeでご視聴いただけます。そちらもチェックしてください。この番組はWill Smartの提供でお送りしました。