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「ミライの種」ゼンリン 竹川執行役員兼IoT事業本部本部長インタビュー 後編

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各分野における経営のプロフェッショナルたちが考える未来への戦略、未来への投資、そして未来像とは?過去から現在、そして未来の花咲くカギとなる「種」とはどんな姿なのか?その「歩み」を辿りながら「ミライの種」に迫ります。

前編に引き続き、今回、お話を伺うのは、ゼンリンの執行役員兼IoT事業本部本部長 竹川 道郎(たけがわ みちお)さんです。地図の最大手企業であるゼンリンでは、今、自動運転やドローンの自律飛行になくてはならない地図情報を開発、提供しています。そんなゼンリンで自動運転支援への地図の必要性を自動車業界内に訴求するなど、業界のパイオニア的存在である竹川さんに、IoT技術や社会の変化に応じた「地図」の未来について、お話しいただきました。

「ゼンリンのミライの種」

前編で伺った地図が位置情報データベースへと発展していったという背景がある中で、貴社はこれからどういう地図を作りたいと考えていますか。

「地図って、分かりやすく言えば、航空写真を撮ってきてそれをなぞって線で道路なんかをデフォルメして絵として描けばいいんですよね。これまで通り、人が地図を読むだけならそれでも事足りるかもしれません。でも今、地図はシステムが読むためのものにもなってきているので、今後は今まで通りのやり方だけでは通用しなくなる。そこで、今みたいなIoT時代は、地物(※1)のデータベースを活用していくことが必要だと考えています。ゼンリンは現実世界の空間情報を地物という概念で収集し、それらを空間データベースとしてモデル化して、時間軸を含めて管理していて、それが『時空間』という概念になるんです。時間軸を持つことで、変化したところをメンテナンスしていくと、何がどう変化したか、過去から現在の履歴が分かるわけですよね。もしかしたら未来の情報も管理できるかもしれない。今までの地図では、この変化情報の管理が難しかったのですが、地物単位で整備していくことでしっかりと変化情報を管理できるんです。」

地物って、道路の白線とかポールとか全て現実世界に存在するものだと思うんですけれども、この膨大な情報を管理していくって非常に大変なことだと思います。どのように管理されてるんですか。

「ゼンリンの独自のシステムで管理しています。ゼンリンの社会的なミッションの中に、『現実世界をライブラリー化する』っていうミッションがあるんですね。その表現の方法が地図だったり、何かと融合したデータベース属性になっていくので、まず地物として時間軸と空間を、アーカイブする。これが一つの大きな時空間の考え方です。例えば、右折禁止の場所ってありますよね。そこにある標識って実は、『右に行っちゃいけない』という標識ではなく、『左に行ける』とか『まっすぐ行ける』というように『矢印の方向だけに行ける』という標識なんですけど、時空間ではこれらの標識という地物から「右折禁止」という情報が自動的に生成されます。そういう風に現実世界の地物情報から地図や属性情報をどんどん生成し時間軸で管理するのが、時空間データベースです。さらに提供フェーズでは、地物データをアプリケーションが読めるようにデフォルメしたり最適な情報に加工したり、工夫をしていることもノウハウです。例えば、2019年5月に発表された、日産自動車のスカイラインに搭載されている世界初インテリジェント高速道路ルート走行「ProPILOT2.0」のシステムには、ゼンリンとダイナミックマップ基盤株式会社で制作した3D高精度地図データが搭載されていて、これにより安心・安全な自動運転を可能にしています。これはシステムが読むものなので、一般的にイメージされる建物が立体的に描かれているような3次元地図ではなく、機械が読むためのラインや属性データで構成されています」

では、3D高精度地図データを人が見ることはあまりないのですか。

「ナビゲーションみたいに、この地図をそのまま見ることはないですね。ただし、このデータと連携したものがナビゲーションのような機能を持ってそれを人が見るとかはあります。自動運転で走っているときに、今どこを走っているのかが分からなかったら怖いですよね。そういうものは、機械の中でナビゲーションと連動して、人が見てわかるように表現されたりします」

今までは地図を人間が読んでいましたが、これからは特定の情報を参照して移動ができるようになったりするっていうことでしょうか。

「IoT化が進むと、センシングした情報と位置情報を組み合わせたデータベースが、人間の脳の代わりをしていくんです。センシングが目や耳の機能だったとしたら、地図はいわば“記憶”です。だから記憶した情報と今見ているものをあわせて先を読んだり、行動計画を立てたり、自分のポジショニングを決めたりしていきます。その空版がドローンの地図です。ドローンも自動化していくと、システムが高度化します。当たり前ですけど山間部のような人がいない所ではそんなに困りませんが、街中になったり物流などの役割を持ったりすると、衝突や墜落のリスクをどうマネジメントするかというところが課題になります」

