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ラジオ:まちと移動のミライコラボ

民泊は地域課題を解く「逆転の発想」〜近隣トラブルの実態から、農業・二地域居住・防災・宿泊税まで〜

民泊は地域課題を解く「逆転の発想」〜近隣トラブルの実態から、農業・二地域居住・防災・宿泊税まで〜

 

第41回のゲストは、前回に引き続き、一般社団法人住宅宿泊協会(JAVR)代表理事の上山康博さん(後編)。ニュースで取り上げられる近隣トラブルの実態と、騒音計やカメラなどのIoT機器・DXを活用した管理の最前線を伺います。さらに、収穫期の人手不足を補う農業との連携、二地域居住、災害時の避難所・被災者住宅としての活用、そして民泊も対象となった宿泊税を地域交通の財源に生かす構想まで。民泊が地域課題を解決する「道具」になり得ることを語っていただきました。

前回はこちら「民泊を正しく知る〜住宅宿泊協会・上山代表理事が語る10万件・数兆円市場〜」

番組名
『まちと移動のミライコラボ』全文書き起こし
放送日
2026年10月18日
ゲスト
上山 康博 氏(一般社団法人住宅宿泊協会 代表理事)

【オープニング〜近隣トラブルの実態と、事業者に求められる責任〜】

石井:『まちと移動のミライコラボ』。本日も前編に引き続き、一般社団法人住宅宿泊協会、通称JAVRの代表理事、上山康博さんをお迎えしております。よろしくお願いいたします。
上山:よろしくお願いいたします。
石井:前編では、民泊とはそもそもどういうものなのか、市場の可能性や規模について、深いお話をいただきました。今回は、まさに現場で起きている課題についてです。前編でも少し触れていただきましたが、管理が十分でない一部の事業者さんが周辺住民の方とトラブルになる事象は、ニュースなどでもよく出てきます。その実態について、詳しく伺いたいと思います。
上山:メディアで取り上げられている状況は、一部、本当にあります。それを「できるだけ減らす」ではなく、とことんゼロにしようという活動を、私たち業界関係者もやっていますし、民泊管理の業界団体もあり、皆さんがそれぞれの立場で努力されています。さらに、国や自治体も、制度面も含めてしっかり実行されているところです。とはいえ、メディアに出ていることが拡大解釈されて、全部がそうであるかのように言われるのは違います。数万件のうちの1件、2件の話が、100であるかのように語られるのは違うよ、と言いたくはなります。
石井:一部の問題が非常にクローズアップされて、全体がそうであるかのように捉えられてしまう傾向はありますよね。
上山:あります。実際に近隣へ迷惑をかけているのか、そうした事実があるのかをデータとして残すためにも、施設の中に騒音を測る騒音計(デシベル計)を設置したり、庭でバーベキューをしてはいけないと伝えている場所にカメラを設置したりしています。やってはいけないことをやれば、それが証拠として残る。そうした管理上の証拠を残していくためには、DXやIoTといったテクノロジーの活用が必須条件になっていて、そうした施設がどんどん増えています。
石井:IoT機器を使って、ルールを守らない一部の利用者に、約束を守っていただく。それはホテルでも同じですよね。
上山:全く一緒です。
石井:民泊に泊まる人とホテルに泊まる人は、同じ人であることも多々あります。その人たちが特別なわけではなく、問題は事業者の努力が足りない部分にある、ということですよね。
上山:はい。それと、泊まっていただく方々は、ホテルでも旅館でも民泊でも同じですが、日本の基本的な常識、日本の基本的な常識(コモンセンス)を理解して、皆が楽しく快適に過ごせるようにするための啓発活動も、事業者がやるべき部分だと思います。「言った、言わない」ではなく、こういうことをされましたよね、と気づいていただく。無意識でやってしまっている方もいらっしゃいますから。そうしないと、皆が快適な旅行・観光・宿泊にならない、ということだと思います。
石井:民泊だからホテルだからではなく、その人固有の問題であり、それをいかに指導するかが大事だということですね。事業者がお客様にきちんと利用ルールをしっかり伝えないと、問題がより大きくなったり、頻発したりしてしまう。事業者がしっかりやりなさい、ということですね。
上山:そうです。

