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ピーマンの自動収穫ロボットで農業の人手不足解消に期待

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日本は少子高齢化による人口減少にともない、様々な分野で人手不足が問題となっています。特に農業の分野は深刻な人手不足といわれており、農業従事者の平均年齢も67才を超えています。
その農業分野での人手不足の問題の解決に今後期待されるのが、ロボット、AI、IoTなど先端技術を使ったスマート農業です。
今回はピーマンの収穫を手助けしてくれるAIロボットを取り上げます。

ミライコラボでは、 宮崎県で、ピーマンなどの自動収穫ロボットを製作している、AGRIST株式会社、取締役、秦裕貴さんにインタビューを行いました。

AGRIST株式会社、取締役、秦裕貴さん

人手不足解消に期待のピーマン自動収穫ロボットとは

ピーマン自動収穫ロボットを開発した背景を教えてください
秦さん:弊社がある、宮崎県新富町は全国で第2位のピーマンの生産地にあります。しかし、地元の農家さんたちに話を聞くと、収穫する人手がいないため農場の規模を拡大したくてもできなかったり、後継者がいなかったりと、深刻な人手不足への危機感がありました。
新富町では農家さんが毎月集まって、農業経営のノウハウをシェアする“儲かる農業研究会”という勉強会があるのですが、そこで人手不足を補うには、絶対に収穫ロボットが必要だと言う意見があり、その声を受けてピーマンの自動収穫ロボット開発がスタートしました。

ロボットはピーマンの収穫工程のどんな作業を担っていますか
秦さん:ロボットがハウス内を巡回するように移動しながら、収穫に適した大きさのピーマンを認識して、アームを伸ばしてピーマンを切り落とします。
またピーマン特有の “2度切り”と呼ばれる茎を短く切り詰める工程までロボットで実現しています。収穫したピーマンはロボット内のBOXに溜め、一定量に達するとあらかじめ地面に置いておいたコンテナに放出します。ロボットはこの一連の動作を繰り返してピーマンの収穫作業を行います。

ピーマン自動収穫ロボットの特徴は何ですか
秦さん:AGRISTのピーマン自動収穫ロボットL(エル)の最大の特徴は、“吊り下げ式”で移動するという点です。ビニールハウス内の通路の頭上にワイヤーを張り、そのワイヤーに吊り下げたロボットがロープウェイのように移動しながらピーマンを自動で収穫していきます。

ワイヤーに吊り下げたロボット

農場の地面には剪定した枝葉が落ちていたり、ハウス内を温めるための送風ダクトなどが置かれていたりするため、車輪やキャタピラで地上を走行することは実運用上、難しいです。そうした農場の環境をふまえて“いかに止まらずに安定して移動するか”というのは無人で稼働することが前提の農業ロボットにおいて共通の課題だと思います。吊り下げ方式はこの課題を解決する有効かつ強力なアプローチだと考えています。

ハウス内の剪定した枝葉やぬかるんだ地面

どのように収穫するピーマンを見分けているのでしょうか
秦さん:AIの画像認識の技術を活用しています。ロボットのアームの根本付近にカメラを搭載しているので、そのカメラで撮影した映像から機械学習の技術を使ってピーマンをリアルタイムに認識して収穫時期のピーマンを見極めます。
また、アームの先端に搭載されている収穫ハンドにも工夫があります。
ピーマンの収穫において重要な、茎を短く切り詰める”2度切り”機能を搭載しています。
この2度切りができなければロボットは導入しないと言う農家さんもいるほど重要な機能です。

2度切りしたピーマンの茎

一日にどのくらい作業ができるのでしょうか
秦さん:ロボットは充電式になっていて、1回の充電で4〜6時間程、バッテリを交換することで1日12時間ほど稼働できるため、ロボット1台で1日あたり20kg程度のピーマンを収穫できる想定です。
ロボットでは人よりも速く収穫することはできませんが、その分12時間休憩なしで収穫し続けることができます。また夏場の高温時でも、週に7日間稼働することも可能です。こういった点からコスト面で見ても、人を1人雇用するのと同等の費用対効果が見込めると想定しています。

実証実験から見えた効果や課題について教えてください
秦さん:実証実験を通して、ロボットが毎日コンスタントに一定量を収穫してくれることによって、作物への負荷が減って元気になり、収穫量が上がるという傾向の結果が得られました。
課題としては、農家さんによってビニールハウスの形状や作物の育て方、農業の経営方針が少しずつ異なり、我々の収穫ロボットの性能や使い方がマッチしない場合があると言うことが分かりました。また、作物の中には切ってはならない部分があり、そこを切らないようにするという点は今後の技術的な課題です。

今後の展開について教えてください
秦さん:AGRISTの方針としては、早い段階から現場の農家さんに使っていただいてフィードバックを得ながらどんどん改良していきたいと考えています。できるだけ多くの方に使っていただきたいので、今後はお試しで導入いただける農家さんをより増やし、より良い製品にブラッシュアップしていきたいと思います。

まとめ

日本では人口の減少や少子高齢化で、今後各分野で労働人口の確保が急務になると考えられています。
中でも、農業などの一次産業の分野では、労働者の高齢化が大きな問題になっています。今回紹介した、収穫ロボットが本格的に導入されれば、農家の生産性が向上し、安定的に農作物を生産できるだけでなく、消費する我々にとっても供給が安定されるので、生産者と消費者の双方にとって喜ばしいことになるのではないでしょうか。
今後も、生産者をサポートするロボットの開発に注目したいと思います。

【取材先概要】
AGRIST株式会社
■所在地:宮崎県児湯郡新富町富田東1丁目47番地1

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