2024年版 自動運転の現在に迫る!社会実装を目指す取組を解説
2022年3月に特定の条件下で運転を完全に自動化する「レベル4」の自動車の公道走行を認める道路交通法の改正案を政府が閣議決定し、2023年4月1日から改正道路交通法が施行されました。バスなどの活用を想定した制度で、運転手がいない自動運転バスの走行も可能になりました。
本記事では、政府が取り組んでいる自動運転プロジェクトの概要や日本における自動運転の現状を、現在行われている自動運転の取り組み事例とともに解説します。
※本記事は2023年1月18日配信記事を再編集したものです
目次
官民連携のプロジェクト「RoAD to the L4」
経済産業省は国土交通省と連携し、自動運転レベル4などの先進的なモビリティサービスの実現・普及に向けて研究開発から、実証実験、社会実装まで一貫して取り組む「自動運転レベル4等先進モビリティサービス研究開発・社会実装プロジェクト」(以下、RoAD to the L4)を立ち上げました。
「RoAD to the L4」は民間企業等で構成されたコンソーシアムをコーディネート機関として設置しており、コーディネート機関がプロジェクトの研究開発・社会実装計画に基づいて総合的な調整・調査・検討を行います。
また、目標として下記を掲げており、持続可能なモビリティ社会の実現や移動課題の解決等を目指した取り組みを行っています。
- ①無人自動運転サービスの実現及び普及
・2022年度を目途に限定エリア・車両でレベル4での自動運転サービスを実現
・2025年度までに多様なエリア、多様な車両に拡大し、40か所以上に展開する等 - ②地域の社会課題の解決や地域活性化に向けて、IoTやAIを活用した新しいモビリティサービスを社会実装する
- ③技術者や地域課題と技術をマッチングする人材などの確保し育成する
- ④自動運転についてわかりやすい情報発信や体験機会を提供し、社会に対して正確な理解や行動変容を促す
また、経済産業省では国土交通省などと連携し2025年度までの新たな自動運転移動サービス実現に向けた環境整備のため、2023年11月に「レベル4モビリティ・アクセラレーション・コミッティ」を立ち上げました。新たな自動運転移動サービスの早期実現に向けて事業者と関係省庁間での適切な情報共有を促進し、環境整備を行うとしています。
自動運転のレベル基準
自動運転は、運転の主体(ドライバーまたはシステム)や自動運転技術の到達度、走行可能エリアなどによってレベル1からレベル5に分類されており、国土交通省は自動運転車両のレベル基準を下記のように定めています。
レベル1/レベル2
レベル1はアクセル・ブレーキ操作またはハンドル操作のどちらかが、レベル2はアクセル・ブレーキ操作およびハンドル操作の両方が部分的に自動化された状態のことを指します。
両者とも運転操作の主体は運転者で、このレベルの車両は「運転支援車」と定義されています。主な機能としては自動ブレーキや前の車に追随して走行する、車線からはみ出さない、などが該当します。レベル3
レベル3からは運転操作の主体をシステムが代替できるようになります。「条件付自動運転車(限定領域)」と定義されており、システムがすべての運転操作を実施しますが、システムが正常に作動しない場合などドライバーに運転操作を促す警報が発せられることがあるので、その都度ドライバーが適切に対応する必要があります。
レベル4
レベル4は特定の走行条件を満たす限定された領域において、システムが運転操作のすべてを代替する状態で、「自動運転車(限定領域)」と呼ばれます。
人口減少が進む地域などで地域住民の移動手段となる巡回バスなどでの活用が想定されていますが、2025年をめどに高速道路での完全自動運転の実現を目指しています。2023年10月にはあらかじめ決められたルートを走行する小型の自動運転EVバスが国土交通省から自動運転レベル4の認可を受けています。レベル5
レベル5は走行ルートやエリアなどの条件に限定されることなく常にシステムが運転操作のすべてを担う状態を指します。どんな場所でも自動運転ができなければならないので、自動運転レベル5がいつ実現するのかはまだ不透明です。
レベル4普及に向けた各地の取り組み
自動運転「レベル4」を実現するためには、運転時の危険を回避することなど、様々な課題があり、自動車メーカーが研究開発を進めているほか、各地で実現に向けた取り組みが行われています。
国内初!レベル4による公道走行が実現
福井県永平寺町では2023年5月28日より自動運転レベル4による移動サービス「ZEN drive」が開始しました。レベル4の車両が公道を走行する全国で初めての事例です。
運行するのは永平寺口駅から永平寺門前までをつなぐルートで、障害物と衝突したり、通信機能が使えなくなるなどの緊急時に備えて運転区域は遠隔室で車両の位置や走行速度、社内外の状況を監視及び管理されています。
「ZEN drive」は2023年10月に駐輪していた自転車のペダルと接触する事故が発生したことで現在は運休していますが、自動ブレーキを作動しやすくさせる改良や自転車の画像をシステムに読み込ませる追加学習を行い、2024年3月の運転再開を目指すとしています。
関西万博でレベル4による運行を目指す自動運転バスの実証実験
大阪市高速電気軌道(大阪メトロ)は、2022年12月に2025年に開催される関西万博での来場者輸送を目的とした自動運転バスの実証実験を行いました。
万博会場を想定した1周約400メートルのテストコースにレベル4の機能を搭載した小型バスを走行させ、様々なモビリティが走行する環境で生じるリスクの把握や自動運転走行におけるトラブル対応の検討などを行いました。
万博開催時には万博会場から会場外の駐車場までの約3.3km(片道)と万博敷地内の外周道路約4.8km(片道)を自動運転バスが走行する予定で、2024年3月以降さらに実証実験を重ねていく予定です。
自動運転を医療で活用する「ヘルスケアMaaS」
2022年11月に藤沢市にある「湘南ヘルスイノベーションパーク(湘南アイパーク)」では「ヘルスケアMaaS」の実現へ向けた取り組みの一環として自動運転シャトルバスの実証実験が行われ、患者が自宅から病院まで移動する交通手段として自動運転バスを活用する想定で、湘南アイパーク敷地内で試験走行が行われました。
実証実験で使用された車両は自動運転レベル4の機能を搭載しているので運転席はありません。車内で救急車のような診療を行うことはありませんが、心電図や血圧などを計測し、車内のモニターを通じて病院のスタッフとその結果をオンラインで閲覧することで病院に到着してからスムーズに診療を受けられます。
少子高齢化が進んで病院へ通院する高齢者が増加することや、交通機関の減少などによって病院への移動手段が困難になる患者の増加が懸念されていますが、自動運転バスが患者と医療機関を結ぶ重要な交通手段となると期待されています。
自動運転車両が社会課題を解決する手段として実用化されることが期待されています。
自動運転「レベル4」は今後普及していくのか?
アメリカで自動運転タクシーのサービスが開始されるなど、世界各国で自動運転レベル4を活用したサービスが実現し始めていますが、それに比べると日本は自動運転の分野で遅れをとっている状況です。
2023年4月に日本国内でも自動運転レベル4が解禁されましたが、公道での走行を行う事例はまだほとんどありません。全国でレベル4による移動サービスが展開されるには、安全な走行環境などのインフラの整備や事故の法的責任のルールを明確化するなど多くの課題があります。レベル4実現に向けた実証実験によりこれらの課題が解消され、自動運転レベル4の普及が加速することが期待されます。
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