【地方の遊休資産を生かす〜農業・二地域居住・防災への展開〜】

石井:次に、将来的なお話を伺いたいと思います。この市場はまだ広がる余地がありますし、都市部というより、地方の遊休資産の活用にこそ民泊の大きな可能性があると思っています。北海道のスキー客のように、1週間、2週間と滞在してくれる方が地域にもたらす経済効果は大きいはずです。ポジティブな方向に持っていくために、事業者、行政、地域住民はどんなことに取り組む必要があるでしょうか。
上山:例えば農業の分野は人手が足りません。昨今どこの業界も人手不足ですが、特に足りないのは収穫時期です。その時に民泊を用意しておけば、泊まって収穫を手伝い、採れたものをお土産に持って帰ってもらう、といったマッチングができます。今までマッチしなかった部分が、この施設があることでマッチできるようになります。
石井:すごい可能性ですね。関東近郊でも、山梨のぶどう狩りなど、収穫のお手伝いを体験されている方は多いですよね。
上山:観光農園は、お金を払って収穫を手伝っているのと同じですからね。
石井:お金も落としてくれて、泊まって数日いてくれて、地域の方々との交流や体験にも参加していただければ理想的ですね。インバウンドの方々の体験メニューでは、フルーツピッキングは人気の高い体験の一つなんですよ。
上山:日本のフルーツは、おそらく世界で一番おいしいので、その場で採って、その場で食べるというのは、これ以上ない貴重な食体験になります。
石井:地域が持つ課題を解決する、逆転の発想の具体的な道具として、民泊をもっと活用できるということですね。1週間ほど、例えば4人家族で泊まると、どれくらいのお金が落ちるのでしょうか。
上山:1部屋・1泊あたりの売上は施設によって違いますが、平均すると2万円ほどです。4人で利用すると、単純計算で1人あたり5,000円程度です。10日間滞在すれば20万円ですが、10日間も滞在すれば、それなりにかかるわけですから、家1軒で十分な収益になるのではないでしょうか。
石井:それだけの経済効果をもたらすものが、他にそう多くあるのかということですよね。
上山:そう思います。昨今よく言われる二地域居住もそうです。東京と大阪に住みながら、第二のふるさととして田舎に家を持つ。でも、ふだんは空いているわけです。30日のうち10日使って20日空いているなら、その20日を宿泊施設として運営してもらう。自分のプライベートな部屋には鍵をかけられるようにして、あとはパブリックに使ってもらえば、収益がもたらされ、二地域居住そのものも広がっていきます。
石井:そういう使い方もあるのですね。観光目的だけでなく、仕事で長期滞在しなければいけない方の受け皿にもなりますよね。
上山:なります。さらに、将来的な話として、悲しいことですが、日本ではどこで災害が起きてもおかしくありません。その時に、民泊を1棟まるごとまずは避難所として使い、大災害で長期化した場合には被災者住宅にすれば、いちいち新しく作らなくてよいのです。
石井:そうした施設を持つことは、地域にとって非常に重要な対応力になりますね。民泊の活用は、しっかり発展させていく必要があると思います。

【宿泊税を地域交通の財源に〜旅行者も住民もウィンウィンの未来〜】

石井:最後に、もう一つ大事な点です。地域にとって、観光業者でないと恩恵を得られないという印象を持たれがちですが、昨今は宿泊税という新しい財源を獲得する自治体が増えています。民泊ももちろん対象ですよね。
上山:はい。ただ、かなり以前は民泊は対象ではありませんでした。私どもJAVRとしても、民泊利用者にも宿泊税をご負担いただき、その財源を地域の皆さまのために活用いただけるよう、意見を発信してきました。
石井:すごくいいですね。地域交通は、旅行者の足としても必要ですが、住民の方の足でもあります。この番組でも取り上げてきましたが、今は地域交通が先細っている世の中ですので、宿泊税を財源として活用するのは非常に有効です。
上山:そうですね。
石井:地域交通が便利になれば、旅行者も使えますし、そこにお住まいの方々は日々の足としてお使いいただける。関係者すべてにメリットがあります。2週にわたって、民泊の基本から、地域との共存、そして今後の可能性まで、非常に面白く、示唆に富むお話をいただきました。上山さん、本当にありがとうございました。
上山:こちらこそ、ありがとうございました。
石井:最後にお知らせです。今回の放送は、radikoと当社YouTubeでご視聴いただけます。そちらもぜひチェックしてください。この番組は、Will Smartの提供でお送りしました。