
バス停におけるデジタルサイネージとは?導入のメリットと手順を解説
近年、バス停での情報提供手段として、デジタルサイネージの導入が進んでいます。従来の紙の時刻表や案内板と比べ、リアルタイムでの情報更新や複数の情報を表示できる点が特徴です。バス停では、 遅延や運行状況の変更など、常に正確な運行情報の提供が欠かせません。そのため、デジタルサイネージを導入することで、このような情報をリアルタイムで更新・提供できるので、利用者の利便性向上につながります。
本記事では、バス停のデジタルサイネージの基本的な仕組みと導入メリット、実際の導入に向けた検討ポイントをご紹介します。
目次
バス停におけるデジタルサイネージの基本的な仕組み
バス停にデジタルサイネージを導入することで、交通事業者の運営効率が大幅に向上します。
バス停におけるデジタルサイネージとは
デジタルサイネージは、液晶ディスプレイやLEDパネルを使用した電子表示システムです。バス停に設置されるサイネージの主な表示内容は、バスの運行状況や到着予定時刻、遅延情報などです。また、緊急時の案内や交通情報などが表示できるシステムもあります。
主な機能
デジタルサイネージを設置したバス停では、以下のような機能を利用できます。
・リアルタイムの運行情報表示
バスの到着予定時刻や遅延情報をGTFSデータ*1から取得して表示するほか、GPSデータを活用してバスの現在位置をリアルタイムで更新表示することもできます。
・複数路線の時刻表示
異なるバス事業者の路線情報も一元管理し、利用者にわかりやすく一覧表示できます。
・遅延情報の自動更新
道路状況や運行状況に応じて、遅延情報を自動で更新・表示します。
・緊急時の案内表示
災害発生時や運行トラブル時には、通常の表示から緊急案内表示に速やかに切り替えることができます。
・多言語での情報提供
日本語・英語を基本に、必要に応じて中国語や韓国語など多言語での案内が可能です。
このように、デジタルサイネージは従来の紙の掲示に比べて、情報の即時性と正確性が格段に向上します。これは特に、複数のバス事業者が運行しているバス停で効果を発揮します。従来は事業者ごとに別々に管理していた運行情報を、1つのシステムにまとめて表示・管理できるため、情報更新の手間を大幅に削減できるからです。
*1 GTFSデータ(General Transit Feed Specification)
公共交通機関の時刻表とその地理的情報に使用される共通形式を定義したもの
システム構成の基礎知識
一般的なシステム構成は、以下のとおりです。
・表示端末(デジタルサイネージ)
屋外に設置する場合は、高輝度・防水仕様の屋外用ディスプレイが必要となり、様々な天候下でも安定した表示が可能です。屋内設置の場合は、一般的な業務用ディスプレイで対応可能です。
・運行管理システム
各バス事業者の運行データを収集・管理し、表示内容の更新を制御する中核システムです。
・情報配信サーバー
運行管理システムと表示端末をつなぎ、必要な情報を適切なタイミングで配信します。
・ネットワーク機器
安定した通信を確保するために、有線LANや4G/5G回線などを用いて各機器を接続します。また、表示端末への情報配信方式は、サイネージ端末に直接配信するタイプと、STB(セットトップボックス)を外付けして配信するタイプがあります。
これらの機器が連携することで、スムーズな情報提供が可能となります。導入時には、施設の規模や運用形態に応じて最適な構成を選択することが重要です。また、将来の拡張性も考慮し、新しい機能やサービスにも対応できるシステム設計を検討することをおすすめします。
導入による具体的なメリット
デジタルサイネージの導入による運営面でのメリットについて、実際の現場で得られる具体的な効果を見ていきましょう。特に複数のバス事業者が乗り入れるバス停では、その効果が顕著に表れます。
運営効率化のメリット
バス停にデジタルサイネージを導入することで、日々の運営業務が大幅に効率化できます。特に情報更新や運行管理の面での改善が期待できます。
●管理業務の省力化
バス停での情報提供において、最も手間のかかる業務は時刻表の更新作業ですが、デジタルサイネージを導入すれば、時刻表のデータが自動で更新され、現地での貼り替え作業が不要になります。また、遠隔地からでも表示内容の確認や更新ができるので、巡回業務の負担も軽減され、スタッフは他の重要業務により多くの時間を割けるようになります。
さらに、運行情報の提供だけでなく、バスの利用方法や経路検索アプリの紹介、イベント情報、災害時の緊急情報なども即時に表示できるため、作業負担を軽減しながらも分かりやすい案内を行うことができます。
●運行情報の一元管理
