「カーシェアに関する消費者の意識調査」からカーシェアサービスの未来を考える|後編
近年、普及が進んできたカーシェアリングサービス。
最近は、新型コロナの流行による外出自粛などの影響で、一時は利用者が減少していましたが、満員電車などでの「密」を避ける移動手段として注目が高まっています。
そうした中で、顧客満足度や消費者動向などをリサーチ・コンサルティングする株式会社J.D. パワー ジャパンによって、2021年1月と6月にインターネットで「コロナ禍でのカーライフやクルマの意向」に関するアンケート調査が実施されました。
そこでミライコラボでは、カーシェアリングプラットフォーム「Will-MoBi」の提供を行っている、株式会社Will Smartのモビリティ事業部、金子さんに前後編、2回に渡りインタビューしました。
(前編の記事は▼こちらよりお読みください。)
カーシェアリングサービスの現在の認知度や普及状況を中心にお話を伺った前編に続き、後編では、コロナ禍でのカーシェアリングサービスや今後のカーシェアリングサービスの展望について、伺っています。
後編:Withコロナ時代のカーシェアリングサービス
前編に引き続き、アンケートに関連してお話を伺っていきます。
「カーシェアリングサービスを利用する理由」の設問のアンケート結果からは、カーシェアならではの特徴などは見られますか?
金子さん:上位をみると「ステーションが近い」、「24時間利用できる」、「すぐに借りられて、返すことができる」などの理由があげられています。こちらについては、前編でもお話ししましたが、カーシェアのステーションは18000カ所ほどもあり、実はレンタカーの営業所よりも利用の拠点が多いという特徴が反映されていると思います。ステーションの場所についても、レンタカーの営業所は、駅や空港がほとんどですが、カーシェアリングサービスのステーションは都市部では、探してみると生活圏内にも多くあります。
また、無人サービスである点に着目した意見も見られますが、カーシェアリングサービスは、基本的に、人を介さないサービスなので、24時間いつでも利用したいときに借りて、返却することができるというのもいいポイントです。
そのほかには、「短時間での利用がしたかった」ともあります。レンタカーでは基本6時間以上のプランがほとんどで、短時間になると割高になってしまいますが、カーシェアリングサービスは、15分から借りられるため、短時間で利用するユーザーが多いのも特徴のひとつだと思います。
続いては、コロナ禍のカーシェアリングサービスについて伺います。
コロナウィルス流行前後に利用した移動手段に関するアンケートの結果ですが、全体的に利用率が下がっている傾向の中、自家用車は増えていて、カーシェアは横ばいです。こちらの結果についてはどのように思われますか?
金子さん:まず、公共交通機関の移動については、多くの人がまとまって移動するパブリックな移動手段のため、混雑を避けるニーズの高まりで利用が減っています。
利用者の個人的な理由だけではなく、自治体の推奨があったり、企業や大学などでリモートの体制ができたりといったこともあり、特に緊急事態宣言中は公共交通機関の人手が普段より少なかった実感を持つ人は多いと思います。
そうした中で、よりプライベートな移動手段を利用する人が増えており、人との接触が全くない完全なプライベートな移動手段であり、コロナ感染のリスクが最も低い自家用車の利用が増えているのは自然な流れではないでしょうか。
ここで、プライベートな移動手段である車を他者と共有するというコロナ感染リスクに差がないように見えがちなレンタカーの移動が減り、カーシェアの移動が減っていない理由は、大きく2つ考えられます。
1つ目は、利用目的の違いです。レンタカーはレジャーや出張などの目的が多く、レジャー施設が利用できなかったり、出張ができなかったりといった理由で利用が減ったと考えられます。一方で、カーシェアは比較的買い物などの日常利用も多いので、利用者の増減が見られないと考えられます。
2つ目は、人との接触機会の違いです。レンタカーは対面での貸渡しになりますが、カーシェアリングは非対面で借りることができます。この違いも、人との接触を避ける傾向がはたらいているコロナ禍において、利用の増減に影響を与えた大きな理由だと考えられます。
最後の質問になりますが、今後カーシェアリングサービス関連で注目していることはありますか?
金子さん:私は、社用車を活用したカーシェアの普及と、電気自動車(EV)のシェアリングに注目しています。
まず、1つ目の社用車活用については、実際に、社用車をシェアカーとして活用しようと考えている企業が増えてきています。今までは、社員1人に対して、社用車を1台という企業が多かったのですが、コロナの影響で在宅勤務やWEB会議を取り入れたことを機に社用車を適正台数にしたいというニーズが出てきました。
さらに適正台数に削減した社用車の利用方法にカーシェアリングサービスを採用すると、ほとんど車を利用しない休日には、従業員の福利厚生として社用車を貸し出すこともでき、企業にとっても従業員にとっても大きなメリットがあります。今後は、こうした社用車を活用したカーシェアが普及していくと考えています。
2つ目の電気自動車(EV)のカーシェアリングについても利用の増加を期待しています。
パリ協定以降、脱炭素社会が掲げられ、政府の政策としてもカーボンニュートラルに向けた動きを進めています。そもそも必要な時だけ車を利用するため、自家用車より環境負荷が少ないカーシェアリングにおいて、さらに環境に優しいEVを活用するというのは、脱炭素社会を掲げた世界の動きにあったサービスといえます。そのため、条件によっては、政府や自治体による補助金などを活用して事業を始めることも可能です。(※1)
実際の事例でいうと、小田原市でもEVカーシェアリングサービスを導入しています。
また、EVは、災害時などに停電になったときに、移動手段だけではなく蓄電池としても利用できるので、地震などの多い日本ではそういった面でも普及が進んでほしいと思います。
まとめ
現在レンタカーとカーシェアリングサービスの市場規模は20倍ほど差があり、まだまだレンタカーを利用する人の方が多いです。カーシェアリングサービスを利用したことがない人にとっては、レンタカーもカーシェアリングサービスも同じ“車を借りる”のサービスと思っているかもしれませんが、今回のアンケート調査の「カーシェアリングサービスを利用する人の理由」にもあるように、利用用途によって適したサービスがあると実感しました。それぞれのサービスや特徴を知ることで、利用用途によってレンタカーやカーシェアリングサービス、その他のサービスを使い分けるなど、利用者にとってより便利な使い方ができるのではないでしょうか。
※1・・・例えば、東京都内の事業者で、電気自動車を新車で導入する場合は、約45~60万円の補助を受けることができます。
【取材先概要】
「株式会社Will Smart」
■所在地:東京都江東区富岡2-11-6 HASEMAN BLDG5-1
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