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「ミライの種」JR九州 森取締役常務執行役員インタビュー 後編

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各分野における経営のプロフェッショナルたちが考える未来への戦略、未来への投資、そして未来像とは?過去から現在、そして未来の花咲くカギとなる「種」とはどんな姿なのか?その「歩み」を辿りながら「ミライの種」に迫ります。

前編に引き続きお話をお伺いするのは、九州旅客鉄道株式会社取締役常務執行役員として最高財務責任者、総合企画本部副本部長・経営企画部長、IT推進部・財務部担当と多くを兼任する森 亨弘(もり としひろ)さん。鉄道事業本部時にデータマーケティングを活用した鉄道のネット販売を強化し、経営企画部ではそこで得られる顧客データを基にJR九州グループCRM戦略を推進するためポイントプログラムを統合。AIやIoT、ビッグデータ活用などJR九州グループのデジタルトランスフォーメーションを積極的に推進するなどJR九州の変革期を支えています。現状と未来に向けた取り組みについてお聞きしました。

「コラボが創るミライの種」

JR九州は様々な会社と積極的にコラボされていますね。現在取り組んでいる協業案件や、今後の協業戦略など、お話しできる範囲でお聞かせください。

「我々が取り組むのはトップラインを増やすかコストダウンするかの2つです。このどちらかに繋がることが期待できる会社と協業を進めています。また人手不足が深刻化していますので、省人化に向けてベンチャー企業とドローンを使った実証実験や無人レジのようなIoTを活用した取り組みも出てくると思います」

コラボする上で気を付けている事はあるのでしょうか。

「相手企業の規模感に偏りが出ないように気を付けています。省力化、省人化、コストダウンの面では、重厚長大産業のオールドファッション、レガシーな会社は長年積み重ねてきた経験や知恵を大事にしているし、ベンチャー精神をもつ若手企業も突き抜け感がある。どちらの良さも理解しているので、一方に振れ過ぎないよう考慮しています。トップラインを伸ばすための協業は企業だけではなく、観光からまちづくり、地域住民や自治体など広範囲なので、ある程度の期間を決めて幅広くコラボしています」

様々な協業案件のお話が来ると思いますが、取捨選択はどのように判断されているのですか。

「確かに様々なお話をいただきます。だからこそ頭の中で基軸をしっかり持たないと混乱してしまいます。どなたかの紹介案件などはあまりうまくいかない傾向にあるし、名刺の枚数だけ増えてなかなか具体的な話にならない場合も多い。時間が経過しても良い判断に繋がらないので、一度の面談で60~70%は決められるよう、相手企業のスピード感は重要視しています。ですから、来るのを待つのではなく、私から会いに行くこともあります。以前、金融機関の方に勢いのあるベンチャー企業の方々を集めてもらい、2,3日かけて1企業30分から1時間プレゼンしてもらいました。実はそこでお会いしたのがWill Smartさんです。技術力もスピード感もある企業だとすぐに感じ、出資を決めました」

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「ビジネスにおけるミライの種」

今後テクノロジーを活用した取り組みはどのように進んでいきますか。

「弊社のキャッシュフローの源泉は、4割が鉄道関連、4割が駅ビル・ホテル関連です。ですから、簡単に言うとこの2つさえ間違わなければ、成長し続けていけると思っています。ただ、鉄道関連では、少子高齢化の中で定期のお客さまが減少していくという恐怖と戦っていかねばなりません。だからこそ、収入が落ちても成り立つようにテクノロジーを活用したコストダウンに取り組んでいます。数年前から、線区(※1)単位でカメラやセンサーを設置し無人化への対応を進めたり、ドアの横にカメラとセンサーを設置しワンマン列車(※2)でも運転士が全部見られるようにしたりといった、安全を担保しながらテクノロジーでコストダウンできる取り組みを進めています。今後はMaaS領域でモビリティ展開を始めていかねばならないと思っています」

今後JR九州は、九州の中で鉄道事業だけではなく多面的な関わりをしていくのでしょうか。

「2030年にJR九州管轄の駅の2km周辺人口の変化について調べました。約570の駅がある中で人口増となるのは50駅足らず、それ以外は人口減となっていきます。今後は、福岡市のような人口増が見込まれる場所では、駅ビルを活性化したり、マンションを建設したり、都市としての利便性を高めていくことになると思います。一方、人口が減少する地方では、D&S(デザイン&ストーリー)列車(※3)なども活用しながら観光地を発掘していくことが必要でしょう。地域の皆様とコミュニケーションを取りながらバランスを図っていくことが重要です。とにかく社内では「さっさとやる」「断定する」「定量化する」といったように、しっかりと定量化し判断していこうと思います。これが、ひいては九州全体を盛り立てることに繋がると嬉しい限りです」

最後に、あなたのミライの種とは何ですか。

「スピードを持って取り組むことです」
スピードをもってやれば、たとえ間違っていたとしても、修正することができます。正しいことを速くやりましょう!


森 亨弘
1991年九州旅客鉄道株式会社入社、経営企画部・財務部に従事後、2009年40歳でグループ会社のドラッグイレブン株式会社(現JR九州ドラッグイレブン株式会社)代表取締役社長に就任。その後、財務部長・鉄道事業本部営業部長・旅行事業本部長を経て、現在は取締役常務執行役員として最高財務責任者、総合企画本部副本部長・経営企画部長、IT推進部・財務部担当と幅広く担当。

(※1)鉄道やバスの路線のある一定の区間のこと。
(※2)乗務員が運転士一人だけの列車のこと。通常の列車には運転士と車掌が乗務している。
(※3)JR九州が運行する観光列車。特別なデザインと運行する地域に基づくオリジナルストーリーを注入した「デザインと物語のある列車」のこと。

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