デジタルサイネージを導入する場合、GTFSデータに対応したシステムであれば、運行情報を管理できます。路線バス事業者がシステム上でGTFSデータを一元管理することで、従来の手作業による更新や維持管理の負担を削減できます。また、GTFSに対応したシステムでは、更新情報がサイネージにリアルタイムで反映されるため、利用者へのタイムリーな情報提供を実現できます。
デジタルサイネージシステムの選び方
バス停にデジタルサイネージを導入する際は、設置環境や必要な機能を十分に考慮することが重要です。適切なシステムを選ぶことで、より効果的に運用できます。
設置環境に適しているか
バス停に設置するデジタルサイネージは、屋外で使用されることが多いため、屋内用とは異なる要件が求められます。以下のポイントをチェックしましょう。
・設置場所の環境条件
日照条件や天候の影響を考慮し、十分な防水・防塵性能と視認性を備えているか
・電源・通信環境
安定した電源供給と通信回線の確保が可能か
・メンテナンス性
定期的な保守点検や清掃作業が実施しやすい構造か
・設置スペース
既存のバス停に無理なく設置できるサイズと形状か
これらの要件を満たさないサイネージを選択してしまうと、表示品質の低下や機器の故障、維持管理の負担増加などの問題が発生する可能性があります。特に屋外設置型の場合は、耐久性や視認性が重要な選定ポイントとなります。
運用・保守体制は整っているか
効率的な運用を実現するため、以下の観点から運用・保守体制を検討します。
・情報更新の頻度
毎日の更新が必要か、定期的な更新で十分か
・運用体制
専任の管理者を置くか、他の業務と兼務で対応するか
・緊急時の対応
運行遅延や災害時の情報配信にどう対応するか
監視体制システムの稼働状況をどのように確認するか
必要な機能を見極めることで、無駄のない効率的なシステム選定が可能になります。
システムの更新や機能追加は簡単か
将来的な機能拡張や他システムとの連携を見据えて、以下の点を確認しましょう。
・データ形式 標準的なフォーマット(GTFS等)に対応しているか
・API連携 他システムとの柔軟な連携が可能か
・クラウド対応 遠隔での管理や将来的な機能拡張に対応できるか
システムの拡張性と互換性を事前に確認することで、将来的な機能追加や他システムとの連携がスムーズになり、長期的な運用コストの抑制にもつながります。
具体的な導入手順
バス停へのデジタルサイネージ導入を成功させるためには、計画的な準備と段階的な実施が重要です。ここでは、実際の導入プロセスを順を追って説明します。
事前準備と計画立案
導入プロジェクトを始める前に、以下の項目を明確にしましょう。
【事前に決めること】
導入の目的:運行情報の正確な提供か、業務効率化か、両方か
予算の範囲:初期費用とランニングコストの見積もり
導入スケジュール:工事開始から運用開始までの工程
関係者の役割:各担当者の責任範囲と連携方法
【実施すること】
現地調査:設置場所の環境確認
機器選定:要件に合った機器の選定
工事計画:電源・通信工事を含む施工計画の策定
運用計画:管理・保守体制の確立
これらの準備を入念に行うことで、導入後のトラブルを未然に防ぎ、スムーズに運用をスタートできます。
機器の選定
事前準備と計画が整ったら、実際に導入する機器の選定を行います。選定の際は、以下のポイントに注意して検討を進めましょう。
・画面サイズ
設置場所の広さや視認距離に適したサイズが選べているか
・輝度・コントラスト
日中の直射日光下でも十分な視認性が確保できているか
・耐久性
屋外用のものの場合、設置環境の温度変化や風雨に耐えられる構造になっているか
・消費電力
長期運用を考慮した電気代の試算ができているか
選定した機器が要件を満たしているか確認しながら検討することで、長期的な安定運用が可能になります。
まとめ
バス停へのデジタルサイネージ導入は、バスの運行情報をより分かりやすく提供できるようになるだけでなく、日々の運営の手間も大きく減らすことができます。情報更新が自動化され、遠隔で管理できるようになるため、利用者への正確な情報提供に加え、現場スタッフの負担軽減にもつながります。
ただし、導入を成功させるには、設置場所の環境チェックや、必要な機能の確認、段階的な導入手順など、多岐にわたる検討と準備が必要です。また、屋外のバス停では耐候性の高い機器を選ぶなど設置環境に合わせた適切な準備と、安定して運用できる体制を整えることが大切です。
システム選定においては、単に表示装置を導入するだけでなく、運行情報の配信の仕組みから、導入後のメンテナンスまでしっかりとサポートしてくれるパートナーを選ぶことをおすすめします。
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