ゼンリンが開発した自律飛行ドローンのモニタリングアプリ イメージ

そういった課題について、貴社ではどう考えていますか。

「そこで考えているのが、空の3次元地図です。これは2019年10月30日に発表した内容なのですが、国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(通称:NEDO)ご協力のもと、NECを筆頭に名だたる企業と、1時間に1平方キロメートル内で複数事業者の異なる用途のドローンが安全に飛行するための運航管理システムとの相互接続試験を実施し、合計146フライト行うことに成功しています(※2)。ゼンリンは、ここでドローンの飛行にリスクとなるような情報を収集し、リアルタイムに提供する仕組みを開発しています。実は、この実証試験には、NEDOプロジェクト参画の17事業者に加え、プロジェクトに参画していない一般のドローン事業者12社が参画しました。一般のドローン事業者が本試験に参加したことで、運航管理システムの実用性や相互接続に関するセキュリティー対策の有効性が実証できました。ドローンって好き勝手飛んでたらぶつかっちゃうんですよね。だからゼンリンのデータベースを活用して、ドローンが安心・安全に飛べるようマネジメントすることが必要なんです」

空の場合の地物というのは、何かあるんですか。

「空の場合、四つに分類して考えます。まず地形情報、次に障害物情報、さらに皇居の周りとか空港の周りは飛んじゃ駄目だとか、イベントがあって人が集まるから危ないだとか、そういう規制情報があります。そのうえで天気のような動的情報を加味して空間を定義していきます」

なるほど。空の地図をつくっていくというとき、貴社の強みはどういった点にあると考えていますか。

「自分たちで言うのもなんですけど、2次元の地図を既に持っていることは、やはりゼンリンの強みなんですよね。同じくらいあるいはそれ以上の精度の地図データを新規でつくるのには大きな投資が必要です。また、しっかりとした出典と生成プロセスで品質を保証していくということも、ゼンリンの強みだと考えています。品質とそれをメンテナンスする力、そして用途に応じて変化させて提供できる力。この三つが他にはない強みだと思っています」

「グループのミライの種」

ここまでで、貴社が「位置情報を使ったインフラとしての役割を担っていく」と伺いました。ゼンリングループとして担っていきたい役割はどのようなものでしょうか。

「お話してきたように、ゼンリンの役割は、時空間情報というものを多用途に使えるよう、整備していくことです。ゼンリンのIoT事業では、それをソリューションとして提供できるような、企画、開発を進めていっているんですね。そんな中で、例えばアプリケーションに特化したサービスはゼンリンデータコム、ソリューションを作っていろいろな企業さんと社会実装していくところをWillSmartなどが担うといったように、グループ各社の得意な分野で社会に貢献していきたいと考えています」

なるほど。時空間情報をソリューションとして提供していく中で、WillSmartとのコラボレーションに期待しているところはありますか。

「WillSmartは地図専門の会社ではないですけど、位置情報をうまく使ったソリューションをつくるのがものすごく上手なんですよね。ゼンリンはどちらかというとバリューチェーンの中の下流工程をやっていて、WillSmartは上流工程、つまり、よりお客様に近いマネジメントソリューションをやっている会社だと思います。例えば、位置情報があればマッピングできて可視化・分析し、ソリューションとして提案できると思うので、そのバックヤードをゼンリンが担っていく。そういうコラボレーションというのは、今後、非常に幅が広いだろうと考えています。当たり前ですけど、データはあくまでも目的でなく手段なんですよね。お客様の課題を解決して、スマートな社会をつくって、皆が幸せに暮らす。そういう社会のために、企業があってゼンリンがあったりします。そこでデータを活用して課題を解決するのがWill Smartの得意なところでもあるし、今後もっと伸ばしていってほしいところだなと思います。ゼンリンはそのもう1つ手前の位置情報ソリューションのエリアでいろんな空間情報というのを整備してビジネスを広くできるような、バックエンドでやっていくので、Will Smartには、ゼンリンの位置情報をうまく使って、より競争力のある、より社会に受け入れられるスマートソリューションみたいなものをやっていってもらったらな、と思っています」

「最後にあなたのミライの種を教えてください」

「私のミライの種は時空間です。ゼンリンは時空間データベースで日本の将来のインフラを担っていきます。」


竹川道郎
1996年に株式会社ゼンリンに入社。以来、カーナビゲーション向け地図データベース・テレマティクスサービスの企画営業を担当し、2012年ITS営業二部部長を務める。2016年ADAS事業推進室室長として自動運転に向けた高精度3D地図のプロジェクトを推進。2018年から現職で執行役員IoT事業本部本部長として、ドローン事業、MaaS・位置情報ソリューションなどに関する事業を推進している。

(※1)天然・人工にかかわらず、地上にある全ての物の概念のこと。現実世界に実在する物・現象・環境や実在はしないが適用業務上に仮想的に存在させるものも地物という。
(※2)詳細はゼンリンのニュースリリースを参照。https://www.zenrin.co.jp/information/public/191030.html

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