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バス置き去りから子どもを守る!安全装置開発の現状とは

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2021年から2022年にかけて、保育所等の通園バスに園児が置き去りにされ、死亡するという事故が発生しました。事故の発生を受けて、2023年4月から送迎バスの置き去り防止を支援する安全装置の装備義務化が決定し、国土交通省は安全装置の開発促進、普及拡大を目指してガイドラインを策定しました。
本記事では、国土交通省が策定したガイドラインについて解説するとともに、全国各地で行われている安全装置の実証実験についても解説していきます。

置き去り防止を支援する安全装置の方式や要件

通園バスに園児が置き去りにされた主な原因としては、運転手や乗務員がバスに園児が残っていないか確認を行わなかったことや、降車時の人数確認をマニュアル化していなかったことなどがあります。
国土交通省では、学識経験者等を委員とするワーキンググループを設置し、これらのヒューマンエラーを補完する安全装置について、最低限満たすべき要件をガイドラインにまとめました。各メーカーからの申請に基づき、ガイドラインへの適合が確認された製品については内閣府がリストを公表しています。

置き去りを防止する装置は主に「降車時確認式」と「自動検知式」に大別されます。

降車時確認式

降車時確認式の装置は、警報により運転者へ車内の目視確認を促す方式です。要件の概要は下記のとおりです。

  • 送迎バスのエンジンを停止させると、車内に運転者などへ車内確認を促す警報を発する
  • 運転者などは車内を確認し子どもが置き去りにされてないか確認する
  • 車両後部に設置された押しボタンなどの装置を操作することで警報は解除される
  • 車内確認と装置の操作が行われず一定時間経過すると車外に警報を発する

この方式は運転者等が警報を解除する際に、車内の目視確認を促す効果が期待できます。しかし、車内確認を忘れたり怠ったりするケースも考えられることから、車外への警報を発することも要件としています。
この装置だけで車内の確認を強制することはできないので、送迎バス運行のマニュアルに車内の確認を盛り込むなどの取り組みも必要です。

自動検知式

自動検知式とは、カメラなどのセンサーで子どもの置き去りを検知する方式です。要件の概要は下記のとおりです。

  • 送迎バスのエンジンを停止させて一定時間経過すると、センサーが車内の検知を始める
  • 置き去りにされた子どもを検知すると車外に警報を発する

この方式は車内を確認したにもかかわらず、見つけづらい場所で子どもが寝ていた場合など、見落としのカバーに有効な方法です。
ただ、センサーはすべての乗員を完璧に検知できるわけではありません。あくまでも目視による確認作業の補助や支援を行う装置として人による確認も続けていく必要があります。

降車時確認式と自動検知式の違い(国土交通省HPより引用:https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001579451.pdf)

2つの方式に共通する要件

どちらか片方の装置のみを装備していた場合でもヒューマンエラーが補完できるように降車時確認式と自動検知式に共通する要件も定められています。

  • 運転者が確認を怠った場合などは速やかに車内警報を行い、15分以内に車外へも警報を行う。(自動検知式の場合は15分以内にセンサーを作動させる。)
  • 警報停止装置は子どもがいたずらできない位置に設置。
  • 十分な耐久性を有すること(-30℃~65℃への耐温性や耐震性、防水・防塵性など)。
  • 装置が故障したり電源を喪失した時は運転者等に対して通知を行う。

各地で行われている安全装置の実証実験

バス置き去り防止に向けて各地で安全装置の開発や実証実験が進んでいます。どのような取り組みが行われているのか見ていきましょう。

Wi-Fi電波を活用した実証実験(滋賀県)

滋賀県野洲市では2022年3月に幼稚園の送迎バスに園児が15分ほど取り残される事案が発生し、対策を検討していました。そこで、同市に事業所がある村田製作所がWi-Fiの電波を利用して車内に取り残された人を検知するシステムを開発していたことから、幼稚園のバスを使った実証実験を行いました。
実験ではバスの前方と後方にWi-Fi電波を送受信する小型の装置を設置し、市の職員がバスの中を歩いたり座席に座ったりすると、バスの外のスマートフォンには車内に人の動きを検知したことを示しました。
細かな動きや呼吸から人の存在を検知できるので、車内で子どもが寝てしまっていたり、カメラに映らない死角にも対応できるそうです。

スマートフォンアプリを使った実証実験(兵庫県)

兵庫県伊丹市とアイテック阪急阪神は、2022年12月にスマーフォンアプリを使った実証実験を行いました。この実験では、送迎バス内の降車確認業務を確実に実施できる仕組みを検証しました。
検証方法は2パターンあります。1つ目は子どもがバスから降りた後に、全座席に設置されているQRコードを読み取りながら車内に子どもが取り残されていないか確認するものです。QRコードを座席の下部に設置することで、座席の下に子どもが隠れていても見つけられるように工夫されています。全座席のQRコードを読み終えると、職員室にメール通知され、一定時間確認完了の作業が行われない場合も職員や職員室に通知することで二重にチェックすることが可能です。
2つ目の検証パターンは、園児一人ひとりの通園カバンなどに電波を発する機械をを入れるものです。子どもが降車したあとに職員がスマートフォンアプリで車内に電波が発せられていないか確認します。パターン1と同様に電波が残っていない場合は職員室に確認完了の通知がされ、未完了の場合も通知がされる仕組みになっています。確認を忘れてしまっても、改めて確認をさせる仕組みになっているのでヒューマンエラーの発生に対応できるということです。

AIカメラによる画像解析機能を活用した実証実験

保育園向けの業務システムを開発・運営する株式会社kids plusとAIカメラ「GAUDiEYE(ガウディアイ)」を提供する株式会社GAUSSは2022年12月に湘南幼児学園(神奈川県茅ケ崎市)で園児バス置き去り防止AIカメラの実証実験を開始しました。
車内カメラでは常に目視での監視が必要で、動体検知や人勧センサーでは通知が過剰となってしまうという課題がありますが、AIカメラは動体検知と人物検知を組み合わせ、園児の置き去り発生時のみ通知することが可能です。

実証実験のイメージ(株式会社GAUSSプレスリリースより引用,https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000033.000027358.html)

安全装置の開発は送迎バス置き去り防止に貢献!

2023年4月から全国の幼稚園や保育所、認定こども園などのバスに安全装置が義務付けられることから、見落としや確認忘れなどのヒューマンエラーを補完するためのシステムの開発が進められています。
しかし、置き去り事故防止のためには、まず降車時確認の徹底や確認方法のマニュアル化などが欠かせません。安全装置と目視での確認を合わせることで、子どもを置き去り事故から守ることが期待されます。

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