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オンライン診療で変わる医薬品医療機器等法の改正

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この記事では、より効率的なオンライン診療を考える医療関係者・オンライン診療用の機器販売等に携わる業者向けに、オンライン診療に関わる法改正について触れています。

2019年3月に、医薬品医療機器等法の改正案、すなわち薬機法改正案が国会に提出されたことを受けて、オンライン診療の普及を進めようという動きが活発化しています。薬機法改正案では病院から遠く離れた地域に薬を届けることを想定し、遠隔服薬指導の規定も追加されています。

この動き自体は、日本の医療分野における大きな発展と言えますが、現状では不適切診療も頻発しています。厚生労働省は2018年3月に「オンライン診療の適切な実施に関する指針」を公表していますが、運用側の理解が伴わず、結果的に指針から離れた診療を行っている例が数多く確認されている為、法改正により今後どのような改善がみられるのか注目を集めています。

改正と不適切診療の間にあるもの

まずは、薬機法改正の趣旨とその概要、背景にある不適切診療について触れていきます。そもそも、薬機法改正に至ったその趣旨は、以下のようなものでした。

  • 国民のニーズに応える優れた医薬品、医療機器等をより安全・迅速・効率的に提供する
  • 住み慣れた地域で患者が安心して医薬品を使うことができる環境を整備するため、制度の見直しを行う

より具体的に説明すると、地方、とりわけ離島や僻地においてスムーズに診療を行えるよう、オンライン診療に関する問題点を改善・整備しようというのが狙いでした。しかし、医療の効率化と精度を両立させるのは難しいのか、いくつか不適切事例が報告されるに至りました。

  • 初診の患者に対し、オンライン診療を実施した
  • 直接の対面診療を組み合わせることなく、オンライン診療のみで診療を完結した
  • チャット機能のみを用いて診療行為を行った

なお、これらの事項は、指針に規定されている例外事由に該当していない場合について報告されたものです。
上記の件については、厚生労働省が2018年12月26日付で各都道府県に通知を発出する事態にまで発展しました。

施行に関する今後のスケジュールについて

このような経緯から2019年3月に提出された法律案の中では、各改正の内容につき、基本的には「公布の日から起算して『1年』を超えない範囲内において政令で定める日」を施行期日に定めています。
しかし、以下の内容については、それぞれ期日が2年〜3年と定められています。

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起算2年のもの

1.『医薬品、医療機器等をより安全・迅速・効率的に提供するための開発から市販後までの制度改善』における

  • 最終的な製品の有効性、安全性に影響を及ぼさない医薬品等の製造方法等の変更について、事前に厚生労働大臣が確認した計画に沿って変更する場合に、承認制から届出制に見直し
  • 適正使用の最新情報を医療現場に速やかに提供するため、添付文書の電子的な方法による提供の原則化

2.『住み慣れた地域で患者が安心して医薬品を使うことができるようにするための薬剤師・薬局のあり方の見直し』における

  • 患者自身が自分に適した薬局を選択できるよう、機能別の薬局の知事認定制度(名称独占)を導入

※①入退院時や在宅医療に他医療提供施設と連携して対応できる薬局(地域連携薬局)
※②がん等の専門的な薬学管理に他医療提供施設と連携して対応できる薬局(専門医療機関連携薬局)

3.『信頼確保のための法令遵守体制等の整備』における

  • 許可等業者に対する法令遵守体制の整備(業務監督体制の整備、経営陣と現場責任者の責任の明確化等)の義務付け
  • 虚偽、誇大広告による医薬品等の販売に対する課徴金制度の創設

起算3年のもの

1.『医薬品、医療機器等をより安全・迅速・効率的に提供するための開発から市販後までの制度改善』における

  • トレーサビリティ向上のため、医薬品等の包装等へのバーコード等の表示の義務付け

※参考URL:https://www.mhlw.go.jp/content/000491532.pdf

施行までに時間がかかる部分の多くは、技術面よりも制度面での整備を目的とした事項のようです。逆に言えば、技術革新に関する法律案等については、比較的早期での施行を考えているものと推察されます。医療関係者にとっては、遠隔医療に関連する新技術の導入・インフラ整備について、取り急ぎ必要なものを揃えられるかどうかが鍵になりそうです。

「遠隔健康医療相談」から紐解くオンライン診療へのニーズ

医療関係者等が遠隔医療に関する分野に注力すべき理由の一つとして、今回の法改正における「テレビ電話等による遠隔服薬指導に関する規定」の追加が挙げられます。
具体的な内容としては、初回の診療は原則「対面での診療を行う」こと、映像及び音声の送受信時は「相手の状態を相互に認識しながら通話をする」ことなど、患者の顔色・体調等を画面上から診断できる環境での指導が求められます。

遠隔医療については、初回は対面での診療とする原則があり、オンライン診療からの初診が問題となる案件は報告されているものの、日本ではそのような状況を単純に非難できない現状があります。病院に足を運ぶのが難しい人にとっては、タブレット越しに相談できる遠隔健康医療相談など、病院に通わず医療サービスを受けられる環境が整うのは嬉しいものです。
これは、都心部よりも地方で特に顕著な傾向と言えますが、医師不足・医療資源の不足が問題となる地域では、人口を問わずオンライン診療が死活問題になるケースも出てくるでしょう。

実証実験が進んでいる「ドローンでの無人宅配」などを応用し、オンラインでの指導・薬の配達の無人化などが実現すれば、患者にとっては遠隔服薬という選択肢が増えることになります。
将来的には、住民が集まる診療所や公民館などにデジタルサイネージを配置し、AIによる医療知識を伴わない健康相談・オンライン診療の予約・タブレットの配布などを行う体制を構築することで、ITに関する知識に乏しい人でも機器の取り扱いに難儀しない環境を整えることができるかもしれません。
しかし、服薬については「用法・用量」を誤ると、最悪の場合は死に至るリスクもあります。施行後は、服薬により症状が早期に改善する病気について、まず何よりも「安全に」必要な薬を早急に提供できる体制の構築が期待されます。

まとめ

オンライン診療・遠隔診療については、政府が主導する「Society5.0」というコンセプトのもと、新しい試みが次々に行われています。
薬機法の改正が、新しい試みのバックアップにつながるものと期待される反面、施行までに時間がかかる分野もあります。

地方を中心とした医療資源の不足・慢性的な医師不足という現状を打破するために、今回の法改正が医療関係者等にどう影響を及ぼすのか、今後の動きを注視する必要がありそうです。

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