
鉄道マンが歩んだ観光キャリア〜“オール東北”が切り拓く新たな可能性〜
鉄道マンが歩んだ観光キャリア〜“オール東北”が切り拓く新たな可能性〜
| 第32回のゲストは、一般社団法人東北観光推進機構・専務理事の渡辺厚さん(前編)。JR東日本で旅行事業に携わり、JNTO(日本政府観光局)での地域連携の経験を経て、現在は東北観光推進機構で「オール東北」の誘客拡大に取り組む渡辺さん。鉄道の現場から旅行、そして国の観光振興までを歩んできたキャリアと、官民連携で東北の観光を盛り上げる仕組み、そしてまだ知られていない東北の魅力に迫ります。 |
- 番組名
- 『まちと移動のミライコラボ』全文書き起こし
- 放送日
- 2026年8月16日
- ゲスト
- 渡辺 厚 氏(一般社団法人東北観光推進機構 専務理事)
目次
【オープニング〜鉄道マンとして歩んだ観光キャリア〜】
石井:一般社団法人東北観光推進機構 専務理事の渡辺厚さんです。渡辺さん、本日はよろしくお願いいたします。
渡辺:はい、よろしくお願いいたします。
石井:まずは渡辺さんご自身のキャリアについて簡単に伺えればと思います。渡辺さんは長くJR東日本でお仕事をされていて、旅行事業や観光戦略にも携わってこられたと伺っています。鉄道の現場から旅行、そして国の観光推進へと、今取り組みの分野がどんどん広がっていらっしゃる状況だと思いますが、これまでのキャリアについて教えていただけますか。
渡辺:ありがとうございます。私はちょうど今から35年前、1991年にJR東日本に入社しました。ご縁があって旅行事業に携わらせていただき、一貫して旅行業や観光の仕事をさせていただいてきました。その後、2018年からJNTO(日本政府観光局)で仕事をするチャンスに恵まれました。ちょうどその頃、JNTOでもこれからインバウンドのお客様を地方に誘客していくという問題意識があり、JNTOは海外26の拠点を持っているのですが、なかなか地方の自治体やDMOなど関係機関との連携がまだまだ手薄なところがありました。私は新設された地域連携部の部長を務めさせていただき、JNTOと地域の皆さんとの架け橋のような仕事をさせていただきました。その後、コロナの時に一度JR東日本に戻りましたが、3年前から現職の東北観光推進機構で仕事をしており、今度は東北を主語にして、世界から、そして日本全国から東北への誘客拡大という仕事をさせていただいているところです。
石井:そうですか。ありがとうございます。
【東北観光推進機構の成り立ちと「オール東北」】
石井:次に、東北観光推進機構がどういう組織なのか伺いたいと思います。せっかくなので東北の観光の魅力もふんだんに伺いたいのですが、まずは機構の成り立ちと、どういった方々が参加されている団体なのか教えていただけますか。
渡辺:東北観光推進機構は、東北6県と新潟県をマネジメントエリアにした、行政と地元の経済界・民間事業者、まさに官民連携での東北の観光振興に取り組む一般社団法人です。主な事業内容は、東北広域でのインバウンド誘客の拡大、高付加価値化、そしてデジタルマーケティングの推進です。私自身のキーワードは「オール東北」と「ワン東北」の2つだと思っています。特にこれからの施策の中では、欧米豪を中心としたロングホールのお客様の誘客が大きな課題だと思っています。
石井:そのために具体的にどういうことが必要になってくるのでしょうか。
渡辺:国別のニーズはやはり異なりますので、国別のニーズをしっかり把握して、それに合った観光コンテンツを発信していくこと。それから、東北は広域ですので、1つ1つのコンテンツだけを発信するのではなく、点から線にし、ストーリーで紡いで広域の東北の魅力を発信していくことが大事だと思っています。
【東北の玄関口とインバウンドの実情】
石井:玄関口はやはり飛行機になってくると仙台が中心ということになるのでしょうか。新しい就航先なども含めて考えられているのですか。
渡辺:ゲートウェイでいうと、直行便では仙台空港、青森空港、新潟空港の定期便が多く飛んでいます。ただ実は、利用する空港で見ると東北域内の空港は全体の3割程度、7割は羽田・成田で、その後東京から新幹線をご利用いただいて東北に入ってきているという状況なんです。
