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「ミライの種」ゼンリン 竹川執行役員兼IoT事業本部本部長インタビュー 前編 

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各分野における経営のプロフェッショナルたちが考える未来への戦略、未来への投資、そして未来像とは?過去から現在、そして未来の花咲くカギとなる「種」とはどんな姿なのか?その「歩み」を辿りながら「ミライの種」に迫ります。

第6回となる「ミライの種」。今回、お話を伺うのは、ゼンリンの執行役員兼IoT事業本部本部長 竹川 道郎(たけがわ みちお)さんです。地図の最大手企業であるゼンリンは、今、いわゆる「地図」を発展させ、自動運転やドローンの自律飛行になくてはならない地図情報を開発、提供しています。そんなゼンリンで自動運転支援への地図の必要性を自動車業界内に訴求するなど、業界のパイオニア的存在である竹川さんにIoT技術や社会の変化に応じた「地図」の未来について、お話しいただきました。

「地図のミライの種」

貴社は、地図の業界最大手でいらっしゃいます。地図というと紙のイメージがありますが、IT化で進化してきた部分はありますか。

「デジタルやITの進化で地図はどんどん発展してきています。ゼンリンでは今、地図というか、位置情報を生成していくシステムに大きく移管していっています。いままでの地図というのは、周りの情報と地図の中の情報を一致させて、人間が理解しやすいように、現実世界をデフォルメして、加工したものでした。地図というのは非常に長い歴史があります。それこそ伊能忠敬が歩いて日本地図を作っていた頃よりも前。実は地図の歴史は文字よりも古いんです。ちなみにゼンリンは、1948年の創業なんですけれども、最初は観光冊子から創業したんです。大分の別府で、創業者が何か新しい事業を立ち上げようということで発刊した観光ガイドの付録につけた地図からはじまりました。この詳細な地図というのがすごく好評で、それが現在の『住宅地図』といわれる、建物一軒一軒の情報を細かく記載した地図の始まりなんですよね」

観光ニーズから地図が生まれたんですね。

「はい。道路・防災・観光など、利用目的に応じた特定の主題について詳しく表現した地図のことを主題図というんですけど、地図は、目的があって初めて地図になります。だから、観光のために分かりやすく案内したいだとか、お客さんを送客、集客したいとか、そういう目的ために最適化された現実世界のデフォルメ空間の表現の一つの手法が地図なんです。そういう地図の概念から始まって、住宅地図を発刊して全国に広がっていった。これがゼンリンの歴史なんですけど、1980年代に大きな転換期があったんです」

大きな転換とはどんなものですか。

「地図って、昔は職人さんの手書きだったんですけど、そういう職人さんが高齢化したことや、紙での保存による焼失のリスクもありました。ちょうど1980年代は、パソコンの普及の兆しが見え始めた時代。そこで、ゼンリンは1984年にデジタル化に大きく舵を切りました。世界で初めてデジタル地図を作ったんです。それが大転換になりました。デジタルにすることによって応用できる幅が大きく広がってきたんです」

住宅地図制作を自動化したころの様子

例えば、どういったものに応用してこられたのでしょうか。

「顕著な例でいうと、ナビゲーションです。今まで人が紙の地図を読んでいたのが、ナビする、つまりアプリケーションが人を案内するように発展してきたんです。徐々にパソコン、インターネットが普及するにつれて、地図を人が読むだけでなく、人がより理解しやすいように機械が地図を使ってナビゲーションするというイノベーションが起こりました。そして、地図は出版されるだけでなく、配信される、つまりオンライン上で閲覧できるようになり、今やパソコンだけでなく、スマートフォンでいつでも自分の位置情報が分かるようになりました。用途はそんなに変わってないんですけど、デバイスであるとかシステムであるとか、地図を表現する媒体がどんどん発展していったんです。ゼンリンも、1980年代に住宅地図をデータベース化したことで、紙の中に一緒くたに表現していたいろいろな情報を、その情報の種類に応じて分けて管理することができるようになりました。GIS(※1)というんですけど、情報と情報をいろいろ組み合わせて分析したり管理したりっていう新たな用途も生まれてきました。ゼンリンはそういうところでいうと、地図をデジタル化し、データベースとして管理できるように独自のシステムを開発して時代の流れに乗っていったことと、地図を載せる媒体の変化や、利用用途によって最適化するということで今まで事業を大きくしてきました」

