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LRTとは?導入の背景や、現在行われている実証実験について解説!

現在、日本国内では公共交通機関の利用促進や、高齢者をはじめとする移動困難者の移動手段の確保などを目的に、LRTの整備が推進されています。
本記事では、LRTとはどのような交通機関なのか実際の事例と共に解説していきます。

LRTとは

LRTとは「Light Rail Transit(ライト レール トランジット)」の略語で、一般的な鉄道に比べて、小型で軽量な車両を簡易的な軌道で走行させる軌道系の交通システムです。
ヨーロッパやアメリカ、オーストラリア、中国などの世界各国で運行しているほか、日本国内では富山市や広島市などで導入されています。
外観は路面電車と似ていますが、路面電車が自動車と同じ道路を走行するのに対し、LRTは道路上などに専用の軌道を設けることが一般的です。そのため、渋滞による速度低下の影響がなく、正確な時間で運行することができます。また、自家用車に比べ運行時に排出する二酸化炭素の量が少ないので、環境に優しい乗り物でもあります。

日本国内におけるLRT

日本国内ではLRTを「次世代型路面電車」と表現することもありますが、国土交通省ではLRTについて「低床式車両(LRV)の活用や軌道、電停の改良による乗降の容易性、定時性、速達性、快適性などの面で優れた特徴を有する軌道系交通システムのこと(※1)」と述べています。
日本では昭和40年代に自動車が大衆に普及し、公共交通もバスや地下鉄に転換されたことから路面電車の廃止が相次ぎ、現在の路面延長はピーク時の約20%程度となっています。国土交通省は2005年からLRTの整備を推進する事業を支援するために「LRTプロジェクト」を創設していますが、日本国内ではまだ十分に普及が進んでいないというのが現状です。
しかし、近年道路交通を補完する公共交通としてLRTが再評価されています。
(※1)国土交通省、LRTの導入支援(引用日:2022.12.23)

LRTが再評価される背景

路面電車が減少する一方でLRTが公共交通として再評価されている主な理由としては、環境負荷の軽減、交通の円滑化、移動のバリアフリー化、公共交通ネットワークの充実、都市と地域の再生など多くの導入メリットがあるからです。

LRTを導入する主なメリット

  • 環境負荷の軽減
    国立環境研究所によると、LRTが乗客一人を1キロメートル運ぶのに排出する二酸化炭素は自家用車の約半分と推計されています。また、LRTの輸送力が強化されることで自家用車や路線バスに比べて一度に多くの人を運ぶことができるので、一人当たりの二酸化炭素排出量をより削減することができるほか、今まで自家用車で移動せざるを得なかった場所にLRTが整備されることで、環境負荷の軽減が期待できます。
  • 誰でも使いやすい車両
    従来の路面電車とLRTの大きな違いは低床車両を活用していることです。路面電車は車内に段差があることが多く、高齢者や車いすの方、ベビーカーを使用する方などにとっては利用しづらい乗り物と思われていました。低床車両は停留所と車両に段差がないので、スムーズに乗降することができます。
  • 地域活性化
    LRTは鉄道などの公共交通機関への乗り入れや乗り換えの利便性を向上させることにより、都市全体の交通ネットワークの利便性も向上します。駅周辺の駐車場や駐輪場を整備すればパークアンドライドの利用者も見込めます。
    さらに、LRTの導入に伴って道路空間の再構築や、LRTが乗り入れる地区の再開発が行われることで、地域の活性化にもつながります。

日本国内におけるLRTの導入事例

富山ライトレール(富山県富山市)

「富山ライトレール」は利用者の減少が著しかったJR富山港線が走っていた路線の大半を引き継いで誕生した日本初の本格的LRTです。
富山市は郊外に居住地が形成されているため、徒歩圏内に病院や行政サービスなどの機能がそろっておらず、車を使えない市民にとっては不便な街となっていました。
そこで、富山市は公共交通を軸としたコンパクトなまちづくりに着手し、その一環として2006年に「富山ライトレール」が誕生しました。その後、市内の中心市街地を環状線化する事業や、富山駅の南側と北側をそれぞれ走る路線を接続する事業が行われたことにより、60代・70代の利用者が大幅に増加し、一日当たりの輸送人員も増加しました。

富山ライトレールの車両
(富山市観光公式サイトより引用:https://www.toyamashi-kankoukyoukai.jp/?tid=100907)


芳賀・宇都宮LRT(栃木県)

宇都宮市と栃木県芳賀町を結ぶ芳賀・宇都宮LRT(通称:ライトライン)は2023年8月の開業を目指して試運転などの作業が進められています。
このライトレールはJR宇都宮駅東口から芳賀町の高根沢工業団地までをつなぐ役14.6キロメートルの路線で、そのうち9.4キロメートルは自動車と道路を共有する併用軌道区間で、5.1キロメートルはライトレールの専用軌道区間となっています。
一般的にLRTは、路線があった場所を引き継いで導入されますが、このライトレールは、新規にLRTが建設される日本初の事例となり、関心が高まっています。
また、自動車の利用が増える一方で公共交通の利用者が低下している栃木県において、LRTの運用によって自家用車からLRTへの転換などの効果があるのかなども注目されています。

ライトラインの車両イメージ
(芳賀・宇都宮LRT公式ホームページより引用:https://u-movenext.net/dictionary/)

LRTの活用が地域の活性化につながる?

LRTを整備することで、今までは自家用車を使わなければ行くことができなかった場所にも公共交通を利用することが可能になり、環境負荷の軽減や沿線の市街地の活性化につながります。2023年に新たなLRTの開業を目指す宇都宮市も、公共交通のネットワークを構築することで人口減少や少子高齢化などの時代の変化に対応できるまちづくりを進めています。LRTを導入することでまちづくりにどんな効果があるのか、注視していく必要があるでしょう。

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