石井:やっぱりそういうことなんですね。国内出張でも、例えば羽田と千歳を結ぶ便などは明らかにインバウンドの旅客と思われる方が国内線を使っていらっしゃるので、そうした方たちを新幹線も含めてぜひ東北の選択肢に入れていただくことがポイントになるということですね。
渡辺:おっしゃる通りです。欧米豪の方は日本滞在が大体2週間ほどあり、メジャーな観光地を巡りつつ、まるまるノープランの日もあります。そんな時、実は仙台は東京から新幹線で1時間半、90分で到着するということが意外に知られていません。青森も3時間あれば到着します。東北は広大ですが、新幹線があることで首都圏からすごく近いんです。近い割に全く違う空気感や文化を体感いただける、そのギャップもまだ知られていない東北の魅力だと思っています。旅マエ・旅ナカにおいても、東北の様々な魅力を発信していくことが我々の課題です。
石井:最近、北海道のニセコに行ったのですが、ニセコに行ってしまうと凄まじい経済効果があることを実感します。それと同等のポテンシャルが間違いなく東北にあるということですね。
渡辺:そう思っています。まだオーバーツーリズムという現象は東北にはさほどありません。一部、蔵王の樹氷を見るロープウェイが何時間待ちというところは多少ありますが、全体としてはほぼありません。スノーコンテンツをもっとPRしていくとともに、知られていないスキー場や雪の素材もありますので、今のうちからエリアの分散を意識していろんな魅力を発信していくこともポイントだと思っています。
【東北経済における観光の可能性とデータ活用】
石井:角度を変えた質問になりますが、東北観光推進機構自体が地元経済界も入った官民連携の組織になっているということでした。東北経済から見た時、観光はどういう位置付けで、どういうポテンシャルを秘めているとお考えですか。
渡辺:東北は人口減少が日本でもトップクラス、一番進行しているエリアだと認識しています。定住人口の減少は抗えない現実ではありますが、人が減っていく中において、これから交流人口や関係人口を増やしていくことが、観光だけでなく東北経済全体を盛り上げるために必要なことだと思っています。観光というものを東北においては基幹産業になるように、経済界の方にも観光の役割やポテンシャルをご理解いただくことが必要だと思っています。そのためには、データにもとづいて観光の役割、成果を共有することが肝要です。
石井:観光消費を見ていく、観光の経済インパクトを見ていくためにはデータが非常に大事だと思うのですが、データに関する取り組みがあればぜひ伺いたいです。
渡辺:私どもでは2021年から東北観光DMP(データマネジメントプラットフォーム)というものを開発・運用しています。ここには国別のSNSやサイトの閲覧履歴、実際に東北に来ていただいてどこを回るかという動態分析、そして一部ではありますがカードの利用履歴による消費購買データなど、傾向が把握できる仕組みを入れています。東北観光推進機構が運営していますが、東北6県、新潟県、仙台市、そして域内のDMOの皆さんにもお使いいただいており、東北のエコシステムとしてデータマーケティングを推進していく母体だと思っています。東北全体のブランディングをして東北一体となってマーケティングする上で、いろんなレイヤー、いろんな関係者、ステークホルダーをまとめていくには、勘と経験だけで物を言うのではなく、データで可視化し、それに基づいて意識統一をして戦略を地域全体で納得感あるものを作っていく。そのためにデータが必要であり、それゆえにみんなが今同じ方向に向いて、いろんな場面でご支援・ご協力をいただいているような状況になりつつあると思っています。
石井:ありがとうございます。よくわかりました。本日は渡辺さんのキャリアと、特に「オール東北」「ワン東北」というキーワードのもとに、東北観光がどういう取り組みをされているのか、どういった魅力があるかという観点についてお話を伺いました。次回の後編では、最近発表された中期計画として、今後東北の観光がどういう形になっていくのか、なっていきたいのかというお話を伺っていきたいと思います。本日はどうもありがとうございました。
渡辺:ありがとうございました。
石井:最後にお知らせですが、今回の放送はradiko・当社YouTubeでご視聴いただけます。そちらもチェックしてください。この番組はWill Smartの提供でお送りしました。












