
AIは敵ではなく仲間〜都築電気が描く「共に働く」未来と地域の再生〜
AIは敵ではなく仲間〜都築電気が描く「共に働く」未来と地域の再生〜
| 第37回のゲストも、都築電気株式会社・代表取締役社長の吉田克之さん(後編)。「AIを使う」のではなく「AIと共に働く」。都築電気が掲げるこの考え方の背景には、人にしかできない価値をどう育てるかという真摯な模索がありました。社内から生まれる地方創生や宇宙開発への挑戦、そしてデータが拓く物流DXの未来まで。AI時代における人とテクノロジーのあるべき関係、そして地域を元気にするICTの役割について伺います。 |
前回はこちら「光が当たらなかった基幹産業へ〜都築電気が挑む物流DXの現在地〜」
- 番組名
- 『まちと移動のミライコラボ』全文書き起こし
- 放送日
- 2026年9月20日
- ゲスト
- 吉田 克之 氏(都築電気株式会社 代表取締役社長)
目次
【オープニング〜AIは敵ではなく仲間〜】
石井:前回に引き続き、都築電気株式会社・代表取締役社長の吉田克之さんをお迎えしています。吉田さん、今週もよろしくお願いいたします。
吉田:よろしくお願いいたします。
石井:前回は都築電気さんの90年以上にわたる歩みと、その中での取り組み、そして特に物流について、現場の課題に挑む「TCloud for SCM」というサービスのご紹介などもいただきながら、様々な現場の実情をお話しいただきました。今日はこのテクノロジー業界を見ると、やはりAIというものが切っても切り離せない、もしかしたらインターネットの時代と同じか、それ以上の変革の可能性がある新しい技術が登場していますが、そうした中で都築電気さんが今後どのように進んでいかれるのかについてお話を伺いたいと思います。まず、AIについてどのような認識を持っていらっしゃって、今後どういう未来に向かっていくとお考えか、その辺りをお願いします。
吉田:AIというのはかなり極めつけの技術だと思いますし、今までのICT業界の進化のスピードの数十倍、数百倍の進化を遂げていると思います。我々として都築電気がAIをどう捉えていくかというのは、もう2年ぐらい前から社内でも議論しておりますが、やはりこれとどう付き合っていくかということだと思っております。その中で我々が社内で言っているのは、「AIを使う」というよりも「AIと共に働く」という、いわば社員の1人というような位置付けで考えております。今まで人間がやっていた、例えば開発のプロセスにしても、人間に取って代わってAIが実現できることは、これからますます増えてくると思います。その中で、人間にしかできないところは何なのか、というのが、今まさに世の中に示されている課題だと思うんですね。我々としても、人間が何をやるんだ、ということを試行錯誤しながら進めているところですので、AIを脅威というよりも機会として捉えていきたいと考えております。
【人にしかできない領域〜「共に働く」に至った議論〜】
石井:その「共に働く」という結論に至るまで、社内でいろいろな議論があったかと思います。昨今のニュースを見ると、採用の抑制がすでに起きていたり、例えばアメリカでは解雇があっさりと行われるなど、現実的に置き換えのようなことが起きているかと思いますし、おそらくそういった議論も社内であったと思うのですが、その「共に働く」ということに帰着した経緯をもう少し詳しく伺いたいです。
吉田:おっしゃる通り、人間を置き換えるというフェーズ、カテゴリーももちろんあると思います。そういう意味では、モノを作る、本当に製造するというところは、AIに置き換わるだろうと思います。ただ、私たちが歴史の中で積み重ねてきた「お客様から課題を聞く」「その課題に対してまだこういう課題がないか深掘りする」「それを解決するための実現手段は何かを考える」ということについては、まだまだ我々を含めた技術的な知見が必要なんじゃないかと考えております。
石井:なるほど。まさにお客さんの課題解決をする、現場のフロントに出る話ですね。これは営業職だけでなく、エンジニアの方も含めてということですね。例えば、そういった方々の成長を促すためにAIができることというと、どんなことがあるんですかね。
吉田:1つは、業界の中で標準的なプロセスでやっているようなところは、もちろんAIに置き換わるところだと思うんですが、その上流、つまりプロフェッショナルとしてのコンサルティング能力については、我々としてどんどん育成をして人を増やしていきたいと思っていますし、そのための余白の時間を創るということが、AIの大きな役割になってくるんじゃないかと思っています。
石井:そうしてくると、人間に求められていくのは高度な人と人とのコミュニケーションの部分もあるでしょうし、少しイノベーションというか、企画・想像力みたいなものも非常に大事になってくるということですね。実際にそういった方を育成する、あるいは仲間につけていくという中では、どういった取り組みを今されているのか、あるいは今後やっていきたいと思っていらっしゃることはありますか。
【若手のイノベーション人材育成〜地方創生と宇宙への挑戦〜】
