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「ミライの種」 JR九州 赤木執行役員熊本支社長インタビュー 前編

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各分野における経営のプロフェッショナルたちが考える未来への戦略、未来への投資、そして未来像とは?過去から現在、そして未来の花咲くカギとなる「種」とはどんな姿なのか?その「歩み」を辿りながら「ミライの種」に迫ります。

初のインタビューとしてお話をお伺いするのは、九州旅客鉄道株式会社における初の女性部長、初の女性グループ会社社長への抜擢、2019年6月には熊本支社長就任と躍進を続ける赤木由美(あかぎ ゆみ)さん。女性ならではの目線で様々な事業を拡大・拡張させてきた軌跡から、震災や豪雨などの復興に励む熊本の支社長として奮闘する日々、企業人、一人の女性として、その目に映るミライの姿をお話しいただきます。

「熊本のミライの種」

2016年の熊本地震、2018年の熊本豪雨、さらに2019年にも断続的な豪雨が続く熊本県。いま熊本県内の状況はいかがでしょうか。

「3年半前の熊本地震発生当時、人事担当であった私は、お客さまと社員の安否確認、情報収集対応に追われていました。震災も大雨も甚大な被害でしたし、つくづく自然の前では無力であることを感じざるを得ない、というのが率直な感想です。一方で、社員の強さ、会社の結束力を強く感じるのも災害時です。一カ月前、熊本支社長着任直後、断続的な強い雨に見舞われました。着任直後であっても、一度災害が発生すれば陣頭指揮をとらなければならない。各担当の意見を聞く、誰が何をすべきか瞬時に判断する、豪雨が明けた時、社員が連携し結束力が高まった事でチーム熊本が結成できた、と強く感じました」

広い範囲で数日間続いた豪雨、具体的にどんな対応をされたのですか。

「新幹線が運転中止となったため、急遽、熊本駅で新幹線車両をホテルに仕立て、お客さまに車内で一夜を過ごしていただきました。その際、管理職、一般社員などの役職は関係なく、お客さまのご案内、毛布や食事、飲み物をお配りするなど我々が出来る対応を明け方まで一丸となって行いました。その時に改めて実感したのは、本当に一人でできる仕事などない、ということです。自然災害は避けられない、だからこそ、有事に際してはチームが心を一つにすることが大切であり、それとともに我々JR九州と自治体、国との連携、人と人との支援の輪を強くしていくことが重要である、この数年そう感じています」

自然災害での対応力、結束力の重要性は、企業におけるインシデントやトラブル発生時にも共通していると思います。今回の豪雨では、誰が指揮、判断を下し、どのような指揮系統を組み立てていったのでしょうか。

「お客さま対応は営業、点検や災害復旧は工務系統、運行管理や乗務員の手配などは運輸、支社の中にはその全ての系統が集まっています。トップを司るのが支社長ですから、各系統のプロたちから迅速な情報収集を進めました。いかに対処すべきか決める上で、みんなが知識や経験値を基にどうすることが最良だと考えているか、その話を聞いていけば自ずと答えは見えてくるという確信はありました。当然、各系統はそれぞれの立場があるので、全てが合意するわけではありません。何かを判断しなければならない時、「集まるよ!」と号令するとすぐに支社長前のテーブルに全系統が集まり直接意見を交わす、九州全体で影響が出ていたので本社とも連携をしながら、時間毎に会議を行い判断し、情報共有する。お互いが寄り添いながら解を見つけていくということを意識しながら逐次進めていきました」

本社や遠隔地との会議や情報共有はどのような方法で行ったのでしょうか。

「支社メンバーは支社内で、本社や他部門とは Web会議で行います。今回の大雨災害では、社外の気象予報のプロにも入っていただき、今後の雨の進路予測や大気の流れなどを九州地図上に投影しながら対応策を練っていました」

今後どのようなことに取り組んでいくことが熊本のミライに繋がっていくと思われますか。

「鉄道の大災害は土砂流入や築堤崩壊など様々です。お客さまの安全が最優先であることは言わずもがなですが、人による点検確認が中心であるため、社員の安全確保も非常に大切です。最近ではいかに安全に、かつ効率的に検査や点検を行うかを勉強していてドローンによる斜面状況点検、車両に検査機器を乗せた線路点検などの実証実験や実用も始めています。収集したデータや過去の蓄積データによるAI判断の活用も検討していければ大規模災害の危険回避を予知でき、災害被害を最小限に食い止められる可能性が高まっていきます。安心して暮らせる熊本となるように引き続き取り組んでまいります」

「街のミライの種」

現在熊本市の商業中心街は、駅前ではなく、駅から離れた桜町と呼ばれるエリアだそうですね。商業中心地が一拠点に集中している現状をどのように感じていますか?

「タクシーに乗った際、普段行先は住所やエリア名を告げると思いますが、熊本在住の人々は「街に行ってください」と告げ、運転手も当たり前のように理解する事象には驚きました。要は街が一つしかないんです。今年の2月に熊本県、熊本市、JR九州による熊本駅舎を拠点とする新たなまちづくりを発表しました。JR九州は地域を元気にすることを標榜している会社ですので、駅舎のリニューアルだけではなく、駅ビルやマンション、オフィスビルの建設により賑わいを創出し、それを都市部全体に広げていく、いわば面でのまちづくりをしていきたいと思っています。」

面でまちづくりを広げていくにはどのような努力が必要でしょうか。

「弊社が手掛けた大分や鹿児島におけるまちづくりでは、開発前から地元の商店街の方々や地域の皆様と連携し、様々な意見交換を繰り返したことで、今でも良好な関係が構築されています。熊本も同様に、自治体や地元商店街の皆様と一緒になってまちづくりに取り組んでいくこと事ができると思っております。熊本支社長着任後、いろんな業種の方にご挨拶する度に「楽しみですね」と仰っていただける。期待していただけていることが何よりも嬉しいですね」

今後、熊本市のまちづくりのミライをどのように想像されていますか?

「いまはモノが売れない時代。色んな意味でワクワクするような体験をお客さまに提供できるようなまちづくりを目指したいと考えています。前職の営業部時代、推し進めていたのは観光を中心としたデザイン&ストーリー列車(D&S列車)のプロモーションです。その土地や地域にしかないオリジナルストーリーを注入した列車を運行し、お客さまへのおもてなしを地元の方と一緒に行うこと事で、その線区を走る列車を地元の方々が自分たちの列車だと愛着を持ってくださるんです。沿線に出て手を振ってくださったり、その土地のお米を活用した炊き込みご飯を列車で提供したいというアイデアなど沢山いただきます。このような取り組みが地域の活性化に繋がっているように感じます。まちづくりは都市部に限ったことではなく、街々のありようでどの地域でも十分実現出来るんです。食事や体感型のように、その場に行かねば体験できないことを提供することで可能性はあると考えています」

後編では、「人が創り出すミライの種」「自身の描くミライの種」について迫ります。


赤木由美
早稲田大学第一文学部卒業後、1991年九州旅客鉄道株式会社に入社。広報や営業、経営企画部門を担当し、2004年、九州新幹線部分開業の時にはプロモーションを手掛ける。2012年3月に初の女性部長になり、同年6月、JR九州ファーストフーズ株式会社の代表取締役社長に就任。JR九州グループで初の女性社長に抜擢された。2014年7月、退任に伴い九州旅客鉄道株式会社総務部担当部長、人事部長、鉄道事業本部サービス部長兼営業部長を歴任。2018年6月より女性初の執行役員に就任。
執行役員・熊本支社長赤木由美。

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