では、これからの2020年代の地図はどうなっていくとお考えですか。

「地図の第一の変革は先ほど言ったデジタル化っていうところでしたが、2020年代は、さらに大きな変革があると考えています。それは、人が理解するための地図からAIやシステムが理解するための位置情報データベースになってきているという変化です。例えば、自動運転では、カメラやLiDAR(※2)などを使って外部環境を認識して、情報を集めます。その集めた情報は、空間情報そのものなんですよね。そこに、例えば『これは道路だ』、『これは白線だ』、『これはガードレールだ』、『これは信号だ』といった具合で意味付けをしていく。自動運転車は実際に走りながら、カメラやセンサーで拾った情報と、先ほど申し上げたような手順で作り上げた地図情報を参照し合うことによって距離を逆算し、自分の位置を判断します。これはローカリゼーションというんですが、システムが、今自分がどこにいるのかっていうのを参照するために不可欠な仕組みなんです。よく考えると、人間がこれまで頭の中でやってきたことをシステムが代替しているだけなんですけど、そういう利用用途になってきたんですね。地図データには、これ以外にも二つ大きな役割があって、一つは、これも人間のやっていることと同じですけど、運転していて知っている場所だと、大体先読みしてどの道を通るか判断して車線変更とかをするんですよね。だからすいすい走れます。先読みというのは、センサーがどんなに高度化しても見える範囲しか情報を取得することができないので、地図情報を活用する必要があります。もう一つは、現実世界は日々動いているので、それを自動運転車に搭載しているカメラやセンサーから得た情報だけで正しく認識するのはすごく難しいんです。例えば、暗くて大雨がふっている場合、信号の認識がうまくできなかったりするかもしれません。人間が見たら分かる情報を、あらかじめ地図情報があって『ここが信号だ』って分かっていると、車に搭載したカメラやセンサーがそれを70パーセントしか信号と認知できなくても、地図上にもあるからこれは間違いなく信号だと判断することができます。認知の確度を上げるということです」

位置情報が活用され、さらに新しい価値が生まれていくということでしょうか。

「道路や建物など、現実世界にあるものを空間地図にしていって、空間認知に活用していく。こんな仕組みが今後どんどん増えてきます。今は自動運転の話をしましたけど、いろんなところにカメラやセンサーが付いて、情報を取れる仕組みができて、その情報がインターネット経由でどんどん集まってきます。それらに位置情報を付けると、場所が分かり、それぞれの情報に対して意味付けができます。そうすることで、ダイナミックな情報が位置情報として機能するようになっていきます。これがIoT時代のデータベースの発展型です。なので地図というよりも位置情報データベースというものになってきているんですよね。位置情報にIoTの技術でセンサーが取ってきたものが重畳されていくと、人の動きや車の動きが再現できるようになってくるんです」

自動運転向けの高精度3次元地図

そう考えると、地図の概念もどんどん変わっているんですね。

「そうですね。IoTの世界だと、地図はいろんな情報やセンサーが捉えているものを共有できれば、この先の渋滞情報みたいなことも分かるので、もしかしたら未来の予測もやりやすいのかもしれないし、過去の統計も取りやすい。その中で人々の生活が豊かになるようなサービスだとか、新たな活動がどんどん生まれてくるんだろうなと考えています」

すごいですね。そう考えていくと、地図はインフラそのものなんですね。

「そうですね。ゼンリンの考え方の軸は昔も今も一緒です。昔から整備している住宅地図は、民間の事業者さんはもちろん、自治体や、警察、消防、ガス、水道のようなインフラ設備の管理などいわゆる社会基盤とか生活基盤として使っていただいているんです。IoTの社会になってくると、デジタル基盤はどんどん進化していく。で、いろんな情報と融合していく。このいわゆる位置情報基盤のようなものが、新しいインフラになってくるんです。そういうインフラ部分を担っていくのがゼンリンだと考えています」

後編では「ゼンリンのミライの種」、「グループのミライの種」について迫ります。


竹川 道郎
1996年に株式会社ゼンリンに入社。以来、カーナビゲーション向け地図データベース・テレマティクスサービスの企画営業を担当し、2012年ITS営業二部部長を務める。2016年ADAS事業推進室室長として自動運転に向けた高精度3D地図のプロジェクトを推進。2018年から現職の執行役員兼IoT事業本部本部長として、ドローン事業、MaaS・位置情報ソリューションなどに関する事業を推進している。

(※1)地理情報システム。地理的位置を手がかりに、位置に関する情報を持ったデータ(空間データ)を総合的に管理・加工し、視覚的に表示し、高度な分析や迅速な判断を可能にする技術。
(※2)Light Detection and Rangingの略。レーザー光を走査しながら対象物に照射してその散乱や反射光を観測することで、対象物までの距離を計測したり対象物の性質を特定したりする光センサー技術のこと。

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