吉田:2年ぐらい前から、社内で若手のイノベーション人材を育成しようということで、現場にいるメンバーの中から手上げ式で新しい新規事業を立ち上げるアイデアを募る、いわば社内のピッチコンテストのようなものを始めました。その中から優秀なものについては、会社として資金面や人材面で後押しをするという形でスタートしています。実は、前回お話しした物流の話とも絡むのですが、地方や地域に行くとどうしても過疎化が進んでいる。そういう環境の中で、地域をどうやって再生するか。自分の出身の県で、生徒も減り、学校の統廃合も進んでしまっているけれど、なんとかしたいということで、自分のふるさとの創生をするようなメンバーも出てきています。一方で、全く関係のない「宇宙」に目を向けているメンバーもいます。宇宙の時代と言われていますが、若手のメンバーは、宇宙が地球上と同じようなことができる環境になった時に、我々に何ができるんだと考えて、実は北海道にあるスペースタウンと言われる自治体と最近コネクションを作りまして、そこの人たちと一緒に宇宙について熱く語る、というようなことをやり始めたりしています。そんなふうに、今までの「モノを作ってモノを売る」ということから、「共創する」関係というものを非常に強く打ち出していっております。
石井:なるほど。やっぱりそこから、このAI時代における人のあるべき姿の1つが見えてくるのかもしれませんね。よく分かりました。ありがとうございます。
【データが変える物流DXの未来〜そして地域の元気へ〜】
石井:前回、企業を飛び越えた形でのデータ活用で共同配送に取り組んでいるというお話がありましたが、このデータを活用して、先ほどのAIも加えていくと、今後どんな物流DXの形が見えてくるのでしょうか。
吉田:前回の話の繰り返しになってしまうかもしれませんが、労働人口が減る中で、どれだけ効率よく物流をするかというのは非常に重要なテーマだと思っています。そのためには、今がどうなのかを可視化する必要があって、そのためのデータだと思っています。そのデータを収集するために、国を挙げて、例えば商用車には標準的にデータを取るような仕組みを作るなどして、それを誰でも見られて効率よく配送ができるようにする。その辺りが、運輸業界・物流業界のDXにおける1番の大きなテーマではないかと思っています。
石井:なるほど。そういった意味では、オープン化してお互いのデータを掛け合わせていくことも大事になるでしょうし、まだまだ取れていないデータもたくさんあるということですね。
吉田:そうです。たくさんあると思います。
石井:実際にお仕事の中で、こういったところはもっとデータが取れるかもしれない、という部分はありますか。
吉田:例えば、同じ物流、同じものを運ぶのでも、A社さんとB社さんで労働時間が違うのか同じなのか、といったことです。そうすると、一人ひとりの働き方というのが、まだ見えていないところがたくさんあるんじゃないかと思っていまして、そこには健康問題なども関わってきます。我々のSCMを手がける上で、ヘルスケア分野のサービスを持っている企業とも一緒にジョインしておりまして、そういうことが取れると、もっと効率も上がるでしょうし、一人ひとりの働き方も変わってくるんじゃないかと思っています。
石井:最後になりますが、これは物流だけに限らなくても構いません。この番組のテーマは「街と移動」ということになっておりますので、街や移動、あるいは暮らしといったことをテーマに、都築電気さんでも吉田さんご自身でも構いませんが、こういう分野はデジタルやテクノロジーを使うともっと良くなるんじゃないか、というものがあれば最後に伺いたいです。
吉田:今まさに物流や移動というのが大きな課題になっていますが、もう1つは、いわゆる一次産業、農業や漁業、林業といった分野にも、まだまだITの力を活かせるんじゃないかと思っています。先ほどお話しした通り、地方の過疎化が進んで人がいなくなってくると、一次産業もどんどん衰退していくという負のスパイラルになってしまいます。そこは日本として、地域をもっと元気にするためのICTの役割が、ますます大きくなるんじゃないかと考えております。
石井:よく分かりました。本当におっしゃる通りですね。都築電気さんとして、今後新しく取り組まれる分野などがありましたら、ぜひ伺いたいのですが。
吉田:今申し上げたように、各業界業種で、先ほどお話ししたSCMのようなサービスを、もっともっと出していきたいと思いますし、ぜひご期待いただければと思います。
石井:分かりました。ありがとうございます。今日はAI時代において、吉田さんがどのように経営に携わっていらっしゃるのか、まさにAIを敵ではなく仲間にするという考え方を伺いました。その中で、人の変革もそうですし、個人的に気になったのはやはり地域ですね。日本の社会課題の中心テーマに対して、テクノロジーの活用範囲についてお話を伺うことができました。2週にわたってお時間をいただきました、都築電気株式会社・代表取締役社長の吉田克之さんでした。ありがとうございました。
吉田:ありがとうございました。
石井:最後にお知らせですが、今回の放送はradiko・当社YouTubeでご視聴いただけます。そちらもチェックしてください。この番組はWill Smartの提供でお送りしました。












